どこか古風で誠実な印象を与える顔立ちの男前俳優ケビン・コスナー。タフさと優しさ、異性を惹きつける、相反する魅力のどちらも兼ね備え、数多くのラブストーリーやサスペンスに出演してきた彼の代表作を振り返る。
■『アンタッチャブル』[1987年]:禁酒法時代にはびこる悪に果敢に立ち向かう捜査官を熱演
コスナーの名を世界に知らしめたのが、硬派な演出が魅力の、映画界の巨匠ブライアン・デ・パルマが1987年に製作した傑作犯罪映画『アンタッチャブル』だ。
1920年代後半のシカゴ、禁酒法によりギャングたちの密売が横行していた暗黒時代。シカゴを牛耳るマフィアのドン、アル・カポネは絶大な権力を手にしていた。彼の罪をなんとか立証するため、アメリカ財務省の捜査官エリオット(ケビン・コスナー)は、正義に燃える老警官や新人警官など腕の立つメンバーを集め、カポネ打倒の決死作戦を実行する…というストーリー。
カポネ役に圧倒的威圧感を発揮するロバート・デ・ニーロ、エリオットを支えるベテラン老刑事にショーン・コネリーなど、名優入り乱れる迫真の攻防や、クライマックスの大階段でのアクションは映画史に残る名シーンだ。正義に燃える主人公を演じたコスナーは、本作の演技が評価され、ハリウッドで一躍有名になったのである。
■『ボディガード』[1992年]:あの一度は耳にしたことがある名曲のロマンティックサスペンス
主演を務めた歌手ホイットニー・ヒューストンの歌う『オールウェイズ・ラヴ・ユー』は、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。命を狙われる歌手を命がけで守り通す胸キュン展開と、溢れ出る男前っぷりを魅せたコスナーに世界中が魅了された一作だ。
レーガン大統領暗殺未遂に責任を感じ、引退していた凄腕シークレットサービスのフランク(ケビン・コスナー)。ボディガード業で生計を立てていた彼のもとに、人気歌手レイチェル・マロンの警護依頼が舞い込んでくる…というのがあらすじ。
当初はソリが合わず反目しあっていた二人だが、度重なる危機を乗り越えていくうちに、お互いの距離を縮めていく。タフで色気たっぷりなのにどこか不器用さも感じられるフランクと、浮世離れした純粋さを持っているレイチェル。ラブコメ的“萌え”が詰まった本作を見て、「ケビン・コスナーに守られたい! 」と身悶えした人が世界中で出たとか出ないとか…。
■『ウォーターワールド』[1995年]:USJでもおなじみ! 水没した世界を描いたSFファンタジー
最後に筆者が推したいのは、アカデミー音響賞も受賞したのに、最低の駄作映画に与えられるゴールデンラズベリー賞も獲ってしまったSF超大作『ウォーターワールド』だ。コスナーな荒廃した未来世界で、寡黙でたくましい主人公を好演している。
近未来。温暖化により南極の氷が溶け、地球は大陸が水に没した海洋惑星と成り果てていた…。文明社会は荒廃し、世界は食料を奪い合う海賊が跋扈する弱肉強食の世界。流浪の旅を続ける男マリナー(ケビン・コスナー)は、水に没していない土地〈ドライランド〉へのカギを握る少女エノーラを巡って、凶悪な海賊集団と対決を余儀なくされる…。
“海版マッドマックス/北斗の拳”とでもいうべき本作。ひなびた美術セットの豪華さや、オーバーリアクト気味な海賊のボスを演じたデニス・ホッパーの怪演も目を引く。そして、コスナー演じる主人公は、なんと環境変化により海で生きるのに適合したミュータントであることが明かされていくのだ。エラ呼吸して手に水掻きが張ったケビン・コスナーを見られるのは本作だけだ。アラもあるが実に軽快な一大娯楽大作である。