セウォル号以来の大惨事＝国民に衝撃、大統領陣頭指揮―韓国

　【ソウル時事】ソウルで２９日夜に起きた大規模な雑踏事故は死者が１５０人を超え、韓国では２０１４年の客船「セウォル号」沈没事故以来の大惨事となった。東京・六本木と比較されるソウル有数の繁華街、梨泰院で起き、犠牲者の大半は若者。韓国社会には大きな衝撃が広がっている。事態を極めて重く見た尹錫悦大統領は、発生直後から陣頭指揮に当たった。 　「本当に惨たんたる気持ちだ。ソウルのど真ん中で、起きてはならない悲劇と惨事が発生した」。尹氏は３０日午前、険しい顔つきで国民向け談話を発表し、「国家哀悼期間」を定めると表明。即座に全ての政府機関、官公署が弔旗を掲げるよう指示した。 　韓国ではこれまでも、５００人以上が死亡した三豊百貨店崩壊事故（１９９５年）や約１９０人が死亡した大邱地下鉄放火事件（０３年）、約３００人が死亡したセウォル号沈没事故などが起きている。今回の事故は、消防当局によると被害者の多くが２０代。高校生が犠牲者の大半を占めたセウォル号沈没事故と同様、国民に大きなショックを与えた。 　事故現場に花を供える人が後を絶たず、インターネット交流サイト（ＳＮＳ）では「ＰＲＡＹ　ＦＯＲ　ＩＴＡＥＷＯＮ（梨泰院のために祈ろう）」というロゴが拡散している。イングランド・プレミアリーグで活躍するサッカーの孫興民選手ら著名人が相次いで追悼メッセージを発信。テレビ各局は特別編成を組み、バラエティー番組などを取りやめた。大手芸能事務所によるハロウィーンに合わせたＫ―ＰＯＰイベントや、地方自治体の行事なども次々と中止が伝えられている。 　セウォル号沈没事故の際、当時の朴槿恵大統領が発生後７時間にわたり動静が不明だったとして批判されたのとは対照的に、尹氏は素早い動きを見せた。事故発生直後の２９日深夜から迅速な救急、治療に万全を期すよう指示。３０日未明には政府庁舎に入り、韓悳洙首相や関係閣僚らを集め対策会議を開いた。事故があった竜山区を特別災難地域に指定し、遺族らに支援金を支給する方針だ。 　普段はあらゆる場面で尹政権と対決姿勢を取る最大野党「共に民主党」の李在明代表も「他のことは全て脇に置いて、政府の努力に党を超えて積極的に協力する」と「休戦」を表明。共に民主党は所属議員らに政治的な発言やメッセージ発信を控えるよう求めた。　【時事通信社】 〔写真説明〕３０日、ソウルの梨泰院で発生した雑踏事故を受け、大統領府で談話を発表する韓国の尹錫悦大統領（ＡＦＰ時事） 〔写真説明〕３０日、ソウルの梨泰院で起きた雑踏事故現場に置かれた花束（ＡＦＰ時事） 〔写真説明〕３０日、韓国大統領府で、雑踏事故を受けた緊急会議に出席する尹錫悦大統領（手前中央）＝韓国大統領府提供（ＡＦＰ時事）