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「独裁維持以外に思想なし」=ロシア人気作家、政権批判―ソ連崩壊30年


 【モスクワ時事】25日のソ連崩壊30年を機に後継国家ロシアの人気作家で、プーチン政権に反発して現在は国外で活動するボリス・アクーニン氏が時事通信の書面インタビューに応じた。やりとりは次の通り。  ―共産主義体制のソ連に対し、どのような態度を取っていたか。自らをこの制度の一部だと思ったか。自分自身をソビエト人と呼ぶことができるか。  子供の頃、私はもちろん完全にソビエトの少年だった。幼稚園で「(旧ソ連の象徴である革命家の)レーニンおじいさん」を愛するように教えられ、そして彼を愛した。私は「オクチャブリャータ」と「ピオネール」(いずれも旧ソ連共産党の児童・少年向け組織)の団員でもあり、ソ連に生まれたことは幸運だと喜び、資本主義国の子供たちをとても気の毒に思っていた。  しかし、10代の若者がすべてを疑問視し、自分の頭で考えることを学ぶようになるように、14歳の頃から私はさまざまな疑問を抱くようになった。最も幸せな国に住むのに、なぜこんなに不便で屈辱的なのか。なぜ大人は公衆の面前と家で全く違うことを言うのかなど。  17歳か18歳の頃、私は完全に「非ソビエト人」だった。とはいえ、政権に反対する闘士ではなく、自らの周りの生活のルールは気に食わないが「世の中はそういうものだから」と、それに順応しようとする老成した若者だった。私の世代、つまり1970年代の学生は、そのような「失われた世代」で、特に何かを信じていたわけではないシニカルな日和見主義者の世代だった。  ―ソ連はあなたにとって個人的に何を意味したか。その崩壊をどのように認識したか。ソ連崩壊を防ぐのは可能だったか。崩壊におけるゴルバチョフ元ソ連大統領の役割をどのように評価するか。  国の成長や発展を妨げていた縄が解けたと幸せになった。どんなにリベラル化しようとも「ソビエト帝国」は必ず崩壊していたと思う。力や恐怖によって維持されていたものは、力と恐怖が弱まるにつれて崩壊せざるを得なかった。  ミハイル・ゴルバチョフ氏に関しては、私の人生でこのような重要な役割を果たしてくれたことに、とても感謝している。しかし「ペレストロイカ(改革)」を始めた時、彼はそれがどのように終わるのか分かっていなかったことは確かだ。分かっていたら、恐らく違うやり方をしていただろう。  しかし、自由化はゴルバチョフ氏の善意で実現したのではなく、必然だったと理解しなければならない。(ソ連の)システムはもはや旧来の方法では存在できず、経済的に破綻した。軍拡競争やアフガニスタンでの紛争に耐えることができず、世界の覇権をめぐって西側と争うことができなくなっていた。  ―ソ連時代への郷愁はあるか。ソ連時代に戻ったら何をしたいか。  ソ連時代にはうんざりさせられる。何度か悪夢にうなされた。目を覚ますと(ソ連が崩壊した)91年ではなく(ソ連崩壊は)ただの夢で、窓の外にはまだソ連の生活が続いている…。ソ連時代に戻ったら生きていた両親と会いたい。それ以外には何もない。  ―自分について(旧ソ連構成国)ジョージア(グルジア)人だという認識はあるか。ロシアとジョージアの関係をどのように評価するか。  民族的な感情を煮詰めてしまう巨大なるつぼであるモスクワに私は育った。モスクワっ子、それだけだ。私はジョージア語を知らないし、ジョージア文化に精通していない。しかし、ジョージアに対して一種の本能的なシンパシーを持っている。私はジョージア料理が大好きで、ジョージア語の音は私にとって心地良い。2008年にロシアが小さな国(ジョージア)に軍事力を行使し、みっともない行動を取ったことを私は恥じている。  ―現在のロシアのプーチン政権に対する意見は。現在の政治体制をソ連体制と比較するのは適切だと思うか。現政権の問題点は。  控えめに言って、私はプーチン政権が気に入らないので、ロシア国外に住んでいる。現政権がソ連に似ているのは外見のみだ。ソ連は世界的な超大国だったが、ロシアは地域のリーダーにすぎない。ソ連はイデオロギー国家だったが、ロシアは独裁者の生涯にわたる権力を維持する以外に何の思想も持っていない。  ソ連では金は主たるものではなく、特に重要な要素でさえなかったが、ロシアでは金が物を言う。そしてルーブルではなく、ドルがすべてを決定する。腐敗した全くの欺瞞(ぎまん)に満ちた構造であり、巨大で可能性ある偉大な国の正常な発展を妨げている。  ―ソ連崩壊から30年になる。ロシアの内外の政治状況の観点からこの30年をどのように総括するか。ロシアは将来どのような課題に直面するか。  私は「ロシア国家の歴史」シリーズを執筆しているが、このことは出来事を「長期にわたる」歴史的視点から見ることを私に促している。  私の知る限り、91年以降、私の国は「半減期」にある。旧帝国から「連邦構成国」が離脱した第1段階の後には第2段階があるだろう。  (第2段階は)中央が地方にもっと自由を認めていたら回避できるかもしれない。つまり、ロシアが超中央集権国家ではなく、真の連邦国家であったならば。  しかし、ウラジーミル・プーチンの路線では政権が弱体化した時に、遠心力が一気に高まる可能性が非常に高い。そして次の分裂が起きる。  体制は時代遅れで経済的にも非効率であるため、弱体化は避けられない。これがいつ起こるか、そして代償が幾らなのか、私は予測できない。それはさまざま状況によって異なるだろう。  ◇ボリス・アクーニン氏  ボリス・アクーニン氏 1956年5月、旧ソ連グルジア共和国生まれ。モスクワ大卒。日本について学び、東海大に留学経験がある。79年から文芸評論を行い、日本文学をロシアに多数紹介。本名グリゴリー・チハルチシヴィリで、日本語の「悪人」からペンネームを取って98年に作家デビューした。歴史推理小説「ファンドーリン」シリーズはロシアでベストセラーとなり、日本語訳もある。プーチン政権に反発し、2014年以降はロンドン在住。 【時事通信社】 〔写真説明〕ロシアの作家ボリス・アクーニン氏(本人提供・時事)
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