starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「お母さんが遊んじゃだめって」注文に時間がかかるカフェ、発案者の夢


 言葉が滑らかに出ない「吃音(きつおん)」に向き合い、社会の理解を促すための取り組みを進めている女性がいる。相模原市出身の奥村安莉沙さん(30)。自身が悩んだ経験などから、吃音の若者が接客業に挑戦する場を提供する「注文に時間がかかるカフェ」を発案した。今後の展望は。【聞き手・宮島麻実】

吃音の若者、挑戦の場に

 ――吃音とはどういうものですか。

 ◆当事者は全国に約120万人いるとされ、割合は100人に1人ほど。症状としては主に連発「こ、こ、こんにちは」、伸発「こーーんにちは」、難発「……こんにちは」の三つがあるとされている。人によって出やすい環境やタイミングなどが違い、幅広い。周りからは困ってなさそうに見えても、本人はばれたくないから話さないなど、外から見る困難さと当事者が抱えている悩みが乖離(かいり)しやすい。

 ――ご自身も吃音と向き合ってこられました。自覚されたのはいつですか。

 ◆小学3年生の時の授業参観で国語の時間に音読した際に、結構どもっていたようだ。その数日後、仲の良い友達から「お母さんに話し方がうつるかもしれないから遊んじゃだめと言われた」と、遊べなくなってしまった。次第に「体に触ったら、近くにいたらうつる」と話が大きくなり、周りから避けられることが続いた。

 ――転機となったのは。

 ◆25、26歳の時に語学留学したオーストラリアで、英語が話せない人や、病気の人らが職業体験プログラムを受けるカフェで、私も初めて接客に挑戦した。障害がある男性は発話ができないが、身ぶり手ぶりでお客さんと接している様子を見た。日本ではすらすら話せる接客がいいと思っていたが、帰ったら同じようなカフェをやりたいと思い始めた。オーストラリアで吃音の治療を受け、自然に聞こえる話し方の習得や、症状の波をコントロールすることも学んだ。

 ――吃音の若者が働く「注文に時間がかかるカフェ」を2021年8月に初めて開催しました。

 ◆10歳からずっとカフェ店員として働きたい夢があった。吃音があることで無理かと諦めていたが、オーストラリアでの経験で希望が見えてきた。「注文がゆっくりでもお客さんが怒らないカフェ」があったらと考え、実現した。スタッフがマスクに「最後まで聞いてほしい」「気軽に話しかけて」などと、どのように接してほしいかを記して接客している。

 ――活動を通して目指すのは。

 ◆接客に挑戦したいけど一歩を踏み出せない吃音の若者が挑戦することで、勇気や自信を持ってほしいことが一つ。このカフェのスタッフと交流を通して、吃音の理解も深めてほしい。

 ――どういった所にやりがいを感じますか。

 ◆終わった後にスタッフが「自信が付いた」と言ってくれること。22年7月に県内でカフェを開催した後には、地元のレストランで接客に挑戦している子もいるし、背筋が伸びて視線が合うようになって別人みたいになった子もいる。

 ――今後の展望を教えてください。

 ◆最終的な目標は、吃音のある人が生きやすい社会を作ること。カフェを常設ではなく(短期間限定の)ポップアップにしているのは、大都市だけでなくいろいろな地域の方にチャレンジしてほしいから。挑戦したいけどまだ体験していない人が多くいるので、全国で開催したい。

奥村安莉沙(おくむら・ありさ)さん

 相模原市出身。吃音の若者がカフェ店員となり、接客業に挑戦する「注文に時間がかかるカフェ」を発案し、2021年8月からこれまでに全国9カ所で実施した。映画翻訳や制作にも携わり、吃音への理解を広める活動を続けている。

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.