何かあるとすぐに家出する妻がいる。揉めごとが大きくなる前に物理的に離れるのは悪いことではないような気がするが、夫としてはイラッとくることもあるようだ。
■家事と子どもの世話で疲弊して
結婚当初から、妻は何かあるとすぐ家出すると言ったのは、ヨウスケさん(43歳)だ。
「つい先日も、子どもの受験のことでちょっと諍いがあったんですが、翌日帰ったら妻がいない。小学校6年生の娘は隣の家で食事をしてきたと言う。みっともないし、娘をひとりにするなんてどういうつもりなんだ、と腹が立ちましたね」
いつも一晩たつと帰ってくるのだが、このときは二晩帰ってこなかった。だが娘は平然としていたという。
「妻は娘を私立中学に入れたいんですよね。僕は反対。娘も受験したくない。だから娘は母親がいないほうがいいんですよ。そういう関係もよくないなと思いますね」
ヨウスケさんは早く起きて娘の朝食の支度をし、夜も早く帰って娘と食事をした。二晩あけたあと、妻は夜遅くに帰宅した。
「どういうつもりか知らないけど、母親として責任をもってほしいと言いました。すると妻は、『私だっていろいろ息が詰まるのよ』って。どうやらホテルに泊まっていたようですが、息がつまるような家庭にしているのはきみだろって思わず言ってしまって、それからはずっと冷戦状態です」
娘は「おかあさんが家出するなら、私もするよ」と脅した。娘も思春期。ここで親がどういう態度を見せるのかが娘の人格形成にも影響するとヨウスケさんは考えている。
「妻はいい子で育っているから、遅れてきた反抗期みたいなものととらえたほうがいいのかもしれませんが、家庭は夫婦で協力しあってやっていかないといけない。オトナになりきれていないんでしょうか」
ヨウスケさんの悩みは深い。
■すぐに実家に帰ってしまう妻
何かあるとすぐ実家に帰ってしまうのは、マサトさん(46歳)の妻だ。中学生と小学生、ふたりの男の子を抱えて、妻もパートで働いているから、大変なのはわかっている。
「家事もできる限りやっているつもりです。でも妻には不満なんでしょうね。子どもが言うことを聞かない、私にもっと家事をやってほしい。そんな不満があると実家に帰ってしまうんです」
妻の実家は、自宅から歩いて15分ほどのところ。妻がいなくなると、実家だなとマサトさんも息子たちも思うようになっている。
「やっかいなのは、妻の両親なんですよ。妻が逃げ込むたびに、『離婚しちゃえば?』と離婚を勧めている。義父母にとっては、娘と孫たちが来てくれればうれしいかもしれないけどこちらもひとつの家庭なんだから……。しかもそういう親の言葉に妻は揺れてしまう。15年も結婚生活を続けているのに、いまだに“娘”でいるのはどうかなと私は思っていますね」
義父母とはいい関係でいたい。だが、その義父母が家庭を乱すことに一役買っている。妻はそんな両親の思いに乗っかろうとしている。
マサトさんの苦悩はこれからも続きそうだ。