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女子中高生のスカートを「性的に消費」する男たち。制服が変われば、彼らの“視線”も変わるのか?




学校の制服はスカートとスラックスの2種類しかなく、女子生徒は前者、男子生徒は後者に自動的に振り分けられれる時代が長らくつづいていましたが、少しずつ新しい風が吹き始めているようです。性別を問わずスカートでもスラックスでも好きなほうを着て通学できる制度を導入する公立校が増えてきているというのです。



 



記事には「LGBTへの配慮」が背景にあるとされています。性別と服装の不一致を抱える人が押し付けられた制服で毎日を過ごすのはとても苦しいに違いありません。しかし選択できる制服の採用は、別の意味もあると思います。



 



 



■スカート“しか”履けない不自由からの解放



 



それは、「女子生徒はスカートしか履けない」という不自由から解放されるという意味です。性別と服装に不一致がなくても、スカートではなくスラックスを履きたい女性、時と場合によってスラックスを履きたい女性はいます。記事中にも、小学5~6年生の保護者にアンケートを対象としたところ、スラックスの導入に肯定的な人が過半数を超えていたとあります。



 



近年になって急にそんな考えが出てきたわけではないでしょう。選択肢がほかにない状況下では「自分がおかしいのでは」と思ったり、声を上げづらかったりしたため、そう望む人が“いない”ことになっていただけです。



 



ファッションとしてのスカートはとても魅力的ですし、それを楽しむかどうかは人それぞれです。が、それ“しか”選べないとなると不便を強いられるシーンが多々あります。



 



まず第一に、寒い。男性が女装ではじめてスカートを履いたときに「スースーする」という感想を漏らすのをよく聞きますが、スラックスの防寒度とスカートのそれとが大きく違うことについて、説明の必要はないでしょう。筆者は雪が多い地方の出身ですが、冬の通学はつらく、授業中も脚が冷えて冷えてしょうがありませんでした。



 



第二に、活動的ではありません。走るだけでも裾を気にしなければならず、活発な年代であればなおさら不便に感じられるはず。記事にも「スカートは階段の上り下りでも気になる」という女子中学生の声が紹介されています。そこには、性的な視線を向けられるのを避けたいという思いもきっとあるでしょう。これが第三の理由です。



 



 



■スカートを性的に消費する文化



 



女子中高生の制服、特にスカートを性的に消費する文化が、悲しいかな日本には確実にあります。それは中高生側の問題ではなく、未成年にそうした視線を向ける側の問題ですが、なぜか「スカートを履いているほうが悪い」とされることが多いのです。



 



現在、少女コミック誌「りぼん」で連載されている「さよならミニスカート」(牧野あおい著、集英社)は、スラックスを履いて通う女子高生が主人公で、制服のスカートをめぐる問題にするどく斬り込んでいます。



 



登下校中の女子生徒が性暴力被害に遭ったと聞かされ、騒ぐ男子生徒たち。「そんなに怖いならスラックス履けよなー」「男に媚び売るために履いてんだろ」「そんなの触られて当たり前」……それを聞いた主人公は「あんたらみたいな男のために履いてんじゃねぇよ」と言い放ちます。



 



肌の露出が高い服装をしているから性被害に遭う。スカート、特に丈の短いスカートを履いているから性被害に遭う。というのは、まったくの誤解です。なんの根拠もないのに、社会で広く信じられているに性暴力ついての言説を“強姦神話”といいますが、服装と被害の相関性もそのひとつです。



 



性暴力の原因は女性の服装ではなく、加害者自身にあります。スラックスを履いても自衛にはなりませんし、性犯罪を発生させないための努力は被害者側ではなく加害者側がするべきです。



 



スカートを履くのは男性を喜ばせるためでなく、自分のため。スラックスを履くのは犯罪から身を護るためではなく、自分のため。これが前提となっている社会で各人が自由に選択できるのであれば、LGBTや女性にかぎらずすべての人が楽になるでしょう。



 



 



■男子生徒にもスカートの選択権を



 



記事を受けて、「男性もスカートを履けるようにするべき」という声もあるようです。いま求められているのは性別にかかわらず選択肢があることですから、男子学生も履きたいものを履けるようになるのが理想です。けれどその理由が、女子学生にだけ選択肢があるのがズルイというのであれば、それはズレているとしか思えません。男子学生がスラックスしか履けないことで強いられる不自由と、女子学生がスカートしか履けないことで強いられる不自由には、大きなギャップがあるからです。



 



女性が不自由な服装を強いられるのは、学生時代の制服にかぎった話ではありません。女性にスカート、ストッキング、ヒールのあるパンプスの着用を義務付ける職場は少なくなく、なかでも足を痛めたり腰痛などの原因になるパンプスの着用に苦しむ女性は大勢います。



 



現在、グラビア女優の石川優実さんが発起人となって「#KuToo 職場でのヒール・パンプスの強制をなくしたい!」という署名活動が展開されています。パンプスやヒール靴を履きたい人の自由を制限するものではなく、不便や苦痛を強いられている人への強制をなくすことが目的です。#MeTooをもじった#KuToo(クツー)の合言葉、とても洒落がきいています。



 



 



■「男性だって革靴を強いられている」というけれど…



 



これに対しても、「男性は暑くてもスーツを強制されている」「男性だって革靴を強いられている」という声もあがっているようですが、であればその不自由を解消すべく行動したほうがいいのではないでしょうか。もう一度、制服の話に戻りますが、2017年に英国の学校で、猛暑にもかかわらず長ズボンしか履くことが許されていないことを不便だと感じた男子学生たちが、姉妹や友人からスカートを借り、それを履いて登校することで抗議したといいます。彼らが本当に履きたいのは、スカートではなくハーフパンツでした。



 



制度を変えるため、不自由を訴える権利は性別、年齢を問わずあります。誰も不便を受容しなくていいのです。それが性別や年齢を理由に強いられているものなら、なおさらです。


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