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【大人のFacebook講座】悪い知らせに「いいね!」を押すのは「非常識」なのか?




この夏、日本列島は次々と災害に見舞われています。9月6日早朝に起きた北海道胆振東部地震では、多数の犠牲者と多くの被害が出ました。北海道全域で停電が解消されたり公共交通が元に戻ったりするまでには、まだしばらく時間がかかるようです。犠牲になられた方のご冥福と、一日も早い復旧をお祈り申し上げます。



 



災害があったときに、被災地に住む友人知人がFacebookに「家の中がたいへんなことになっています」といった悪い知らせを写真や動画とともに投稿するケースも少なくありません。ペットとのお別れや資格試験での不合格、あるいは仕事でひどい目に遭ったという投稿も、しばしば目にします。そんな投稿に「いいね!」を押すのは、はたしてどうなのか。けっして「いいこと」ではないので、一瞬、躊躇してしまいます。



 



 



■いつの間にか「いいね!」は万能のメッセージになった



 



結論としては「どういう内容の投稿だとしても『いいね!』を押して大丈夫」と言っていいでしょう。もちろん感覚は人それぞれなので、抵抗を感じる人も多いかと思います。だとしても、自分が投稿した悪い知らせに押された「いいね!」に対して、ざわざわしたりもやもやしたりする必要はありません。そういう場合の「いいね!」には、「がんばってね」「たいへんだったね」「応援してるよ」「安心しました」「教えてくれてありがとう」といったお見舞いやねぎらいや励ましの意味が込められています。



 



Facebookが広まり始めたころは、悪い知らせや愚痴に「いいね!」を押すことは、非常識で無神経な行為とされていました。もともと日本語の「いいね!」に含まれていたのは、称賛や祝福や賛成といったプラスの意味だけです。そのせいで、悪い知らせに「いいね!」を押すのは、茶化しているような悪いことを喜んでいるようなニュアンスがあるように感じてしまいました。押されたほうも「こっちは苦しんでるのに、なにが『いいね!』だ!」とムッとしたものです。



 



しかし、「いいね!」の底力や進化の勢いは半端ではありませんでした。Facebookというツールが定着し、ユーザーも使い方に慣れてくるにつれて、「いいね!」の意味はどんどん拡大していきます。昔からあった称賛や祝福や賛成だけでなく、「おはよう」「こんにちは」「久しぶり」といった挨拶や「読んだよ」「俺も元気だよ」といった報告、あるいは「へえ、ビックリ」「そうだったんだ」「わかるわかる」といった驚きや共感、そして悪い知らせに対するお見舞いやねぎらいや励まし……などなど。今や「いいね!」は、日本語の中でもっとも広い意味を持つ万能の言葉になったと言えるでしょう。



 



 



■「悲しいね」や「ひどいね」のほうがむしろ押しづらい



 



「いいね!」を押しづらいケースもあるという声に応えたのかどうか、Facebookは2016年の1月から、それまでの親指マークだけでなく、全部で6種類の絵文字を選べる機能を追加しました。増えたのは「超いいね!」「うけるね」「すごいね」「悲しいね」「ひどいね」の5種類で、それっぽい表情の顔のマークがついています。とはいえ、その機能によって、投稿へのリアクションがより雄弁になったかというと、けっしてそんなことはりません。



 



本当に悲しい知らせに対して、ちょっとコミカルなマークとともに「悲しいね」と押すことは、これも個人の感じ方の問題ですけど、むしろ無神経に見えることもあります。本当にひどい話に対して「ひどいね」を押すのも同様。もちろん押す側にそんなつもりはないんでしょうけど、マークの力を安易に借りて、お手軽に「いい人アピール」をしているように見えるからでしょうか。いや、便利な機能だし、きっと考えすぎなんでしょうけど。



 



ただ、ふと気が付くと「いいね!」の意味が大きく広がっていて、ニュースフィードを見ていると、悪い知らせや悲しい内容の投稿でも「いいね!」がもっとも多く押されているケースがほとんどです。それはきっと、Facebook側が気を利かせて作ってくれた多彩なマークが、意図しないニュアンスを表現しかねないと察知している人が多いから。ああ、日本語とは、そしてSNSにおける交流とは、なんと難しくて面倒で味わい深いものなのか。



 



というわけで、これからもいろんな投稿に対していろんな気持ちを込めつつ、どんどん「いいね!」を押したいところ。「悲しいね」などの多彩な絵文字も、自分としてはそっちのほうがしっくりくるなら、遠慮する必要はまったくありません。いずれにせよ、きちんと気持ちを伝えたい場合は、コメントをつけたほうがいいでしょう。押すだけのリアクションはしょせんは広い意味での「挨拶」なので、それほど神経質になる必要はありません。


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