安倍政権が新型コロナウイルス対策で全国に配った布マスク「アベノマスク」を巡り、神戸学院大の上脇博之教授らは24日に記者会見し、国が開示した調達業者ごとの単価や発注枚数を明らかにした。3カ月間に約3億2000万枚が全て随意契約で発注され、税込みの単価は165~68・9円で業者や契約時期によって2・4倍の差があった。
上脇教授が契約文書の不開示決定は不当だと訴えた訴訟で、国に納入業者との契約単価や発注枚数の開示を命じた2月の大阪地裁判決が確定していた。
安倍政権は新型コロナの感染が拡大した2020年3~6月、17業者と計32件の随意契約を結んだ。調達総額は442億円で、全世帯に布マスクを2枚ずつ配布したほか、福祉施設や学校にも配った。業者名や業者ごとの契約額は明らかにされていたが、単価や枚数は公表されていなかった。
上脇教授らによると、期間中に最多の約1億1000万枚を調達した総合商社の単価は、全5件の契約で143円だった。2番目に多い約7200万枚を納入した別の総合商社の単価は130・9円だったが、契約を重ねた末に139・5円に値上がりしていた。
国の政策に応じる形で3月からいち早く参入したこの2社を含む6社は、全体の8割にあたる計2億5800万枚を調達し、単価は130~140円台に集中。5月以降に契約を結んだ11社の単価は100~120円台が大半で、先行の6社の方が比較的高い単価で契約していた傾向が確認された。
会計検査院は21年11月に公表した報告書で、国の対応について「業者の見積書の額をそのまま契約額とした」と指摘。国は過去に同規模の調達実績がなかったなどとして、市場価格を調査して算出することは困難だったとしている。
上脇教授は業者との契約交渉の過程を記した文書の開示を求める訴訟も起こしているが、国側は「文書は開示対象に当たらない」と訴えている。【安元久美子】