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ニュージーランド・インタビュー「2Degrees」~アルファ ロメオに出会ってしまった整備士~


「六次の隔たり」(6 Degrees of Separation)をご存知だろうか。 この地球上では、相手が誰であろうが、最大でもたった5人の「知り合い」をたどれば「つながる」ことができるという説があるほどだ。 人口が僅か500万人ほどの島国であるニュージーランドは「六次ではなく二次(2 Degrees)の国」であるというのが一般的な理解で、国内にはその名を冠した携帯キャリアが存在するほどだ。 事実「小学校が同じ」、「兄弟と知り合い」などといったことは日常茶飯事だから面白い。  そんな「みんなが知り合い」という特色を利用して、旧車オーナーや業界人を次々とご紹介いただき、「つながる」ことを実感しようというシリーズ。 それがこのインタビュー「2 Degrees」だ。 ■90マイルビーチ(ノースランド地方)より オークランド在住のtomatoです。 第2弾となる今回は、筆者がお世話になっている美容師さんからご紹介いただいた整備士の「ナオキ」さん。 実は「ナオキ」さん、美容師さんのご主人でもあるのです。ちなみにおふたりは新婚ほやほや。 オークランドCBD(中心部)からハーバーブリッジを渡った地域「ノースショア」に、愛車ロードスターを走らせ、彼の職場へ取材に向かった。 ■現在 / TODAY 彼の名字は珍しい、「大豆生田」さん。 読み方はさらに珍しく、「オオマニュウダ」と読むらしい。 栃木県に多い名字だそうだが、彼は東京都出身である。 整備士歴は、日本人メジャーリーガー的にいえば、日本・ニュージーランド通算でおおよそ10年になるそうだ。 ニュージーランドはワーキングホリデービザ制度で渡航し、(輸入中古車が、道路事情に適合するかを確認する)輸入車輌検査場で働き始めた。 だが、つまらなそうにしている彼に気づいたのか、整備知識や経験に対して、仕事内容が不十分だと察した同僚の勧めで、わずか2週間後には、現在の自動車整備工場に転職している。 ちなみに、その工場施設を折半で使用している板金会社が人手不足ということもあり、新しい挑戦として「板金工」の仕事も同時に行っている。 ▲「整備工場」と「アルファ ロメオ 146」と「ナオキさん」  彼の職場で待っていたのは、赤いアルファ ロメオ 146だった。 1998年式の5MTだという。 もちろん、1.6リッターの自然吸気4気筒エンジンは、1気筒あたり2本のスパークプラグが配置されている「ツインスパーク」だ。 ●愛車のお気に入りポイントはどこですか? 「やっぱり、ツインスパークのエンジンですね。高回転では1.6Lとは思えないトルクがあって、エンジン音も良くて、NAエンジンらしく、回して楽しいですよ。それと、マニュアル車らしい“使い切る楽しみ”ですね。あと、どの他のメーカーとも似ていない、独特な顔も気に入っています。なんか『バルタン星人』みたいでしょ?これが『ダサかっこいい』んですよ」 ●もともと、アルファ ロメオが好きだったんですか? 「日本では、スバルブルーのGRB型インプレッサ WRX STIに乗っていて“速くないクルマはクルマじゃない”って思ってましたね(笑)。アルファ ロメオを持っているカズさん(現職の社長さん)と、このクルマの前オーナーがよく話しているのをそばで聞いているうちに、これが本当に不思議なもので、カッコ良く見えてくるですよ(笑)」 ▲日本にいたときの愛車、スバル インプレッサWRX STI ナオキさんは「昔のクルマの方が、カッコイイ!」と語る。 第三者視点で見たときに、珍しい旧車を所有している人のゆったりとした「ライフスタイル」がクールと感じるそうだ。 確かに、ここオークランドでもアルファ ロメオの旧車は目立つだろうが、こんなにもクルマの趣味は変わるモノなのだろうか。 とても興味深い変化だ。 取材時も、愛車をリフトアップし、楽しそうにリアブレーキ周りで作業されていたのが印象的だった。 ■過去 / Yesterday では、そんなナオキさんの過去を聞いていこう。 「ナオキさんの愛車は、少し古めのイタリア車」と奥さまから聞いた時点で、筆者の頭のなかでは「旦那さまはタダモノではない」という予感があった。実際に取材を進めると、やはり「タダモノ」ではなかった。 ●現在の職業「クルマの整備士」につながる一番最初の記憶や出来事は何ですか? 「実は、バイクなんですよね(笑)」 なんでもナオキさんは、日本の「学校」というシステムに収まらない少年だったそうだ。 日本では「不登校」「やんちゃ」という言葉で表現されるのだろうが、いわゆる西洋の文化でいえば、才能の一種ともいえるかもしれない。 そんな訳で、一般的な人たちよりは、少しばかり早熟(?)だったナオキさん。このときに「機械をいじる」、すなわち「整備」が楽しいと感じたのがきっかけだそうだ。 ●もしかしたら、社会人1年目から整備士に?  「料理も好きだったので、高校へは行かず社会人としてシェフの仕事に就きました。でも、大検『大学入学資格検定(現在の高等学校卒業程度認定試験)』も取得したので、資格だけでもあったほうが良いと思い、シェフをしながら整備士の専門学校に通ったんです」 ところが、専門学校は彼の苦手な枠組み、「学校」なのだ。 シェフの仕事が忙しいこともあって学校を休みがちになり、「もう学校を辞めよう」と思ったそうだ。そんなとき、学生生活のなかで唯一といえる恩師「市東(シトウ)先生」が声をかけてくれたのだという。  そんな恩師をナオキさんは、親しみを込めて「シトウちゃん」と呼ぶ。 ●どんな言葉をかけてくれたか覚えていますか? 「もちろん、覚えていますよ。『お前、センスいいんだから、ちゃんとやれ』とか、『ちゃんと学校に来い。卒業だけはしなさい』とか。あと、『自動車ディーラーとかで、メカニックになるべきだ』といってくれました。学校をやめる気満々だったボクを、強引に引き留めてくれました。運だけは、特に人運だけは良いんです(笑)」 実は、就職でも感動的なストーリーがある。 この恩師の頑張りで、なんと「学校推薦」で、T社系ディーラーの採用試験を受けることができたのだ。 ところが、結果はなんと不合格。 学校長は「学校推薦で落とされるなんて、前代未聞だ」と恩師と彼を叱責したそうだ。 そして後日、そのディーラーの就職担当者、校長、恩師、そしてナオキさんの4人で会合が行われたのだが、就職担当者から驚愕の発言があった。 「後日おこなう、一般入社試験であれば、合格にします」といったのだ。 そう、問題は彼の学歴だったのだ。 大検の彼では、社内的に学校推薦枠としての合格にそぐわないというのが理由だ。 当然、それを知った彼は「ふざけるな。そんな会社こっちからごめんだ」と激昂し、その場でオファーを蹴った。 しかしこのときは、さすがに自暴自棄になったそうだ。 それでも、恩師である「シトウちゃん」から「あと、1社だけ受けてくれ」という頼みを断ることができず、I社系ディーラーへの就職が決まるのだった。 ●実際に整備の仕事を始めてみて、楽しかったですか? 「整備が好きなんで、楽しかったですよ。朝9時から働き始めて、夜10時に終われば早いって感じでしたから、過酷でしたけどね」 ●そんなに忙しかったのですか? 「ボクらは、主に物流会社のトラックを扱っていたんで、『明日の朝には走れるようにして欲しい』とか、そうい依頼が多かったんですよ。だから、他の地域にパーツを取りに行って、それをその日に組み付けるとか」 ちなみに、ゴミ収集車やバキューム車の整備は、じゃんけん制で担当者を決めるというルールだったそうで、この点からもいわゆる「ブラック企業」ではなかったのかもしれない。 ●ニュージーランドに来ることを決めたのはなぜですか?そして、いつですか? 「18歳くらいから『日本から出たい』って思うようになりましたね。何の計画もなく、周りにも『オレは海外で、ゆったり暮らす』っていってましたから(笑)」  その思いの根本は、生まれつきの「冒険魂」なのかもしれない。それとも、学校をはじめとした右向け右の「枠組み」が違うと感じたからなのだろうか。 「20歳以降は、海外のヒリヒリ感がたまらなくて、毎年のように10日間ぐらいバックパッカー旅行をしていました。フィリピン、台湾、タイ、バングラディッシュ、インドって感じで。英語は、YESとNOくらいしか分かりませんでしたから、最初に訪れたフィリピンで現地の洗礼を受けました(笑)」 「海外移住を決心したのは、インドのガンジス川に入ったときです。『ああ、会社辞めて、海外に行こう』って。インド行ったことあります?うまく表現できないんですけど、インドの人々の活気や生命感がとても印象的なんです」  ナオキさんは、インドから帰国後、たった2週間で会社を辞め、単身フィジー留学を半年間経て、ニュージーランドに26歳で渡ったそうだ。 ▲ガンジス川での沐浴 ■将来 / Tomorrow ●今後の目標や夢を聞かせてください。 「近いところでは、アルファ ロメオを塗装したいですね。でも、見積もりがNZ$4,000(≒35万円)で、腰が引けてます(笑)。あと、エアコンを直したくても、そもそもパーツが必要なんですけど、データベース上は品番が2種類存在していて、インパネ外さないと、そのどっちかも分からなくて(苦笑)」 苦労を楽しそうに語る、旧車好きに多い「ヘンタイ」(最上級の褒め言葉)な彼は、とにかくクルマという箱が、そしてエンジンが大好きなのだという。 いずれ旧車のレストアにも挑戦してみたいそうだ。 「人生という意味では、現状維持で毎日楽しく、好きな整備をしつつ、暮らせれば良いと思っています。今は、人生の分岐点じゃないと感じていて、例えば、『うちに来ない?』って、転職などの分岐点が訪れたときに、楽しいか、楽しくないかで決めれば良いと。運だけは、良いんです(笑)」... ...続きを読む
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