GORE-TEXの価値はどこにあるのか?
ボクらがアウトドアのウエア選びをする際に、気になることって何だろう? デザイン、ブランド、機能性、価格?
それらの優先順位やバランスは人それぞれだけど、機能性の分野で言えば、GORE-TEX(ゴアテックス)と聞いて、知らない人はほぼ居ないのではないか。
先日、新しいゴアテックス プロが発表されたばかりで話題となっているが、「ゴアだから防水性◎」、「ゴアだから高価でも仕方ない」― 何となく、そう感じてしまっている部分も少なくないはず。正直言って、機能の差なんてよくわからないが、とかく有名でブランド力が高い。そんなイメージだろう。
だけど、何でみんなそんなにゴア、ゴア言うの?と。
アウトドアウエアにおいて、その素材は機能性を左右するもっとも重要なファクターであることは事実だが、防水透湿素材ひとつとっても、ゴアテックス以外にごまんとあるのだから。
ただし、認めざるを得ないのは、やはりそのブランド力。ゴア=高品質なブランドであることを、アウトドアをやらない一般人にまで認知させているのだ。
そんな矢先、日本ゴア社からプレスツアー参加の打診があった。何でもアメリカ・ゴア社を見学できるという。なぜそんなにブランド力を高めることに成功したのか。その秘密が分かるかもしれない。
アメリカ・ゴア社訪問。
アメリカにおけるゴア社のファブリクス部門の拠点は、NYから約1時間のデラウェア州、ニューアークにある。ドーンとでっかいビルを想像していたが(日本の感覚)、さすがはアメリカ、土地が広い。
役割の異なる施設が街中に点在しているようで、とにかくバス移動が長い。どこに何棟あるのか聞くと、軍事機密の観点から公表できないそうだ。それこそアメリカっぽい。また、それだけの企業だということも肌でわかった。
ゴア製品はウエアだけにあらず。
そもそもゴア社は1958年に立ち上がり、合成ポリマーPTFEを絶縁ケーブルに使用し電子機器製品市場で成功をおさめた。そして1969年に創始者の息子であるボブ・ゴアが発見した、新しいポリマー延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が今のゴア社のベースともいえる。
ゴアテックスをはじめとするゴア製品は、PTFEと呼ばれるフッ素樹脂を原材料とし、独自の技術で延伸加工することで(ePTFE)、ファブリック用だったりフィルター用だったり医療用など、多様な用途に使われているのだ。
上がPTFEとポリウレタンポリマーを複合して作られた生のメンブレン。ファブリックに使われるフィルム状のものから、ファイバー状のものまであり、たとえば、胸部大動脈用のデバイスや、釣り糸、ギターの弦、配線ケーブル、スピーカーなど、用途に応じてあらゆる製品に使用されている。
アーカイブルームはお宝の山。
1976年にゴアテックス ウエアが誕生して以降、各メーカーから数々のプロダクトが世に送り出されてきたが、それらを保存しているアーカイブルームにも入ることができた。
いよいよラボへ。
前半では、ゴア社のプロダクトやヒストリーについて軽く触れたが、ここからが本番。ゴアテックス製品の開発に欠かせない、テストラボへと足を踏み入れた。
ここでは、防水テスト、耐摩耗テスト、洗濯テストなど、製品カテゴリーに応じて驚くほど多くの品質基準テストが行われている。それらすべてをクリアしたプロダクトだけがボクらの手元に届くというわけだ。
ゴアテックス=高品質は間違いじゃない。
このアメリカ・ゴア社ツアーを通じて分かったことは3つ。
ひとつは、ゴアテックスというブランドが、無二のオリジナルであること。
ePTFEの加工技術を応用して、アウトドア分野のみならず、医療や航空分野まで進出して社会的価値をもたらしていることも、ブランディングに大きく寄与していると考えられる。
2つめは、真似できない品質管理を徹底しながら、パートナー企業と切磋琢磨して製品開発を行っていること。
ゴアテックス ファブリクスはどんな企業でも扱える素材ではない。メーカー側にもその品質を最大限に発揮させる努力が必要で、結果的にその努力が出来る企業のブランド価値をも引き上げていると思われる。
そして3つめ。冒頭でも触れた、ブランド名からの何となくの信頼感とか、ゴアだから高い値段を払ってもいい、という感覚はあながち間違いではなかったということ。
なぜ高品質なのか、なぜ支持され続けているのか、これまで何となく抱えていたモヤモヤが晴れるツアーとなった。