吉川元農水相に有罪判決＝受領５００万円は賄賂―鶏卵汚職・東京地裁

　大臣在任中に鶏卵生産大手「アキタフーズ」（広島県）から現金計５００万円の賄賂を受け取ったとして、収賄罪に問われた元農林水産相、吉川貴盛被告（７１）の判決が２６日、東京地裁であった。向井香津子裁判長は賄賂だったと認定し、懲役２年６月、執行猶予４年、追徴金５００万円（求刑懲役２年６月、追徴金５００万円）を言い渡した。 　争点は、日本養鶏協会など業界団体を実質統括していたアキタフーズの秋田善祺元代表（８８）＝贈賄罪などで有罪確定＝から、２０１８年１１月～１９年８月の３回にわたり受領した５００万円の趣旨だった。　 　検察側は元代表の証言を基に、家畜飼育環境の向上を図る国際獣疫事務局（ＯＩＥ）の「アニマルウェルフェア」基準案が国内業者の打撃になるとして反対意見を取りまとめたり、中小業者に対する日本政策金融公庫の融資条件緩和を働き掛けたりすることへの謝礼だったと指摘。「賄賂だと認識していたことは明らかだ」と主張した。 　一方、吉川被告は「政治活動を助ける気持ちからだと思った」と述べ、現金授受の場面を「記憶にない」とした。弁護側は、大臣就任前から盆暮れなどに合計１８００万円の現金供与を受けていたことから「政治献金」だと主張し、有罪だとしても「政策をゆがめたことは一切ない」と訴えた。 　吉川被告は１９９６年、北海道議を経て衆院議員に初当選。２０１８年１０月～１９年９月に農水相を務めたが、２０年１２月に現金授受疑惑が発覚し、健康問題を理由に議員辞職した。 　◇鶏卵汚職事件をめぐる動き ２０１８年１０月　２日　吉川貴盛衆院議員が農林水産相に就任 　　　　　１１月１２日　秋田善祺代表と面談。鶏飼育の国際基準案に反対するよう要望受ける 　　　　　　　　２１日　「大臣就任お祝いの会」の宴席合間に２００万円受領 　　　　　１２月１４日　議員会館で秋田代表から要望受ける 　　　　　　　　１７日　農水省局長に３者協議指示 　　　　　　　　２０日　３者出席の「緊急陳情会議」 　　１９年　１月１１日　農水省が国際基準案に反対表明 　　　　　　２月　５日　秋田代表らから接待 　　　　　　３月２６日　大臣室で秋田代表から２００万円 　　　　　　８月　２日　大臣室で秋田代表から１００万円 　　　　　　　　２０日　秋田代表が農水省幹部に中小業者への融資拡大を要望 　　　　　　９月１１日　農水相退任 　　　　　　　　１８日　秋田元代表らから接待。融資拡大の要望受ける 　　２０年１２月２２日　現金授受発覚後、議員辞職 ※肩書は当時（了） 【時事通信社】 〔写真説明〕吉川貴盛　元農林水産相