
妻にとって夫の実家とのつきあいは、いくつになっても神経をすり減らすものだ。そのあたりを気づいていない男性は多い。
■ある日、突然、実家に行きたくないと妻が言い出して
「うちの妻は、僕の実家とすごくうまくやってくれている。結婚してからずっとそう信じてきました。だから結婚して13年たったとき、『私、あなたの実家に行く回数を減らしたいんだけど』と言われたときは驚きましたね」
ユウイチさん(44歳)はそう言う。彼の実家は自宅から車で10分。実家は敷地内に妹一家が住んでいるとはいえ、ユウイチさんも月に数回は顔を出し、妻にはできる限りのことをしてやってほしいと頼んでいた。
「だけそれが妻のストレスになっていたんでしょうね。3年ほど前から妻はフルタイムで働くようになったんですが、それでも僕は『近いんだから行ってやってよ』なんて軽く言ってた。駅からの帰り道にちょっと顔を出すだけでいいんだからって。だけど行けばやはり家事を手伝うはめになってしまう。おふくろは足が弱っているので、ついでに夕飯の支度をしていってと言いつけたりもしていたらしい。そういうことを僕は全然知らなかったんです」
気づこうと思えばできたはずだった。家族で実家に行ったとき、妻は両親と自分の子どもたちが食べる料理を作り分けていた。父も母も、妻に甘えているのを目の当たりにしていたのだから。
「自分でできることまで妻をあてにしていた。それを僕は、妻と両親は仲がいいとほほえましく見ていさえした。妻のストレスを考えることはなかったんです」
夫の実家に行く回数を減らしたいと言った直後、妻が倒れた。ストレスと過労だという。だからこそ、ユウイチさんはようやく妻が抱えていた重い負担を考えることができたのだ。
■自分がいけなかったと反省
そもそも、妻がフルタイムで働き始めてからも、ユウイチさんは変わろうとしなかった。
「それまでパートで働いていたので、どうしても家事負担は妻のほうが多かったんですよね。彼女がフルタイムになっても、僕はそれまでと変わろうとはしなかった。僕がやるのはゴミ出しと、ときどきの風呂掃除、週末の掃除くらいで……。彼女がフルタイムで働くのを、やはりどこか快く思っていないところがありました」
妻が必死に働き始めたのは、長男が医学部へ行きたいと言い出したから。長女は音楽の道へ進みたいという夢があった。どちらもお金がかかるのは目に見えている。だから妻はフルタイムで働き始めたのだ。
「妻というものは、やはり家庭をしっかり守るべきだという考えが僕にあったんだと思う。子どもたちの夢を聞いても、あくまでも運と実力があればいいんじゃないかというくらいにしか考えていなかった。妻は彼らの夢を本気で受け止めた」
ユウイチさんは倒れた妻に心から謝った。親のことも子どものことも、ふたりでもっとよく話し合おうと伝えた。
「今のうちに気づいてよかったかもしれない。妻が倒れなかったら、もっと負担がかかってそのうち大病をするか僕が見捨てられたかのどちらかでしょうね」
家庭は夫婦ふたりの連携が大事。結婚して10数年たって初めて、彼はそれが身にしみたという。