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いざ「結婚」となると、急に保守的になる彼




■とてもリベラルな人だと思っていたのに





彼との関係が暗礁に乗り上げていると嘆くのは、ミドリさん(32歳)だ。2歳年下の彼とつきあって3年がたつ。彼女は輸入雑貨関係の仕事をしており、彼とは仕事で知り合った。





「ふたりともワインが好きだとわかって飲みに行くようになりました。食の好みも合うんです。その前の恋愛はオレ様系の男に尽くして、結局、傷ついたことがあるので、もう我慢したり言いたいことを言わずに都合のいい女になりたくないという思いが強かった。2歳年下の彼はとても寛容な人。男役割女役割にとらわれていなかったので、最初から自然に言いたいことが言えました」





ドアをさっと開けてくれたり重いものを持ってくれたり。そんなことがスマートにできる男性だった。彼女が何か言い澱んでいると、「言いたいことは言ったほうがいいよ」と促してくれることもあった。





「たとえばレストランに行ったら、まずお互いに食べたいものを言い合うんです。そこから全体のバランスを考えてオーダーを決めていく。シェアするのが基本だから、一緒に考えていくんですが、そういうのが楽しいと初めて思わせてくれた人ですね」





決して無理強いせず、我を通すだけでもなく、一緒に考えていく。それが彼の基本だったので、彼女は心を許して信頼するようになったのだ。





「何かの話の折りに、彼が『男女は対等だよ。そうじゃなくちゃおかしい』と断言したことがあって、その言葉も心に残りました」





週に1,2回は会い、連休があれば近場でも一緒に旅をした。気づけば3年近い歳月がたっていたという。その間、彼の賃貸住宅の更新があり、話し合って彼女の住むアパートのすぐ近くに越してきた。





「一緒に住むという選択肢はお互いになかったような気がします。いくら親しくても、プライバシーは遺しておきたかったから」



 



 



■結婚がピンとこなくて





あるとき、彼の両親が上京してきた。彼に誘われ、一緒に食事をしたのだが、彼は両親に「僕の大事な人」と紹介した。彼女にとってはそれも心地よかったという。





「彼のご両親も、特に結婚するのかとも尋ねなかったし、和気藹々と食事をしました。ところがデザートを食べながら、彼のおかあさんが『式場は決めたの?』と突然言ったんです。彼が『いや、まだ』と答えると、『かわいいお嫁さんになるわね』と。かわいいお嫁さん? それなに? と私の中で一気にクエスチョンマークが飛び交いました(笑)」





ホテルに泊まる両親を見送り、ふたりで歩きながらミドリさんは彼が何らかの言い訳をしてくるだろうと思っていた。だが彼は何も言わない。しばらく歩き、「何か言うことない?」と彼女は穏やかに尋ねた。





「式場、決めようかと彼は言ったんです。いや、その前に結婚するかしないかの話もしてないでしょって。そもそもふたりとも結婚制度にのっとらなくてもいいといつも話していたんだから。すると彼は、『でもちゃんと届を出して結婚したほうが、公に認めてもらえるんじゃないかな』と。え、なんでそこだけ急に保守的になるのと私の頭の中は疑問だらけでした」





どちらの名字を名乗るのか、どちらが筆頭世帯主になるのか。世間の慣習として女性が名字を変え、男性が世帯主になることが圧倒的に多いが、そこにミドリさんは違和感を覚えていた。彼はそのあたりをどう考えているのか。





「そういうのは慣習にならうのがいちばんいいんじゃないって彼が言ったんです。今まであなたはもっと平等な人だと思っていたと言ったら、『僕にとって、あなたは大事な人。それだけじゃいけない?』と。もう少し大局的な見方がほしいと言うと、『いいじゃん、ふたりのことなんだから』となんだか噛み合わない」





男女は平等だよ、対等だよという彼のポリシーはウソだったのか。そう言うと、「僕は対等だと思ってるよ」と返ってくる。それなら名字の問題は、戸籍の問題はどうなるのかと聞くと答えられない。





「結局、彼は社会的制度には疑問をもっていなかったんですね。ふたりの関係の中で、対等だと思っているだけで、女性が社会制度で不利益を被ることについては無関心だった」





ひょっとしたら男女問わず、そういう人はいるのかもしれない。関係性の中で対等であれば問題ないと思っている人が。だが、そのベースとなる社会に不平等がまかり通っていたら、いくらふたりの間が対等であっても意味がない。土台がよじれているのだから。





ミドリさんと彼の間から「結婚」という言葉は消えた。ふたりともいずれきちんと話し合わなければいけないのはわかっているのだが、今のところはそこを避けて会っている状態だという。

 


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