さまざまな事件が立て続けにメディアを賑わせていた開催直前までは「日本代表が初出場した1998年以降、もっとも注目されていないW杯」などと下馬評も高かったが、いざ蓋を開けてみれば、「大迫半端ないって」「本田サンごめんなさい」……と、西野ジャパンの試合が行われるたび、一夜にして新しい流行語が、ちまたを席巻するほどの盛況ぶりを見せているサッカーワールドカップ・ロシア大会──各出場国の選手らが発信する言葉にも、なかなかに気の利いた“粋な秀作”が揃っている。
たとえば、人口約35万人の小国・アイスランドが1-1でアルゼンチンと引き分けた6月16日の初戦では、なんと! アイルランド国内のテレビ視聴率が99.6%を記録。同点ゴールを決めたFWのフィンボガソンは、この数字に対し「残りの0.4%はピッチに来てくれていたんだよ」とコメントした。真偽のほどは抜きにして、じつに小洒落たジョークではないか。
あと、コロンビア戦に勝利した日本代表のDF吉田麻也は6月23日の記者会見で、試合後に観客席のゴミ拾いをする日本人サポーターを「僕たちも非常に感銘を受けている。日本人の行いが世界で称えられるというのは非常に誇らしい」と評し、さらには「日本には『来た時よりも美しく』という美学があるので、日本サポーターの皆さんにもそれが染みついていると思う」と誇らしげに語った。応援してくれるサポーターとの一心同体をアピールする素晴らしい賛辞だと感動した。
さて。今回のW杯ロシア大会を通じての“名言”は、もちろんのこと芸能界からもいくつか生まれている。なかでも一番私のアンテナに引っ掛かったのが、6月21日に都内で開催された某イベントで、お笑い芸人のカズレーザー(33)が、25日に行われる「日本×セネガル戦」の点数予想を質問されたときの、「8対2ぐらい。どうせなら少年野球みたいな点差で勝ってほしいですよ」なる“珍回答”だ。
おそらく、カズレーザーというヒトは、サッカーにはさほど興味がないのだろう。そのスタンスは、
「普段サッカーは観ないしやらないし、オフサイドもイマイチよくわからないけど、W杯の(予選を含む)日本代表の試合くらいは、たとえ夜中でも必ずテレビの前に釘付けとなりながらゴールのたびに一喜一憂する……でも、いくら日本が勝っても試合後のスクランブル交差点まで足を運ぶまでのエネルギーは維持していない」
……レベルの、ちょうど私と同じ程度で、誤解を恐れずに断言してしまえば、日本国民の最大公約数的な向き合い方だと思われる。そして、これくらいのサッカー知識しかない我々が公共の面前で、あるいは飲みの席などで、不覚にも「日本代表による次の試合の点数予測」を強いられた場合、このカズレーザーの「少年野球みたいな点差で日本勝利」というリアクションは、まさに完璧なのではなかろうか?
サッカー(正確には「日本代表」)に関する興味の度合いの薄さを、日本をちゃっかり持ち上げつつ、なんとなく周囲に匂わせることができ、しかも「これ以上の突っ込んだ専門的な追加質問」と、『とくダネ!』の小倉サンみたいな「非国民おじさん」の糾弾をも、コレだけでシャットアウトできるからである。したがって、私もカズレーザーの絶妙なスウェーに倣い、28日に行われるホーランド戦の点数予測は、カノジョの誕生日が7月3日ゆえ「7-3で日本勝利」ってことにしておこう。