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死を前に都知事に手紙 坂本龍一さんが訴えた神宮外苑の再開発見直し


 環境問題に取り組んだ坂本龍一さんは2月24日付で、東京・明治神宮外苑の再開発による自然破壊を懸念し、小池百合子都知事に見直しを求める手紙を送っていた。所属事務所が明らかにした。

 坂本さんは手紙で「先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」とし、再開発の見直しを求めたうえで「あなたのリーダーシップに期待します」と結んだ。

 明治神宮や三井不動産などの事業者は、神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て替え、高層ビルの建設も予定する。環境影響評価書によると、新たに植樹もするが、既存の樹木743本を伐採する。再開発は3月22日に着工された。

 反対運動に取り組んでいる専門誌編集長の西川直子さん(64)は「病気で大変だったはずなのに、一つの希望でした」と振り返る。

 坂本さんは森林保全団体「more trees(モア・トゥリーズ)」の代表も務めていた。水谷伸吉事務局長は3日、「歩みを止めずに、森林保全というテーマと向き合っていくことが弔いになると思う」と語った。

 一方、小池氏は3月17日の定例記者会見で坂本さんの手紙について問われ「事業者からは緑の量を増やすと聞いている。こうした取り組みを、坂本さんはじめさまざまな方々にも伝わるように情報発信するように改めて指示している」と述べた。

 3日午前には入庁時に報道陣から坂本さん死去の感想を問われ、「心からお悔やみ申し上げます」と短く述べた。【柳澤一男、黒川晋史、岩本桜】

 坂本龍一さんが東京都知事に送った手紙の主な内容は以下の通り。

   ◇   ◇

東京都知事

小池百合子様

突然のお手紙、失礼します。

私は音楽家の坂本龍一です。

神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。

どうかご一読ください。

率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。

これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。

私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼(けいがん)です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。(中略)

いま世界はSDGs(持続可能な開発目標)を推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。

東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。

そして、神宮外苑を未来永劫(えいごう)守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。

あなたのリーダーシップに期待します。

2023年2月24日

坂本龍一

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