1月21日〜2月7日、2025AWトヨコレの展示会開会に先立ち、豊島株式会社は第6回「サステナブルファッションセミナー」を開催。豊島株式会社・トヨタ自動車株式会社・株式会社アーバンリサーチが連携し、業種を超えてアップサイクルの普及に取り組んでいます。この記事ではアップサイクルの取り組みとサーキュラーエコノミーについて、また展示会の様子をお届けします。
「モッタイナイ」を「もっといい」へ
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トヨタ自動車株式会社新事業企画部事業開発室主幹・中村慶至氏が登壇し、トヨタアップサイクルの取り組みについて説明。
車の製造過程では傷やシワがある本革の端材、部品などの「車を目指したが、車になれなかった素材」が必ず出てきてしまいます。それらが廃棄されCO2を排出しているのが現状です。「廃棄物を少しでも循環させていくために、ものづくりの業界と連携し、価値あるものに変えていきたい」と話す中村氏。プロジェクトを立ち上げてから4年が経過し、トヨタ自動車だけでは「モッタイナイ」が「もっといい」へ変わり続ける未来の実現は難しいと痛感。豊島株式会社や株式会社アーバンリサーチと連携し、活動を進めています。
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中村氏は「アップサイクルに取り組んでみて難しさを感じるのは2点。一つ目は、いつ、どのくらい、どんなサイズが出てくるかわからない素材を回収し、モノづくりできるまで整える非効率との戦い。二つ目は、廃材を使って消費者が魅力を感じてくださるような商品を生み出すデザイン力。」と回顧。今後はコラボレーションを増やして、業界を超えて広げていきたいと締めくくりました。
株式会社アーバンリサーチ廃棄衣料のアップサイクル
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株式会社アーバンリサーチはアパレルのセレクトショップで20〜30代の男女をターゲットに「すごいをシェアする」を企業理念に掲げる会社。執行役員・萩原直樹氏は自社の取り組みについて紹介しました。
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Clothing Innovation(衣料資源の有効活用)・Clean Earth(地球環境負荷の軽減)・Community Building(コミュニティの形成)の3Cを掲げています。
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2018年からアップサイクルの推進に注力するため、廃棄衣料アップサイクル「commpost」を開始。衣料品の廃棄と就労困難者の雇用問題を同時に解決することを目指しています。
店舗で衣料品を回収または生産過程で販売できない衣料品を収集。廃棄衣料は複数の色が混在しているため、就労困難者の施設で色分けを行います。デザインは株式会社アーバンリサーチが担当。主力商品の「MULTIPURPOSE BAG」はいまだに好評です。EXPO 2025 大阪・関西万博で物販の店舗を出店することが決まっています。
今回の異業種連携の取り組みについて
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トヨタ自動車が全体コンセプトの企画と素材の提供し、製作基盤を豊島株式会社が整え、デザインを株式会社アーバンリサーチが担当しています。これまでの協働では、アパレルで自動車業界の廃材が使われていることに注目度が高かったとのこと。異業種連携のメリットについて問われると「自分たちでは出てこない視点に気が付くことができます」と中村氏は回答。
レクサス等で使われている本革の端材を使ったペンケースには傷やシワがついていますが、その傷やシワを個性として受け入れられています。中村氏は「どの傷がいいですか?と質問して選んでもらうこともあります」とコメント。
3社は「世の中を変えるきっかけになりたい」という共通の思いを持って取り組んでいます。
サーキュラーエコノミーとは
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Circular Initiative&Partners株式会社代表取締役・安居昭博氏はサーキュラーエコノミーについて解説。サーキュラーエコノミーの注目度は年々上がっていると話します。
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従来の大量生産・大量消費のリニアエコノミーは一方通行型モデル。反対にサーキュラーエコノミーは捨てることがないのが最大の特徴です。リサイクルは上の図の真ん中に当てはまり、大量生産・大量消費に対して延命措置を実施したが、結局廃棄になるモデルのこと。サーキュラーエコノミーは絶対に捨てさせないように企業が努力し、サブスクリプション、キャッシュバック、デポジットの制度で利用者から企業へ返却が促されています。
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オランダでは分解可能な建築物があり、サーキュラーエコノミーの事例として知られています。
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短い期間しか使われない建物が役目を終えたら森に帰るサーキュラーエコノミーの事例。
日本でのサーキュラーエコノミーの可能性
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安居氏はオランダに居住した経験をもとに、ものづくりで栄えてきた日本のサーキュラーエコノミーの可能性を語りました。「アーバンマイニング、都市鉱山といわれる今まで活用されていなかった資源が日本にはたくさんあると感じています」と評価し「サーキュラーエコノミーは都市的な考えだと思われる人が多いですが、それぞれの地域に可能性が眠っています。京都だと和菓子の端材など、地域性が表れた商品開発ができると思います」と口にしました。
今後について問われると、萩原氏は「廃材を価値あるものに変える取り組みで1番問題になるのは、商品・サービスが売れないことです。そうならないように、コストを下げる・価値を上げて打ち出す、といったことに貢献していきたいです」と今後についてコメント。
続けて、中村氏は「エコだから認めてくださいは売れないので、本当におしゃれでかっこいいものを作っていきたいです。そしてプラスα、歴史や文化、ストーリーといった価値をつけていきたいです」と話しました。
BtoB向け展示会「2025AWトヨコレ」の様子
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FOOD TEXTILEは食品会社から未活用の食材を買い取り、染料を抽出し布や綿を染めるサステナブルなプロジェクトです。
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異業種同士のコラボレーション事例です。カカオ豆の皮から抽出した色で染めています。
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廃棄されてしまうコスメをファブリックプリントの色材として再利用。ファッション業界で初めてとなる取り組みです。
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QRコードを読み取ると消費者が製品を手にするまでその製品がどのような工程を経て、どんな企業が携わったかを可視化できます。
原料から製品まで、すべての履歴がわかり、サプライチェーンの透明性を担保します。
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数種類の柄のひな型から気になる柄を選び、キーワードを選択すると、数秒で約100種類の柄が提案されます。簡単にイメージのすり合わせが可能となることで服のサンプルの作り直しが減り、時間とコストの削減に繋がっています。
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オーガニックコットン素材で様々なカラーの吸水ショーツを作っているフェムテック・フェムケアブランド「Hogara」。2024年から福利厚生サービスも展開しています。
【概要】
2025AWトヨコレ(TOYOSHIMA COLLECT GENERAL EXHIBITION)
場所:豊島株式会社東京本社2階TOYOSHIMA CREATION LAB(東京都千代田区神田岩本町2-1)
期間:1月21日(火)~2月7日(金):平日10:00~18:00
※要予約
※一般のお客さまの来場は不可となっております