「親日」攻撃強める韓国野党＝尹政権、対北朝鮮で安保協力加速

　【ソウル時事】戦術核の実戦運用を念頭に置いた北朝鮮の相次ぐミサイル発射により、韓国の尹錫悦政権は、元徴用工問題などの懸案を抱える日本との安全保障協力を加速させている。これに対し、革新系最大野党「共に民主党」は尹政権に対し「親日国防」と攻撃を強めている。 　北朝鮮は４日、日本上空を通過する中距離弾道ミサイルを発射。日韓首脳は６日に電話会談し、北朝鮮対応での日韓協力、日米韓安保協力を申し合わせた。米韓海軍と海上自衛隊も８月、２０１７年以来となる弾道ミサイルの探知・追尾訓練をハワイ沖で実施。９月３０日と１０月６日には日本海で合同訓練を行った。韓国外務省関係者は「安保協力は日韓間の懸案とは別だ」と強調する。 　対日関係改善を急ぐ尹政権にとり、北朝鮮の脅威は協力を深める格好の大義名分となる。対日外交に関わる関係筋は「北朝鮮が関係改善を助けてくれている。近く核実験を強行すれば、正式な首脳会談も可能になるのではないか」と語る。 　しかし、歴史的経緯から日米韓の安保協力は韓国にとり敏感なテーマだ。共に民主党の李在明代表は先週来、島根県・竹島（韓国名・独島）がある日本海で日米韓が訓練を行ったことを問題視し、「日本軍が朝鮮半島に進駐し、旭日旗が再び掲げられる日が来かねない」と批判した。 　共に民主党には、１９年の日本による対韓輸出管理強化に端を発した反日ムードを２０年の総選挙圧勝につなげた成功体験がある。李氏は１１日にも「日本は侵略で韓国（の物）を数十年間略奪した国だ」と日米韓訓練の中止を要求。発言をエスカレートさせている。 　韓国海軍と海自は、１８年１２月に韓国軍艦艇が海自機にレーダーを照射した問題で関係が冷却化。韓国海軍は来月の海自創設７０周年記念「国際観艦式」への参加を検討するなど交流再活性化を模索しており、野党の攻勢は頭痛の種だ。韓日議員連盟会長でもある与党「国民の力」の鄭鎮碩・非常対策委員長は１１日、「朝鮮（王朝）は日本の侵略ではなく、内部が崩壊し滅びた」と李氏に反論した。　【時事通信社】 〔写真説明〕共に民主党の李在明代表（ＥＰＡ時事） 〔写真説明〕岸田文雄首相（右）と握手する尹錫悦韓国大統領＝９月２１日、米ニューヨーク（ＥＰＡ時事）