自分からしゃべろうとしない夫に不満を抱える妻。決して冷たい人ではないのだが、日常的にはなんとも物足りない。我慢の限界にさしかかっている妻はどうしたらいいのだろう。
■話を聞いてはくれるのだけれど
「うちの夫とは全然話が盛り上がらないんです」
ため息をつきながらそう言うのは、シオリさん(48歳)。結婚して20年たつが、恋人時代から夫の口数は少なかった。
「ただ、話を聞いてはくれたんですよ。私はおしゃべりなほうなので、聞いてもらえるのがうれしかった。私が結婚に前のめりでしたね」
結婚してふたりの男の子を授かり、それなりに幸せな日々を送ってきた。だが、子どもたちが高校生と中学生になって自分たちの世界をもつにつれ、シオリさんは寂しくなってきたという。
「私もパートに出て忙しいんですが、子どもたちは前ほど何でも私に話してくれるわけではない。こっちから話してと言っても、男の子はうるさがるだけで……。夫は話しかけても、うんうんと聞いているのかいないのか。独身時代はもっと親身に聞いてくれたのに」
そんなことからストレスがたまっている。パート先で仲良くなった女性にそのことを話すと「些細なことじゃない?」と言われてしまった。
「彼女のところはほぼ会話なし。話しかけても無視されるのがわかっているから、ですって。よくそれで夫婦をやっていられるなあと思います。言えないけど(笑)」
無視されるなんて悲しすぎる。シオリさんはそう言った。
■夫を変えることはできない
無口な人に「話せ」と言ってもむずかしい。夫はそういう人なのだから。シオリさんもそれはわかっている。無口で無趣味で仕事人間。それが夫なのだ。
「でもねえ、近い将来、子どもたちは独立していく。そうなったらこの無口な夫とふたりでどうやって暮らしていけばいいんだろう。そう思うと気持ちが沈んでいくんですよね。私は趣味もあるし友だちもいるけど、最後はやはり夫婦で向き合うしかないような気がするんです、人生って」
せめて何か共通の趣味をもつことはできないか。彼女は今、いろいろ夫が興味をひきそうなものを提示している。昔一緒にやったボウリング、卓球などに誘い出したこともあるが、夫はぎっくり腰を再発、スポーツはダメだと悟った。
「何かを一緒にやれば会話も増えるんじゃないかと思ったんですが、どうもむずかしい。映画も本も好みが違う。そもそも夫はあまり映画や本に興味がないし」
共通の話題がない。若い男女の悩みではなく、結婚して20年近くたつ夫婦の悩みがそれなのだ。
「険悪な関係ではないけど、このままいくと私のストレスがマックスになって夫に八つ当たりしそうなんです。夫が何を考えているのか知りたい」
ひょっとしたら最後のその一言を、思い切り夫に打ち明けてみるのがいいのではないだろうか。