■彼女が無神経すぎる……
一方、彼女が無神経だと怒っているのはヨシヒロさん(30歳)だ。つきあって2年たつ2歳年下の彼女とは結婚するつもりでいる。彼女も快諾してくれた。お互いの実家にも挨拶がすみ、そろそろ結婚式の相談をしようと思っているところにこの騒動が起こった。
「とりあえずはお互いに気をつけて乗りこえよう、結婚式は終息後に考えようと言ったのに、彼女は今までとまったく変わらないどころかむしろ飲み会が増えているんですよね。週末はクラブに行っているし。僕も誘われたけど、さすがに行く気にならないですよ。彼女は『仕事のストレスを発散させないと』と言うけど、もはやそういう状況ではないでしょ」
不特定多数の人が集まる場所には行かないほうがいいと言っても、彼女はどこ吹く風だ。たくましいのか鈍感なのかわからないと彼は頭を抱える。
「彼女、両親と祖父母も一緒に住んでいるんですよ。若い人がウイルスを持ち帰って高齢者に感染させる。高齢者は重症化しやすいというから、僕は彼女のおじいちゃんおばあちゃんが心配で。家族のことを考えたほうがいいと彼女には言ったんですが、それでも遊び歩いているみたいですね」
今のところ結婚する意思はあるが、彼女のあまりに身勝手な行動が続けば、自分の気持ちが変わっていく可能性もあるとヨシヒロさんは言う。そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、彼女は「自粛」の言葉を跳ね返して暮らしているそうだ。
■彼が神経質すぎる……
3歳年下の彼とつきあって1年たつケイさん(28歳)は、ここ数週間、彼と会っていないという。
「同じ会社で仕事をしているんですが、彼の部署は在宅勤務になったんです。私の部署は今のところ週に3回の出社。彼の部署だって別に出社してきている人もいるんですが、彼はまったく出てこない。『コロナが怖いから外に出ない』と言い、食べ物などもネットで買っているようです。私が出社したあと、『部屋に行っていい?』と言っても、来ないでと言われています」
この状態では確かに、むやみに人に会ったりしないほうがいい。いくら若くても感染したら病状が悪化することもあり得るからだ。
「わかりますけど、彼みたいに怖がって家に閉じこもっているとメンタル的にまずいんじゃないかとも思うんです。だから人があまりいない公園で会おうかと言ったんですが、それも嫌だ、と」
彼はもともと神経質で繊細なところがあるという。だが、それが優しさにつながっているので、ケイさんは彼と一緒に過ごすのが心地よかった。
「でもこういうときには閉じこもってしまうんだ、私のことなどどうでもいいんだと思えてきて。私は会いたいんだけどと電話したら、『ボクだって会いたいけど……』と蚊の鳴くような声で言ってました。まあ、彼のような対応がいちばん安全なのかもしれませんけどね。うつさず、うつらずがいちばんだとは思うので」
彼に何を言ってもムダだと思ったケイさん、今は気持ちを切り替えて、会社帰りに同僚とすいている居酒屋で軽く飲食して早めに帰るようになったという。
「彼を臆病だとするか繊細とするか、私の中でも判断に迷っています。このままつきあいが続くとしたら、何か起こるたびに彼はひとりで閉じこもってしまうことを想定しておかなければいけないわけですよね。一緒に解決なんてできない。そういう彼でいいのかと今後について考えてしまいますね」
新型コロナウイルスの件では、さまざまなカップルがさまざまな価値観の違いに気づいているようだ。