インドアで楽しく過ごす方法はたくさんあるが、その中でも外遊びに行けない鬱憤を晴らしてくれたり、自分では決してできないようなことを疑似体験させてくれたりするのが、映画。
悪天候やスケジュールの都合などでアウトドアに行けないときには、部屋でゆっくり映画鑑賞もいいものですが、何を観たらいいのかイマイチ分からない。
そこで今回は、アウトドア派な映画好き5人に、おすすめ映画を3作品ずつ聞いてみました。
【ジャッキー・ボーイ・スリムさんのおすすめ映画】
最初のセレクターは、GOOUT本誌の連載企画「POOR BOYS TIMES」でおなじみJackieboyslim(ジャッキー・ボーイ・スリム)さん。夜、寝付けないテントの中で映画を見るのが好きだというジャッキーさんのセレクトは、彼の外遊びのスタイルにも影響を与えたであろう作品だ。
1.森谷司郎『八甲田山』
日露戦争の開戦が迫る明治35年、厳冬の青森県八甲田山を踏破する雪中行軍を行った帝国陸軍の総勢237名が辿る過酷な運命を描いた超大作。
「雪山に対するトラウマ映画。大人になってから雪山を歩いている時はいつもこの映画で北大路欣也が演じた神田大尉を思い出します。この映画があるおかげで僕は臆病になれたので今後も雪山で死ぬことはないと思います」
2.ロブ・ライナー『Stand By Me』
1950年代アメリカの田舎町を舞台に、ヒーローになるべく死体を探す旅に出た少年4人組の冒険を描いた名作青春ドラマ。
「ブランケット・ロールを背負って焚き火でマシュマロを焼くシーンが印象的。僕もキッドの頃にこんなカウボーイキャンプをしたかったですね」
3.ウッディ・アレン『ギター弾きの恋』
アメリカ“ジャズ黄金時代”を背景に、堕落した生活を送るジャズギタリストと口のきけない少女の恋愛ドラマ。
「自堕落な架空のジプシーギタリスト”エメット・レイ”をショーン・ペンが演じた不器用なギター弾きの切ない恋の物語。今でもジプシージャズを聴いているとエメットの事を思い出したりする」
Jackieboyslim/アウトドアギア・クラフトマン
ULを軸とした沢登りやバイクパッキング、フィッシング、トレイルランニングとあらゆる外遊びを網羅する生粋のアウトドアマン。ハイク、バイク、フィッシュ&ライフをコンセプトにしたブランド「JINDAIJI MOUNTAIN WORKS」のプロデューサーも務める。
■好きな映画のジャンル:コメディ
【低山小道具研究家 morikatuさんのおすすめ映画】
アウトドア雑誌「ランドネ」で映画紹介コーナーも担当していた低山小道具研究家のmorikatu(モリカツ)さん。特にドキュメンタリーとホラーが好きで、アウトドアとホラーがミックスされた作品にも注目しているという。
4.デブラ・グラニック『足跡はかき消して』
「イラク戦争に従軍し、この社会が嫌になった父娘がオレゴンの森の中でひっそりとサバイバル生活を送るが、パークレンジャーに見つかり、強制的に社会の歯車へ戻される」
「実際にあった事件が元となったこの映画。父娘を演じるベン・フォスターとトーマサイン・マッケンジーの物悲しくも力強さを感じさせる演技が見事です!」
5.フランク・キャプラ『スミス都へ行く』
「主人公はボーイスカウトのリーダー。子どもたちのからの絶大な支持を知った悪党たちが政界に担ぎ出す」
「アウトドア好き必見の映画だと思います。戦前1939年の映画ですが、今の日本と全く同じで愕然とさせられます」
6.ショーン・S・カニンガム『13日の金曜日』
「閉鎖になっていたキャンプ場を再開させるべく若者たちが集まるが、そこに謎の殺人鬼が現れ、次々と惨殺していく。」
「低予算で作らなければならないホラー映画にはアウトドア映画が多いんですが、これはそのきっかけを作った作品。低予算ホラーは現在スターとなった俳優が若い頃に出ていることも多く、それを探すのも楽しみの一つです」
morikatu/低山小道具研究家
秘密基地と川口浩探検隊に夢中だった少年時代を経て、今でも研究と称してゾンビが発生しても生き延びられる場所を探して山の中を歩いている。前人未到や秘密という言葉に弱い。
■好きな映画のジャンル:ホラー、ドキュメンタリー
【「横乗日本映画祭」実行委員長 mo3 (もっさん) のおすすめ映画】
サーフィンやスケートボード、スノーボードなどの「横乗り」をテーマにした「横乗日本映画祭」の実行委員長をつとめるmo3(もっさん)は、もちろんセレクトした映画も横ノリ系だ。
7.Takahiro Morita『FESN presents overground broadcasting』
スケートボード界のカリスマ的存在である森田貴宏氏が世界各地のライダーと映像・音のコラボレーションをして作り上げたスケートボード映像作品。
「この作品は、スケートボード映像なのですが、技術に捕らわれない、スケートボード本来の創造性を最大限に広げた作品であることに間違いありません!」
8.yone film『LIVE NATURALLY』
フィルマーのyoneが8mmフィルムを使用して、スノーボード、スケートボード、サーフボードのセッションを記録した作品。
「全編8ミリで撮影されていて、デジタルにはない奥行き感じることができます。スローのような柔らかな画質は、デジタル時代に感じなかった懐かさが蘇ります」
9.竹井達男『HIRATSUKANIAN Ⅳ』
平塚在住のサーファーが最も危険なチューブライディングに挑戦する姿をおさめたドキュメンタリー映像作品。
「自分が出演している作品です。ロケーションは日本とメキシコ。シングルフィンサーフィンの魅力が秒刻みで炸裂します!」
mo3(もっさん)/「横乗日本映画祭」実行委員長
「横乗り」をテーマに、日本国内で撮影された作品や日本人による作品など、日本にフォーカスした選りすぐりの映像を映画館の大きなスクリーンで上映する「横乗日本映画祭」の発起人で実行委員長。平塚のショップ「MO3store」店主でもある。
■好きな映画のジャンル:横ノリ系(サーフィンやスケートボード、
【CINEMA AMIGO代表 長島源さんのおすすめ映画】
続いては、逗子のシネマカフェCINEMA AMIGOを運営するかたわら、逗子のビーチに出現する大きなスクリーンで映画を楽しむ「逗子海岸映画祭」の運営にも携わる長島源さん。ミュージシャンとしても活動する長島さんらしく、音楽的な映画を選んでくれた。
10.マット・ロス『はじまりへの旅』
アメリカ北西部の森深くで都会から離れて暮らす家族が、母親の死をきっかけに2400kmの旅に出るという、家族の絆を描いたロードムービー。
「資本主義社会への批判からのエスケープの意味もあったヒッピームーブメント。その観点から現代社会への批判的な映画はいろいろあれど、この映画はヒッピーの理想を体現するとそれはそれでどこか無理が生じる点も描いているところが面白いです」
11.トニー・ガトリフ『ラッチョ・ドローム』
インドからスペインへ渡ったと言われる移動型民族のロマ族(ジプシー)の旅路を壮大なスケールで描いた作品。
「日本ではジプシー(ロマ)というとスペインのイメージが強いですが、その源流とされるインドのラジャスタンからスペインに至るまでのジプシーの姿をつないだ映像詩的な作品。特に音楽が素晴らしい! 説明を省いた映像の中で感じられるロマ文化の喜怒哀楽の描き方が
12.ベン・スティラー『LIFE!/ライフ』
廃刊が決定した雑誌を手掛ける平凡で臆病な主人公が、最終号を飾る写真を探す旅に出たことで人生が激変していくヒューマンドラマ。
「ネイチャー誌LIFEに関わりながらも自身はインドア派で妄想癖のある男がアウトドアを謳歌する話といったら強引でしょうか? 」
「曲がかかるまでの伏線が強引だなと思いながらも劇中でDavid Bowieの『Space Oddity』がかかるシーンが最高。良くも悪くも深いようでそこまで深くはない作品なので映像が綺麗というのだけでも充分楽しめます」
長島源/CINEMA AMIGO代表
神奈川県の逗子にあるシネマカフェCINEMA AMIGOを運営。地域のカルチャーを繋ぐ移動式映画館CINEMA CARAVANメンバー。毎年ゴールデンウィークに開催する逗子海岸映画祭をはじめ、池子の森の音楽祭、逗子アートフェスティバルなどにもたずさわる。ミュージシャン/モデルとしても活動。
■好きな映画のジャンル:「特定のジャンルが好きということないですが、サスペンス、スリラー、アクション系はあまり観ないです」
【カメラマン 菊地晶太さんのおすすめ映画】
GO OUTの名物カメラマン、菊地晶太さんも実は大の映画好き。その時の気分に応じて幅広い映画を楽しむものの特に「美男子出てる系」映画が好きだそうで、俳優に注目したイケメンセレクトをしてくれた。
13.ローレンス・カスダン『殺したいほどアイラブユー』
妻の前では働き者ながら実は勢力絶倫の亭主。夫の浮気現場を目撃した妻が夫殺しを企てるという実話を元にしたブラックコメディ。
「めちゃめちゃB級映画です。妻が色んな方法で夫を殺そうとするんですが、夫がランボーとかブルースウィリスくらい全然死なないところに笑い死にします。しかもなぜか、若き頃のリバーフェニックスとキアヌリーブスがダメなチンピラ役で出てるんですが、すでに2人とも最高に格好良くて、その辺も見どころです!」
14.フレデリック・トール・フリドリクソン『コールドフィーバー』
アイスランド旅行中に事故死した両親を弔うために現地へ向かう主人公が、旅の中でさまざまな困難に遭遇していくロードムービー。
「若い頃の永瀬正敏さんが主演の映画。永瀬さんがすげー古いシトロエンでアイスランドを旅していくというだけでほぼ100点!しかもそれに加えて演技も最高!」
「ひたすら雪景色なので、画面が大体白くてとにかく寒そうな映画なんですが、寒い中で飲むお酒が美味そうで、そういう演出にも惹かれます」
15.庵野秀明『式日』
人生に絶望し現実世界と距離をおいて生きる少女の精神世界を芸術的に描いた作品。
「エヴァンゲリオンやシン・ゴジラの庵野監督の実写映画。なんと『リリイ・シュシュのすべて』を手掛けたあの岩井俊二監督が主演! 岩井作品も好きんなんですが、顔は全然気にしてなかったので、まさかのイケメンぶりでびっくりです!」
菊地晶太/カメラマン
フィールドロケからスタジオ撮影まで、守備範囲の広めなGO OUTが誇る無国籍フォトグラファー。普段から映像に携わる仕事しているため、見たくないときは全然見ないが、無性に映画が見たくなる日があるという、気分屋な映画好き。
■好きな映画のジャンル:美男子出てる系、恋バナ、ロードムービー、見ると落ち込む系、ムナクソ系、銃ぶっ放し系
映画とともに、優雅なインドアライフを。
セレクターそれぞれのキャラクターを垣間見ることができた今回のセレクト。監督で掘るもよし、ジャンルで掘るもよし。外遊びに行けない週末は自分好みの映画を見つけて、優雅なインドアライフを過ごしてみては?
もちろん、部屋でまったり楽しむだけでなく、キャンプに行ったけど雨が降ってきてしまった……なんていうときに、テントに籠もってみんなで映画を楽しむにも良さそうだ。
- Text/Shinya Miura、GO OUT編集部