長引く円安を受け、海外事業に意欲的な企業が増えています。とりわけ、初期投資の低さから注目されているのが貿易です。しかし、輸出網を確立するには多岐にわたる準備が必要です。特に、物流体制の構築は決して簡単ではありません。そんな中、1箱の貨物からオーダーメイドな国際物流を提供し、70年以上の歴史を積み重ねてきたのが東日本港運です。トラブルが多いとされる国際物流の世界で、長年にわたり信頼を集める理由はどこにあるのでしょうか。代表取締役の酒井久さんと副社長の松田敏明さんに話を聞きました。
物流担当者の「孤独」に寄り添うサポート

「メーカーや商社の物流担当者は孤独なんですよ」
国際物流について話を聞いている中で、東日本港運の代表取締役、酒井久さんが口にした言葉です。なぜ孤独なのでしょうか。
「私自身、外資系メーカーで物流担当をしていてそう感じていました。大きいのは、社内で物流の難しさが理解されていないことです。物流は『経済の血液』ともいわれるほどで、止まってしまうと社会全体が大きなダメージを受けます。そのため、非常に多くの関係者が止めないように支えているわけですが、『止まらないのが当たり前』のように見えることから、簡単な業務だと思われがちなのです」
単に物を運ぶだけ、と見られることも多い物流ですが、実際はその前後にさまざまな工程があります。倉庫で保管する場合は在庫管理も必要ですし、いざ出荷となれば梱包もしなくてはなりません。積み下ろしの方法や使用する機械など、「全ての工程に細かいノウハウがあります」と副社長の松田敏明さんも話します。
また、国際物流は、税関での輸入手続きが煩雑です。物流会社などが代行サービスを提供していますが、「丸投げ」していては適切な物流業務はできません。
「たとえば関税です。扱っている商材にどんな素材が使われているかで、実際に適用される関税率が細かく変わります。関税は消費税と違って原価に直結しますので、しっかり把握し、対応しなくてはなりません」と話す酒井さん。通関業務を含め、物流会社などが代行サービスを提供していますが、あまり親身になってくれないところも多くて苦労したと振り返ります。
「だからこそ、物流会社としてそういう孤独な担当者さんに寄り添い、お客様企業のビジネスに貢献したいという思いを強く持っています」(酒井さん)
税関のお墨付きである「AEO認定業者」の強み
では具体的に、どのようなサービスを東日本港運は提供しているのでしょうか。「最大の強みは、AEO認定を取得していることです」と酒井さんは語ります。
AEO(Authorized Economic Operator)とは、貨物のセキュリティ管理と法令遵守(コンプライアンス)の体制が整備された事業者を税関が承認・認定する制度のことです。2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ以来、国際物流におけるセキュリティの確保と円滑化の両立が不可欠になったことを受けて導入されました。そういった経緯もあり、認定のハードルはかなり高いのが現実です。
「全社員がAEOについて理解したうえで、情報管理や顧客管理をかなりしっかりとやらないと認定を取得することはできません。細かいことですが、仕事を終えてオフィスを退出するときは机上に何も置かないとか、引き出しのひとつひとつにも鍵をきちんとかけるといったことが求められます」(酒井さん)
しかも、一度取得すればずっと認定業者でいられるわけではありません。毎年の監査をクリアしなければAEO認定業者の看板を下ろさなくてはならないため、常に最先端のセキュリティ体制と強固なガバナンスを維持している必要があります。
実際、JETRO(日本貿易振興機構)が「国際物流の混乱と企業の対応状況」という特集コンテンツをホームページ上で継続して更新していることにも表れているように、国際物流にはアクシデントがつきものです。天候や船舶のトラブルに加え、商品の紛失や破損などのリスクもあります。 そうした中で、東日本港運がセキュリティの確保と物流円滑化を推進する事業者と認定されている価値は、非常に大きいといえるでしょう。「AEO認定業者として、どんなトラブルが起こっても、たとえ担当者不在であっても素早く対応できるようにしています。全てきっちりと書類に残し、トレーサビリティを確保しているのもそのためです」と酒井さんは胸を張ります。
強固なネットワークとノウハウが「高い会社力」の源泉

1951年創業と、70年以上の歴史を積み重ねてきたことで、広範囲のネットワークを築き上げているのも、東日本港運の特長です。
「中国、韓国、台湾のほかベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポールなど特にアジア圏にネットワークを築き上げてきました。国内外に多数の協力会社がいますので、緊急事態でもどうにかできるのが強みです。物流は、うまくいくのが当たり前ですので、逆にいえばうまくいかないとき、トラブルが起きたときこそ『会社力』が問われると考えています」と松田さん。人の力にも自信があると力を込めます。

「通関士の有資格者はもちろん、長年勤務しているベテランが多く、それぞれがさまざまなノウハウを積み上げています。グローバル展開をしているため、英語はもちろん、中国国籍や台湾国籍の社員も在籍するなど多言語対応も可能です。そうしたスキルをフルに生かし、お客様に寄り添って幅広い提案と適切な対応を行っています」(松田さん)
さらに、独自の強みを持つ企業群と連携している点も見逃せません。
「特に、船舶管理と船員派遣の事業を展開する『横浜海商』と、人材派遣事業をしている『ラックプラン』の2社とは密接に連携しています。『横浜海商』にはフィリピン国籍の社員が3名おり、フィリピン人やインドネシア人といった外国籍の船員を日本の船主様に派遣しています。今後さらに加速する人口減少を受け、外国人材の需要はますます増していきますし、環境負荷が低く、低コストで大量輸送できる海運の可能性はさらに広がります。『ラックプラン』ではメーカーや商社、倉庫会社などにも人材を派遣していますので、物流業務のお手伝いもできるのではないかと思っています」(酒井さん)
エッジの効いた専門性を多面的に有しつつ、「私たち経営トップもフットワーク軽く動きます」と2人が口をそろえるほど高い機動性を生かし、柔軟な対応を実現している東日本港運。これから海外進出しようという企業はもちろん、今までの取り組みをブラッシュアップしたいと考える企業も、国際物流のパートナーとして検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。何よりも、「いくつもの修羅場をくぐってきました」と快活に笑う経営トップは頼もしいことこのうえなしです。
「私たちの社是は『誠実』です。海運・陸運を組み合わせた、安心な通関、安全な輸送、迅速な配送を実現するドア・トゥ・ドアのサービスのために、思いやりのあふれたお手伝いをしていきたいと考えています。物を運ぶだけでなく、お客様のビジネスをさらに発展させる提案をしていきますので、どんなことでもお気軽にご相談ください」(酒井さん)
◆東日本港運株式会社
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