「ワ〜タシ ピンクの サウスポ〜♪」──往年のピンクレディの大ヒット曲『サウスポー』で、一挙に日本中の老若男女へと広まった(認知された)「左利き=レフティ」の通称、「サウスポー」であるが、昨今でこそテニスや卓球や格闘技……ほか、さまざまなスポーツでも気さくに使われるようになってきたものの、もともとはアメリカの野球用語で、「左投げの投手」“のみ”をこう呼んでいた。
サウスポーのつづりは「southpaw」。southの「南」とpawの「腕」とをくっつけた造語である。サウスポーという言葉が誕生したのは19世紀末のこと。最初に使い出したのはアメリカの新聞記者……なんだとか。
語源については、二つの説が一般的とされている。
まず一つは、「南」がアメリカ南部を指すとする説。アメリカ南部出身のメジャーリーガー選手に左利きが多かったことから、左腕投手のことをサウスポーと呼ぶようになったという。
もう一つは、球場内での位置関係に由来するという説。球場は規則によってセンターが東北東に位置するようつくられていることが多かった。これは、打者が午後の日差しをまぶしく感じないようにとの配慮だったらしく、そうなれば左利きの投手が投球をする際、左腕が「南側」から出てくるように見えるから……なのだそう。
今年57歳を迎える私が、まだ子どもだったころは、左利きのことをよく「ギッチョ」となども呼んでいたが、なぜか差別用語扱いされ、今ではあまり聞き慣れない言葉となってしまった。一体、どのへんが「差別」なんだろう?
『日本語源大辞典』には、「不器用」が「ぶきっちょう」に転じたのと同じように、「左器用」が「ひだりぎっちょう」に転じ、それを日常的に口にしているうちに“略語”へと変化して、そのまま書き言葉としても通用するようになり、さらには文字化された……と書いてあった。あと、「左几帳(ひだりきちょう)」、「鞠杖(ぎっちょう)」という木製の鞠を槌形(つちがた)の杖で打ち合う遊技を語源とする……ほか、諸説があり、いずれにせよ「どのへんが差別的なのか、よくわからない」不思議な“禁句”と化している。
ちなみに、私は本来「生粋の左利き」であり、数十年前までは“当たり前”であった「物心がつくまでにお箸と鉛筆だけは無理やり右利きに矯正されたクチ」なんだけれど、そのせいで、たとえばクルマを運転しているときとかに、左と右の判断がコンマ一秒ほど遅れてしまいがち……だと、そこだけは親を逆恨みしている。もちろん、その説に関してはなんらめぼしい学術的根拠も、現時点では提唱されていない。
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