前回は味方、今回は敵＝立民、元同僚と因縁対決―宮城【注目区を行く】

　改選数１となった２０１６年参院選から自民党が２連敗している宮城選挙区。同党は６年前に野党統一候補として議席を得た桜井充の移籍を認め、公認候補として擁立した。これに対し、立憲民主党を中心とする野党陣営は、桜井の動きを「背信行為」とみなして激しく批判。１議席をめぐる戦いは過熱する一方だ。（敬称略） 　「前回、一生懸命応援してくれた人の顔に泥を塗ることになる。人の道に外れるのではないか」。１８日に仙台市のホテルで開かれた立民新人、小畑仁子の総決起集会。県連代表で党重鎮の安住淳は桜井に対する怒りをあらわにした。 　桜井は２４年前に旧民主党で初当選。参院側の論客として鳴らし、「打倒自公政権」で長く安住らと活動を共にしてきた。だが、旧民進党を経て国民民主党から無所属に転じると、「与党でなければ仕事ができない」と２０年に自民党会派入り。今年４月に県議との公認争いを制して入党し、野党側から見れば「敵方」に回った。 　因縁の対決となる野党は結束して小畑を支援する。安住は６日、共産党県委員長の中島康博と会い、「当時支援をもらった候補がこういうことになり申し訳なかった」と謝罪。連合宮城、国民県連とも小畑支援で合意し、共闘態勢を整えた。 　４男４女の８人を育てる小畑の愛称は「ビッグマミー」。生活者目線に立った物価高対策や教育政策などを訴える。ベテランの桜井に知名度で劣るが、「子育て世代が政治を変えることができると宮城から発信したい」と意気込む。 　「安倍内閣打倒と言っていた人が何の説明もなく自民から出るのは許せない」（共産関係者）。野党陣営の攻撃は激しさを増す。 　桜井は１９日、野党側から離れたことについて、取材に「もう終わったことだ。今は前を向いてやっている」といら立ちながら語った。 　◇一体感を演出 　これに先立つ１８日に桜井は、宮城県柴田町で開かれた自民党県連の会合に出席。司会者が冗談交じりに「今回からわが党の公認候補なのでお間違えのないように」と会場に呼び掛けると、あちこちから笑いが漏れた。 　「１、２カ月前であれば凍り付いていた」。県連会長の西村明宏がこう振り返るように、桜井の公認決定をめぐる県連内の反発は大きかった。 　県連は県議の石川光次郎を推したが、党本部は独自の世論調査結果を基に桜井を公認。石川には３年後の参院選の「公認内定」が約束された。 　ある県議は「最初は桜井なんかやるかという気持ちはあったが、人の怒りはそう長く続くものではない」と組織内の空気の変化を解説した。 　桜井と石川は県連の会合やイベントなどに極力そろって顔を出す。こうした場で桜井は「石川さんが３年後に勝利を収めてこの選挙は完結する」と強調。石川も「３年後を考える前に目の前の選挙の勝利のために頑張りたい」と一体感を演出している。 　県連幹部は「桜井だけではいろいろ言われるので一緒に出すようにしている。それが石川のためにもなるし、形としてきれいだ」と語った。 　陣営は「相手候補は話題に事欠かない」として気を引き締める。公示日の２２日は首相の岸田文雄が仙台入りした。中盤には党幹部が応援に駆け付け、てこ入れを図る。 　日本維新の会、ＮＨＫ党、諸派の新人も支持拡大を訴えている。 　 　◇立候補者名簿 　【宮　城】 　ローレンス　綾子　５２　参政党員　　　諸新 　桜井　　　充　　　６６　元財務副大臣　自現(4) 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　推（公） 　小畑　　　仁子　　４４　元県議　　　　立新 　平井　　　みどり　６７　元仙台市議　　維新 　中江　　　友哉　　３０　政治団体役員　Ｎ新 　（注）敬称略。年齢は投票日現在。自＝自民、立＝立憲民主、公＝公明、維＝維新、Ｎ＝ＮＨＫ、諸＝諸派。丸数字は当選回数。丸かっこは推薦政党。　 （了） 【時事通信社】 〔写真説明〕候補者の集会で気勢を上げる支援者ら＝１８日、仙台市