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【大分】鬼は友だち!鬼と仲良く暮らす国東半島の人々


大分県国東(くにさき)半島の中央部、ゴツゴツした岩山が連なる地域には山頂付近にぽっかり穴の開いた山があります。なんとも不気味な風景ですが、昔からそこにはが住んでいると伝わっています。

“鬼”。暴れ者で、人間に危害を加える悪い奴というのが一般的なイメージですが、ここでは鬼は“友だち”。パワーを与えてくれる大切な存在なのです。

溶岩でできた岩山ばかりの国東半島中心部には鬼が住む

人を寄せ付けない荒々しい両子山山頂

国東半島 は両子山(ふたごさん/標高720.6m)の噴火によりできた半島で、溶岩が流れ出た円形のすそ野が3分の2は瀬戸内海に突き出た形で、残りは九州本土に繋がっています。半島の中央部は噴火によりできた岩山が至る所に顔を出していて、それは人を寄せ付けないような荒々しい景観です。人々が ここに鬼が住んでいる と考えたもの分かる気がします。

鬼が住んでいるぽっかり穴の開いた岩山

国東半島の岩山には、大きな穴が開いているところがいくつかあるのですが、半島中央部から少し下った並石(なめし)ダム湖の近くの岩山には、湖畔から肉眼でも確認できるほどぽっかりと穴が開いています。その岩山は 「岩峰」 と名付けられていて、その奥の 「鬼城(きしろ)」 とともにまさしく 鬼の住み家 なのです。少し遠いので望遠鏡で見るとその不気味さがよく分かります。

並石ダムまでは車で行けますので、よく拝んで鬼のパワーを授かってください。

「岩峰」「鬼城」/鬼城岩峰ポケットパーク/里の駅 並石ダムグリーンランド(こっとん村)

  • 所在地:大分県豊後高田市一畑
  • 電話番号:0978-27-3045(並石ダムグリーンランド(こっとん村)))
  • 休業日:月曜日
  • アクセス:[車]東九州自動車道宇佐ICから国道10号線、29号線経由で約40分/[公共交通機関]日豊本線宇佐駅から車で約40分

https://www.city.bungotakada.oita.jp/site/showanomachi/1267.html

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山伏たちが鬼から借りた修行場「中山仙境」

山伏たちの修行場のひとつに 「中山仙境(なかやませんきょう/夷谷[えびすだに])」 があります。そこにはいくつもの岩山が連なり、最も高いところは標高317mの 「高城」 です。山伏は “峯入り” という、その峰々を巡る厳しい修行を行ったのですが、その一部は一般にも開放されてトレッキングコースになっています。クサリ場や急斜面など危険がいっぱいですが、ゴツゴツした奇岩がそびえる景観には圧倒されることでしょう。歩くには登山に準じる装備が必要です。 「中山仙境(夷谷)」は国の名勝 に指定されています。

中山仙郷(夷谷)

  • 所在地:大分県豊後高田市夷
  • 電話番号:0978-25-6219(豊後高田市観光協会)

https://www.city.bungotakada.oita.jp/site/showanomachi/1297.html

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鬼を招待してもてなす風習が残る国東半島

優しい顔で笑顔さえ見られる鬼のお面

国東半島に人が住み始めたのが、発掘された遺跡から縄文時代の前、約1万5000年~2万年前と考えられています(塩屋伊豫野原遺跡/しおやいよのはるいせき/国東市など)。鬼はそれより前から住んでいたのでしょう。いつ頃なのかは分かっていませんが、奈良時代に建立された国東の寺院には鬼の面などが残されていますので、住んでいたことは間違いなさそうです。

鬼といえば角が生え、牙を出す、いわゆる鬼畜とされる怖い顔をしているのですが、 国東半島の鬼たちは ちょっと違います。もちろん鬼ですから角や牙はあるのですが、 みんな目が笑っている のです。それは人間が友だちだったからに違いありません。

ほほ笑む国東の不動明王

さらに、それを証明するかのように、国東のお寺に鎮座したり、磨崖仏として彫られたりしている 不動明王(ふどうみょうおう) の顔も、ほかで見たことがないような非常に 柔和な顔 をしているものが多くなっています。不動明王とは、弘法大師空海が中国から持ち帰ったとされる仏像なのですが、真言密教最高位の仏様大日如来(だいにちにょらい)の生まれ変わりとされ、不動の姿勢で、一般的には常に厳つい顔をして世の中を睨んでいます。その顔から鬼の化身ともいわれているのですが、国東では 友だちみたいな仏様 なのです。

※国東半島は[鬼が仏になった里「くにさき」]として日本遺産に認定されています。

鬼に会える奇祭「修正鬼会」

鬼を招待して無病息災・五穀豊穣を祈願

「岩峰」、「鬼城」は鬼の住み家を遠くから眺めるだけですが、国東半島では 年に一度だけ鬼に会える機会 があります。旧正月の7日頃人々は集落へ鬼を招待し、宴会を開催するのです。

鬼たちを招待したのは「六郷満山(ろくごうまんざん)」と呼ばれる、国東半島独特の宗教形態を持つお寺の僧侶でした。僧侶たちは正月に自分たちのお寺へ鬼を招待します。お酒などを振る舞われた鬼たちは、上機嫌になって火のついた松明を持って暴れまくりますが、持っていた餅を集まった人たちにばらまきます。餅を拾った人を鬼が追いかけ、火のついた松明でたたいたりするのですが、決して危害を加えるわけではありません。人々は火でたたかれるのを喜んでいるようです。それもそのはず、 鬼にたたかれると一年間無病息災 でいられるといわれています。

寺を後にした鬼たちは民家を訪れ、住民は酒や肴でもてなす

鬼たちは暴れまくった勢いで集落に出て行きます。集落の人は鬼を自宅に招き入れ、酒や肴でもてなしたのです。鬼はお礼にと、集落の五穀豊穣と人々の無病息災を祈ってくれます。

この風習は「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」といって、昔は各集落で行われていた正月行事でした。しかし、近年は人間と鬼が近くなりすぎたのか、「修正鬼会」を行う寺は少なくなってしまい、現在(2023年)は、「天念寺(てんねんじ)」(豊後高田市/毎年)、「岩戸寺(いわとじ)」「成仏寺(じょうぶつじ)」(国東市/隔年交互開催)だけになってしまいました。また、「天念寺」では、寺内での行事のみで終了します。 「修正鬼会」は、国の重要無形民俗文化財です。

「修正鬼会」開催寺院

  • 施設名称:天念寺(旧正月1月7日)
  • 所在地:大分県豊後高田市長岩屋1152
  • 電話番号: 0978-27-3049「鬼会の里歴史資料館」
  • アクセス: [車] 東九州自動車道宇佐ICから約30分、豊後高田市街地から約15分/[公共交通機関]JR日豊本線宇佐駅から車で約40分

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  • 施設名称:岩戸寺(西暦奇数年開催・原則旧正月7日)
  • 所在地:大分県国東市国東町岩戸寺1232
  • 電話番号:0978-72-2677(国東市教育委員会文化財課)
  • アクセス:[車] 大分空港道路安岐IC約25分/[公共交通機関] 大分空港から車で約40分

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  • 施設名称:成仏寺(西暦偶数年開催・原則旧正月5日)
  • 所在地:大分県国東市国東町成仏1140
  • 電話番号:0978-72-2677(国東市教育委員会文化財課)
  • アクセス:[車] 大分空港道路安岐ICから約15分/[公共交通機関] 大分空港から車で約30分

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国東半島に芽生えた独自の山岳仏教「六郷満山」

修験道の祖役小角が開いた国東半島の山岳仏教

人々と鬼たちの住む場所は、本来人は海沿いの平坦で生活しやすい場所、鬼たちはゴツゴツとした岩場と分かれていたのですが、飛鳥時代の後半に鬼の住んできた岩場に入って修行をする人物が現れます。

役小角(えんのおづぬ/634年伝~701年伝)という奈良を中心に全国で修験道を広めた修験道(しゅげんどう/山岳信仰)の祖と呼ばれる僧侶が、国東でも修行を積み「文殊仙寺(もんじゅせんじ)」(国東市)を開いたのです。それ以来国東は修験道の聖地として多くの修験者(山伏)が訪れるようになりました。

鬼との交流を深めた「六郷満山」の修行僧たち

その中でも、奈良時代初期に修行に入った 仁聞(にんもん) は、 国東の岩山に28もの寺院を開いた といわれています。最盛期には65か所の寺院があったといわれる国東ですが、山伏たちはそれらの寺院を巡り、山中で修行するという国東独自の山岳仏教を確立していきます。

峯入り

山伏たちは鬼の住む岩山を修行の地として選び、駆け回ります。当然鬼にも出会ったのでしょう。山伏たちは鬼を敵と考えるのではなく、親しく接しました。鬼をお寺に招待しもてなしたのです。

やがて、宇佐神宮(宇佐市)と比叡山延暦寺を大本山とする天台宗という2つの全く違った宗教が混ざり合って、 「六郷満山(ろくごうまんざん)」 という独自の山岳仏教が確立されました。

※仁門による国東の寺院開山や六郷満山に関しての歴史は一例で諸説あります

六郷満山

  • 問い合わせ:国東半島宇佐地域・六郷満山誘客推進協議会
  • 電話番号:0978-72-5007

https://www.millennium-roman.jp/rokugou1300/

ゆっくり巡りたい文化財の宝庫・国東半島

無明橋

パワースポットの宝庫国東半島を“鬼”を中心にご紹介してきましたが、ほかにも国東半島には国宝になっている富貴寺(ふきじ)の大堂(豊後高田市)や天念寺の無明橋など国宝や重要文化財、史跡、名勝などが点在。ゆっくりと時間をとって訪ね歩くことをおすすめします。


norijun

余暇プランナー

雑誌などの取材や撮影で日本全国まわっていたら、いつのまにか47都道府県制覇してました。取材して歩く中で必ず行くのが神社。というのも祖父が仏式から神式に変えたため、行事はいつも神社か神主が来て祝詞を上げるという家柄、お寺には縁がなく、どうしても神社に親しみを感じてしまいます。参拝すればやはりお願い事は必須です。でも神様だって得手不得手はあるので、その神社の神様が一番叶えてくれそうなお願いをすることにしています。

【大分】鬼は友だち!鬼と仲良く暮らす国東半島の人々

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