ORICON NEWSが『柳沢慎吾、仕事途切れず40年“笑味期限”知らずのワケとは?』なるタイトルのコラムを配信しており、興味深く拝読させていただいた。読んで字のごとく、デビュー以来、約40年にわたりトークバラエティ・旅ロケ・情報番組・役者……ほか、一線で活躍し続ける俳優兼タレントの柳沢慎吾(56)にスポットを当て、その“人気の秘密”をあれこれ分析した内容である。
同記事では、柳沢慎吾の笑(賞)味期限がサバ缶並みに長い理由として、
- 三枚目役者としてのポジションを獲得したと同時にバラエティ番組では「うるさい」「落ち着きのない」キャラを確立した
- 「あばよ!」「いい夢見ろよ」…に代表されるシンプルすぎる一発芸的キメフレーズが逆にインパクト抜群で、それが“普遍性”“汎用性”へとつながっている
- 年輪を重ねても変わらぬ“舎弟キャラ”と生来の人柄の良さによって、芸能界で生き抜くための最重要課題である人間関係をしっかりと構築している
……などを挙げている。たしかに、どれもなかなかに鋭い指摘ではある。が、もう一つだけ付け加えておきたい。柳沢慎吾の最大の魅力──それは「ハイテンションの常態化」なのではなかろうか。
私は、いわゆる「ハイテンション芸」ってヤツがわりと好きで、『おかだますだ』の岡田圭右(49)がピンで演じる「ハッピーボーイ」は、テレビでたまたま発見すると、どんなに共演者からの総スカンを食らっていてもなんとなく得した気分になれるし、サンシャイン池崎(36)もブレイク前のけっこう早い段階から秘かに目をつけていた。ただ、ハッピーボーイにせよサンシャインにせよ、番組中でふっと素に戻る“ブレイクタイム”は必ずあって、私はそんな無防備な瞬間を目の当たりにすると、ちょっぴり興醒めしてしまう。
しかし、柳沢慎吾には、その「ふっと素に戻る無防備な瞬間」がまったくない。よく「テストで100点満点を取る人間と99点を取る人間とは、たとえ数字的には1点差でも、その能力には天と地ほどの差がある」なんて言われるけれど、まさに柳沢慎吾は“ハイテンションテスト”で100点満点を取れる貴重な芸能人であり、しかも「100点満点のハイテンション」が一歩間違えれば“狂人”扱いされかねないなか、「場の空気も読めるハイテンション」といった、本来なら矛盾した概念を絶妙なバランス感覚で並列させる希有な逸材なのだ。
あと、不覚にも自身のハイテンション芸がスベってしまった際の見事な“後始末”も、柳沢慎吾は他の追随を許さない。普通、こういったケースでの処理法としては、「テンションを下方修正し、テレながら自分ツッコミを入れる」「ハイテンションのまま観客や共演者にヤツ当たりをする」……あたりが考えられるが、柳沢慎吾に到っては「何事もなかったかのようにスルーする」。これぞベテランならではの匠の技! すでに私はこれまで、ここcitrusに軽く500本以上の原稿をアップしてきたわけだが、一度もこの柳沢慎吾について言及しなかったことに関しては、まことに迂闊であった……と自らに猛省を促したい。