お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(56)が5月10日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)に出演。新型コロナウイルス感染拡大に伴う休業要請に応じないパチンコ店の問題について、「パチンコの件に関してすごく不思議なのは〜」と切り出し、
「パチンコ屋さんは一日閉めるだけでこれだけ赤字になるから閉められないと。こんだけ赤字なんだ!と言ったら、それを聞いて行く客は、それを黒字にしにいくわけですよね。どういうモチベーションなんやろ。俺だけは負けないと思ってんのかな?」
……と、疑問を呈した。そして、同コメントを受けた高須クリニックの高須克弥院長(75)は翌日11日、ツイッターを更新。
パチンコ屋さんを黒字にするつもりで行く客なんかいないんではないかな。
パチンコ屋さんの開店前には、パチンコ屋さんが赤字になるくらい勝ってやると意気込んでパチンコファンが列をつくってます。凄いモチベーションです。 https://t.co/a5E1Ld56M0
—高須克弥 (@katsuyatakasu) 2020年5月10日
……と、自粛要請に従わない客側の心理を分析している。
さて。私はけっこう歴の長いパチンコファンだったりする、いや……だったりした。もっともハマっていた時期は下手すりゃ週2〜3回、景品の等価交換禁止やMAX台の廃止によって(ハイリスク)ハイリターンなギャンブル性(=射幸性)が失われつつある昨今でも、月イチくらいの頻度では通っていた。もしかすると、軽い依存症だったのかもしれない。
「俺だけは負けないと思ってんのかな?」という松ちゃんの素朴な疑問や、「パチンコ屋さんが赤字になるくらい勝ってやると意気込んで列をつくっている」という高須院長の分析は“元”パチンコ好きの視点から咀嚼してみても、たしかに間違っちゃあいない。ただ、間違っちゃあいないが、ニュアンスは微妙に違うようにも感じた。
私が推察するに、一定数のパチンコがやめられないヒトたちのメンタルは、もう少々切実な気がする。なにに「切実」なのかといえば、ズバリ「現金」。すなわち「日々の現金を切実に確保したいため、パチンコ屋に通い続けるしかない」のだ。
当たり前の話、パチプロでもないかぎり、パチンコで生涯収支がプラスになることは、まずない。しかし、たとえば「昨日負けてしまった3万円」といった “なけなしの現金”を “補填”するため、過去の「(頻繁な)負け」の記憶をすべて吹き飛ばしてしまう「(たまの)勝ち」で得た強烈な成功体験だけにすがって、「今日は昨日負けた3万円を必ず取り返すぞ!」と……さらにまた今日も2万円負けたら、その目標値が「5万円」に再設定され、負のループが連鎖していく……。「コロナショックでパチンコ業界が窮地に追い込まれているなか、景気良く玉を出す店なんてほぼ皆無」なのが事実なら、「負」の度合いはなおさら顕著化していくことだろう。
したがって、ここまでの世間的な風当たりの強さをモノともせず、自粛要請に逆らっても行列してしまう(一定数の)ヒトたちの根底にあるのは、松ちゃんや高須院長がおっしゃっているような“勇ましさ”よりは、むしろ
「とにかく動かないと(現金がないという)現状は変わらない」
「(勝てる)可能性は、たとえ1%しかなくても0%ではない」
……といった、凡庸なビジネス書や自己啓発本あたりでいかにも見かけそうな啓蒙のスローガン──ポジティブなんだかネガティブなんだか、じつはよくわからない “崖っぷちの発想”なのではなかろうか。
ちなみに、私は去年末パチンコに行って、1ヶ月分の家賃を支払えるほどの爆勝ちを果たした。それ以降は新型コロナウイルス騒動も重なって、すでに半年近くパチンコ屋には足を踏み入れていない。「ああ…打ちたいなぁ」みたいな禁断症状も、もはやない。パチンコを本気で断つためには「勝ち逃げ」こそがベター! そう私は思う。たぶん……?