コンビニと薬局が合体した店舗も増えてきましたが、コンビニで栄養相談や介護相談ができる店舗が誕生しました。
これを聞いたときの私の感想は「近所の人がうらやましい」でした。その理由は……。
■栄養士を身近に……
「栄養相談」とか「介護相談」というと、一般的には堅苦しいイメージがあると思います。我々、管理栄養士や社会福祉士・介護福祉士さんたちとの接点というと、本当に困って、どうしようもなくなってから病院に行って、医師から「食事の話を栄養士さんとしてもらったほうがいいね」と言われてやっと栄養士とはじめて話をする、「どこか施設を探しましょう」と言われて、やっと介護相談の席に着く……、そんな使い方をしている人がほとんどではないかと思います。
しかし、本当のことを言うと、「どうして今まで放っておいたんですか? 」と言いたくなることも少なくありません。特に栄養に関しては、生まれてから今まで食べずに生きてきた人はいません。生きている限り全員が「経験豊富」ですし、今まで通りの食べ物を今まで通りに食べていれば「当座の命に別状はない」と信じています。
「病気になって食事療法をする時」か「介護が必要になった時」など切羽つまらない限り、栄養相談を受けようと思う人は少ないのが現状です。しかし本当は、健康なうちから予防するほうが、最終的にはコストもかからず、死の間際まで健康でいられる可能性が高くなります。
■メタボリックドミノは上流でブロックせよ!
なぜ、予防が大切なのかは、「メタボリックドミノ」が教えてくれます。メタボリックドミノの上流である「生活習慣の乱れ」や「内臓脂肪の蓄積」の段階では、まだ治療の必要はありませんし、痛みやかゆみ等の不快感もありません。まだ十分引き返せます。
「高血糖」「高血圧」「脂質異常」は、メタボ健診ではじめて引っかかった頃を想像してみてください。病院に行くと、おそらく「そろそろ食事や運動による治療を始めましょうか?」と言われます。ここで栄養相談に来る人もいますが、そのまま放置すると「糖尿病」「高血圧症」「脂質異常症」に進み、薬による治療と食事療法が必須になります。それでも、合併症がない間は不快な痛みやかゆみ等もないので、薬さえ飲んでいれば普通の生活がおくれるような錯覚を起こして、さらに不摂生を続けて命の危機に陥ってしまいます。
さて、このドミノ、どこで止めるのが一番コストや手間がかからないと思いますか? 言うまでもありませんよね。限りなく、上流で止めましょう。メタボリックドミノで限りなく上流の人とは、そうです。「健康な人」。まさに、あなたのことですね。はじめるなら今ですよ!
■健康なうちから「かかりつけ」をつくろう
健康な人の誰もが行くであろう場所というと、会社、駅、またコンビニなどの店舗も挙げられます。特にコンビニは24時間オープンしていることもあり、いつでも立ち寄れるイメージがあります。
そんなコンビニで、風邪薬が買えるだけでもありがたいのに「ちょっと疲れがたまってしまって……」と栄養士や社会福祉士に相談ができれば、メタボリックドミノの最上流のうちに悪い芽を摘み取ることができます。本当に体調が悪くなってしまったときも、健康なときの状態をプロが知っていてくれるので、医療機関への適切な情報提供も可能になります。
このように、健康なうちから「かかりつけ」をつくっておくことは、将来のためのメリットにつながります。
■ただし、問題も……。
現在の保険では、健康な人に対する栄養相談や介護相談には保険点数が下りません。薬局もそうですが、店内は無料相談なので、コンビニにいる管理栄養士や社会福祉士は、ほぼ「(コンビニの)店員として働いた分」しか利益を出せません。一方で、彼らは資格を使って働いているので、資格手当てくらいは欲しいところでしょう。
もちろん、「薬を売っているからコンビニの売り上げが上がる」というような相乗効果はあると思いますが、それでもやはりビジネスモデルに脆さを感じます。
千駄木のローソンでの試みが、上手く軌道に乗って欲しいと祈ると同時に、軌道に乗るまで乗りかかった3社にはあきらめないで欲しいという気持ちでいっぱいです(2年くらい前、ファミリーマートで同じような試みをやっていましたが、今はやっていないようです)。お近くの方はぜひ、コンビニの栄養士を活用して軌道に乗るよう応援してくださいね。