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子どもの虐待が驚くほど多い日本──“親による体罰“は法律だけではなくならない!?




毎日1人の子どもの命が、虐待によって奪われている―。日本小児科学会が、そう試算するほど、この国では虐待が多発しています。毎日のように痛ましいニュースが伝えられ、国際的にも、日本は“虐待対策の後進国”と厳しい目が向けられる中、ようやく「しつけと称した体罰を禁止する」法案が、国会に提出されました。政府は、一部を除き2020年4月の施行を目指します。



 



これまで、家庭への介入が遅れていたことを考えれば、一歩前進です。でも、全国で今も苦しむ子どもたちの存在を思うと、まだまだ不十分な点がいくつも浮かびあがります。



 



 



■“親が子を戒める権利“は、まだ認められたまま



 



今回の法改正で残された課題の1つは、しつけとして”親が子どもを戒める権利”=「懲戒権」が、当面は認められたままであることです。「懲戒」は、暴力とイコールではありませんが、“しつけ”と称して子どもに手をあげてしまうことの、法的な理由付けになりうる点が問題です。



 



この「懲戒権」の見直しについて、改正案では「改正法の施行後、2年」をめどに必要な措置を講じる、とされました。民法の改正は、審議会の手続きを経るため時間がかかるのは仕方ない面もありますが、2022年までは結論を待たなければなりません。



 



最近高まりつつある「虐待を防ごう」という国民的な機運を、どこまで維持できるでしょうか。「懲戒権」は必要とする声も根強く、これまでは見直し作業が見送られ続けてきました。議論の行方を、しっかりと見守る必要があります。



 



 



■“凶暴化する親”とどう向き合うか? 厳罰化も検討を



 



千葉県野田市で小学生の女の子が亡くなった虐待事件では、父親の威圧的な態度が、大人の介入を妨げる大きな要因になってしまいました。凶暴化する親と向き合うため、今回の改正案では、児童相談所の職員の役割を、虐待が疑われる家庭への「介入」担当と、保護者への「支援」担当とで、分離することも明記されました。より「介入」しやすくなることが期待されます。ただ、そもそも児童福祉士の人数や、児童相談所の数自体が少ない中では、決して充分とは言えません。



 



児童相談所そのものの役割を「介入」に特化することも、検討すべきではないでしょうか。「支援」の役割は、地域ごとに置く「子どもと家族を支援する拠点」に任せる形です。母親に子育ての負担が偏る中、地域から孤立し、困難を抱えた家庭は多く存在します。その支援拠点を増やすことは、虐待の「予防」にも大きく役立つでしょう。同時に、児童相談所が事件を抱え込むことなく、リスク児童の情報を警察と共有することも、積極的に進める必要があるでしょう。



 



国会議員の中には、親への厳罰化が必要だとして、刑法に「児童虐待罪」を新設することを提案する動きもあります。「自分も叩かれて育ったのだから、わが子を叩いても問題ないのでは」という意識が根強い日本では、罰則を設けなければ、抑止的な効果が期待できないという指摘ももっともです。今後の国会論戦の中で、虐待の厳罰化についても議論を前に進めて欲しいと思います。



 



 



■家庭の日常の中へ、どう浸透させるか



 



法律でいくら禁止したって、家庭の中の虐待はなくならない、と考える人もいるでしょう。確かに、立法化だけでは不十分です。子どもの行動や言葉に対して、「叱らなければならない」瞬間は、日々、訪れます。私も、宿題をしないままベッドに入ろうとする息子に、どんな言葉をかけようかと悩みます。「子どもを叩いたり、怒鳴ったりせずに導く方法」を、私たち大人が身につける必要があります。



 



先進的に虐待防止に取り組む、スウェーデンの例をご紹介しましょう。1979年に「子どもへの体罰と屈辱的な扱いの禁止」を盛り込んだ親子法を改正したスウェーデン政府は、同時に、大規模な“体罰禁止キャンペーン”を行いました。



 



例えば、「暴力を使わない育児法に関するアドバイス」が書かれた法務省の冊子が、すべての子育て家庭に配布されました。テレビコマーシャルでもメッセージが流され、また、民間企業も連携して、牛乳パックに「体罰防止を呼び掛ける言葉」が印刷され、各家庭の中にそのメッセージを入り込ませることに成功しました。 



 



家庭の中に、体罰禁止をいかに浸透させるかは、今回の法改正の議論で足りない、3つ目の課題です。スウェーデンでは、法律が導入されてから、“親から叩かれる経験をした子どもの数”が大幅に減ったということです。日本政府も、こうした事例を参考にして、大規模な虐待防止キャンペーンを進めて欲しいと思います。



 



子どもは大人と同じように、傷つけられることなく、生きる権利をもっています。



その権利は、たとえ親であっても、犯してはならない。



そのことを、私たち大人が行動を通して、この国に根付かせる時が来ています。


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