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移民でねじれる米社会=排外主義の転換難航―中間選挙控え・バイデン政権


 バイデン米政権への信任を問う中間選挙まで2カ月余り。2021年1月の発足から「米国の再生」を打ち出してきたものの、トランプ共和党政権時代の排外主義を十分に克服できずにいる。課題の一つが迷走気味の移民政策だ。各方面からの激しい抵抗は、社会の分断の根深さを浮き彫りにしている。  ◇遠い国境  西部カリフォルニア州の港湾都市サンディエゴから車で約30分。回転式の鉄柵を抜けると、メキシコ側の都市ティフアナに着く。国境を徒歩で越えるのに10分もかからなかった。  「私はメキシコ人で、米国籍も持っています。そのために母は、わざわざ国境の向こう側に行って出産したんです」  国境近くのクリニックで難民支援に当たる医師、サイキ・カルデロンさん(32)が、米国とのボーダーレスな日常を笑って話してくれた。ただ、カルデロンさんが接している難民にとって、その境界線は遠い。  市内のキャンプに滞在するハイチなどからの難民は、8月現在で約9600人。米国への亡命を望んでいるが、新型コロナウイルス対策を理由に審査や保護を受けられない。トランプ前政権が公衆衛生法に基づき導入した反移民措置(通称・タイトル42)が今も続いているためだ。  ◇影響力低下を懸念  バイデン政権は5月、タイトル42の廃止を進めたが、南部ルイジアナ州の連邦地裁に差し止められた。その背景には、バイデン氏の受け入れ拡大方針を聞き付けて、南部州に移民希望者が押し寄せている皮肉な現状がある。  カルデロンさんは「失望しました。大統領が交代しても、トランプ時代のあからさまな反移民感情はそのまま」と憤る。税関・国境警備局(CBP)の統計によると、20年3月~22年6月に国境で拘束され、タイトル42に基づき送還された者は210万人を超える。  「移民の国」として歴史をつむいできた米国では、外国生まれが全人口の15%前後に達する。この多様性が社会の力の源になっている半面、常に摩擦に悩まされ、時に負のエネルギーを生み出してきた。  米シカゴ大などが5月に実施した世論調査によると、米国民の29%は「移民の増加で(生粋の)米国人が政治や経済、文化的影響力を失う」と懸念。移民に強硬な共和党支持者の47%が「特定集団が、自らの政治的な主張に賛同する移民と米国人を置き換えようとしている」と考えている。  ◇「白人は衰退」  国境の入管審査を通過し、カリフォルニア州へ戻った。車で北上すると、白人富裕層が多いオレンジ郡(人口約310万人)に入る。長く野党・共和党の地盤だったが、近年の選挙では民主党支持層の多い移民増加が一因で接戦となっている。  飲食店や小売店で見掛ける人は、ヒスパニック系が多い。州の人口動態調査によると、22年時点で郡の白人は約132万人で、ヒスパニック系の約115万人をやや上回るが、40年を境に逆転する見通しだ。  米社会学者のアーリー・ホックシールド氏は、「白人は自らが社会の衰退勢力だと思っている。こうした感覚は人種問題や移民問題で右翼的なポピュリズム(排外主義)とつながりやすく、非常に危うい」と警鐘を鳴らしている。 【時事通信社】 〔写真説明〕メキシコ・ティフアナと米カリフォルニア州を隔てる国境沿いの道路=6月、メキシコ・ティフアナ 〔写真説明〕難民キャンプで生活するハイチ難民の子どもたち。言葉が分からないため、学校に通えない=6月、メキシコ・ティフアナ 〔写真説明〕NPOが運営するクリニックで支援を受けるハイチ難民の妊婦ら=6月、メキシコ・ティフアナ
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