
片方がつきあっているつもりでも、もう片方がそうでなければ恋愛は成立していない。定期的にあったり体の関係があったりと実態がともなっていても、「つきあってないもんね」のひと言ですべてが終わってしまう。それが今どきの恋のようだ。
■結婚も考えていたのに
30代になってから、「なんとなくめんどうになって恋愛から遠ざかっていた」とセイジさん(40歳)は言う。結婚願望はあったし子どももほしいと思っていたが、こればかりは縁。焦ってもしかたがないと思っていた。
そんな彼が、6歳年下のミナさんに出会ったのは38歳のとき。友人に誘われて飲みに行った席にたまたま来ていたのが彼女だった。その後も、その中の何人かとグループづきあいをするようになった。バーベキューをやったりバッティングセンターに行ったり。みんなで卓球をしたこともある。
「彼女に惹かれたんですが、グループづきあいだから抜け駆けするわけにもいかないと最初は悩みました。でも自分から誘わなければコトは進まない。そこで彼女に今度ふたりでおいしいものでも食べに行かないかとメッセージを送ったんです。そうしたら彼女もうれしいって言ってくれて。そこから始まりました」
グループづきあいをしつつ、彼女とも2人でよく出かけた。そして数ヶ月後、ホテルへ誘うと彼女は黙ってついてきた。
「そこからごく普通に1年近くつきあい、僕の39歳の誕生日に『結婚してください』って言ったんです。すると彼女は、『え?』ってびっくりしたような顔になって。その反応にこっちが『え?』ってびっくり」
考えさせてと言われて帰宅したのだが、どうもすっきりしない。すると翌日、「あなたとつきあっているつもりはなかった」と彼女からメッセージがあった。
■言質がとれていなかった
彼女は「私はつきあおうと言われていない。だから友だち以上恋人未満のつもりだった」というのだ。
「定期的にデートして体の関係もあって、彼女の誕生日にはけっこうがんばって、ほしがっていた時計をプレゼントしたのに。ホワイトデーだってチョコのお返しに指輪を贈ったんですよ。それも彼女がほしがっていたから」
それなのに「つきあっていたわけではなかった」と言われてもと、セイジさんは落ち込んだ。「一度、話そう」とメッセージを送ったが無視された。
「つきあっていたわけじゃないという言葉の真相を知りたかったんです。でも電話にも出てくれないし、メッセージは無視されっぱなし。そのうちブロックされてしまいました」
そこへ追い打ちをかけるように、例のグループから、彼女が結婚することになったという噂が流れてきた。相手はグループとは関係のない人で、彼女の勤務先での先輩らしい。
「そんな……と思いましたが、今さら、僕は彼女とつきあっていたとも言えない。かといって泣き寝入りするのは悔しい。どうしようと思ったのですが、会社あてに、今まで送ったプレゼントを返せという手紙を送ってやりました。すると彼女、弁護士名義で返す義理はないという返事を寄越したんです。いきなり弁護士って……」
グループ内では彼女への結婚祝いやお祝いの食事会などをめぐって、みんなが盛り上がっていた。彼はひっそりグループを抜けた。
別れて1年たつ今でも、彼はときどき彼女を思っている。あんなに好きだったのに、40歳までに結婚できると思ったのに。
「やっぱり恋愛なんてするんじゃなかった。そう思っています」
立ち直るには相当な時間が必要かもしれない。