栄養豊富なイメージのある玄米。
ダイエットや健康、美容によいといいますが、実際にはどのような栄養や効果があるのでしょうか?
今回の記事では「玄米の栄養」について、管理栄養士が解説します。
白米との比較や取り入れる際の注意点もお伝えするので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
玄米の栄養と期待される効果
玄米には、ダイエット中に摂りたい食物繊維をはじめ、カリウムやマグネシウム、ビタミンB群、鉄などの健康づくりや美容に役立つ栄養素が含まれています。
玄米(炊いた状態のご飯)100gあたりの栄養成分値は下記のとおりです。
そもそも玄米とは、精米されていないお米のことです。
白米にする過程で取り除かれてしまう、栄養たっぷりの糠や胚芽がそのまま残っているため、玄米は栄養豊富なのです。
具体的にどのような効能が期待されるのか、見てみましょう。
生活習慣病対策やダイエット、便秘予防に「食物繊維」
食物繊維は余分な糖や脂質を吸着し、体の外に出してくれる働きがあります。
血糖値やコレステロール値が気になる方は、積極的に取り入れたい成分です。
また消化がゆっくりになることで腹持ちのよさも助けてくれるため、食べすぎを防いでダイエットをサポートしてくれます。
ほかにも、腸内環境を整えてくれ便秘を予防してくれるなど、腸へのうれしい効能も期待されます。
高血圧やむくみを防ぐ「カリウム」
カリウムは、余分なナトリウムを排出する働きがあります。
ナトリウムの摂りすぎはむくみや高血圧の原因となるため、予防のためにカリウムの摂取が役立ちます。
特に外食やコンビニをよく利用するなど、塩分の摂りすぎの傾向がある方は、意識して取り入れたい栄養素です。
骨の健康づくりと血圧低下を期待「マグネシウム」
マグネシウムは体内では5~6割が骨に存在しており、骨の健康づくりに欠かせないミネラルです。
ほかにも、血圧を下げる効果があることもわかってきており、血圧が気になる方はカリウムとあわせて摂取が勧められています。
糖質の代謝に必要「ビタミンB1」
ビタミンB1は、糖質の代謝をサポートする働きがあります。
玄米は糖質が多く含まれる食べ物であるため、効率よく栄養補給できるといえます。
タンパク質の代謝をサポート「ビタミンB6」
ビタミンB6は、タンパク質の代謝に欠かせない栄養素です。
肉や魚、大豆製品、卵などのタンパク質を含む食べ物を取り入れる際に玄米を取り入れると、効率的に栄養補給できるでしょう。
貧血を予防する「鉄」
玄米の鉄の含有量は白米の6倍と豊富です。
鉄の不足により貧血の原因となるため、毎日意識して取り入れる必要があります。
貧血になると、頭痛、倦怠感、めまい、息切れなどの症状を引き起こすことが知られています。
特に女性は不足しやすい栄養素であるため、しっかりと補給しましょう。
※参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」,厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
玄米と白米の栄養成分の比較
玄米は白米に比べると、栄養豊富なイメージがありますが、実際はどのくらい違うのでしょうか?
炊いた状態のご飯100gあたりの玄米と白米の栄養成分値を確認してみましょう。
カロリーは玄米は152kcal、白米は156kcalであり、玄米の方が少しだけカロリーが低いことがわかります。
ほかの栄養素を比較すると、玄米は白米に比べ、カリウムは約3倍、マグネシウムは7倍、鉄は6倍、ビタミンB1は8倍、ビタミンB6は10.5倍もの含有量となっています。
白米に比べ玄米の栄養価は、ずば抜けて優れているといってよいでしょう。
しかし、食物繊維の量は白米の方が多くなっており、疑問に思う方もいるかもしれません。
少し難しい話になりますが、これは近年、炭水化物(食物繊維)の測定方法が変わったことが理由です。白米は新しい測定法が使われているため、食物繊維にカウントされる成分の量が多くなっており、以前より食物繊維の量が増えています。
一方で玄米は古い測定法の数値が使われているため、まだ食物繊維の量が少ないままなのです。
今後、新しい方法での測定が進んでいけば、玄米の食物繊維の量も見直されるでしょう。
決して玄米の食物繊維の量が劣っているわけではありませんので、安心してくださいね。
白米より玄米がダイエットによい理由は?【栄養面以外のポイント】
玄米と白米のカロリーは、意外にも4kcalしか変わりません。
それなのに、玄米の方がダイエットにおすすめされるのはどうしてなのでしょうか?
理由は下記の3つがあります。
・噛みごたえがあり満腹感を得られやすく、少量でも満足しやすい
・腹持ちがよく満腹感が持続し、間食や食べすぎを減らせる
・食物繊維が豊富で、糖や脂質の吸収を妨げる
白米はあまり噛まずに食べられてしまうこともあり、つい食べすぎてしまうことがあります。
特に早食い傾向のある方や、間食の量が多い方は、玄米を取り入れることでダイエット効果を期待しやすいでしょう。
栄養豊富な玄米を取り入れる際の注意
栄養豊富な玄米ですが、取り入れる際には下記の注意点を知っておきましょう。
ヒ素の過剰摂取に注意
玄米には「無機ヒ素」という物質が含まれ、白米より含有量が多いことが知られています。
無機ヒ素を長期的に大量摂取すると、がんの原因となることや、皮膚の健康に影響与える恐れがあることがわかっているため、注意が必要です。
バランスのよい食事を心がけていれば、玄米などの食べ物から無機ヒ素による健康被害の心配は少ないといわれていますが、玄米ばかりを大量に食べ続けるのは控え、のちほど紹介する適量を心がけましょう。
消化不良や栄養素の吸収阻害を起こすことも
食物繊維が豊富な玄米を食べすぎることで、消化不良を起こしたり、栄養素の吸収を妨げたりする恐れがあります。
白米より消化に負担がかかるため、お腹の調子を見ながら、量を調整するようにしてみてくださいね。
残留農薬は危険?
玄米を取り入れる際、残留農薬について心配する方もいるでしょう。
確かに農薬は白米より玄米の方が残りやすいことが知られています。
しかし、そもそも農薬は残留基準が決められており、健康に影響を与えないとされている量を使用することとなっています。
そのため、玄米の農薬について心配しすぎる必要はありません。
それでも心配な方は、有機栽培のものや、無農薬のものを探して取り入れてみるのもよいでしょう。
※参照:農林水産省「食品中のヒ素に関するQ&A」,厚生労働省「残留農薬」
栄養豊富な玄米の上手な取り入れ方
健康づくりやダイエットに役立つ玄米の栄養を効果的にとるには、どのように取り入れるとよいのでしょうか。
適量は1食165~265g
玄米の適量をお伝えするのは難しいのですが、バランスのよい食事の選び方がわかる「食事バランスガイド」を参考にすると、1食あたりの目安(炊いた状態)は下記のとおりです。
・成人女性…約165~235g
・成人男性…約235~265g
これは健康な方の目安の量であり、厳密には体格、年齢、活動量などによって異なります。
「少し多いかも?」と思うかもしれませんが、主食をしっかり食べて間食を減らす方がダイエットにはおすすめできます。
上記の量を参考にし、体重の増減や体調を見ながら、自分に合った玄米の量を見つけてみましょう。
ほかの食事のバランスも整える
玄米を取り入れるほかに、野菜や肉や魚などを取り入れるなど、バランスのよい食事を心がけましょう。
玄米は栄養豊富ではありますが、野菜に含まれるビタミンAやビタミンCなどのビタミンやミネラル、肉や魚に含まれるタンパク質などは、玄米だけでは不足してしまいます。
ひとつの食べ物ばかり偏ってとるのは避けて、さまざまな食べ物をまんべんなく取り入れるようにしましょう。
※参照:農林水産省 厚生労働省「食事バランスガイド」
玄米は栄養豊富!上手に取り入れよう
今回の記事では「玄米の栄養」について、管理栄養士が解説しました。
玄米は白米に比べると栄養価が優れており、健康づくりやダイエットに役立つことがわかりました。
たくさん食べるのはNGですが、適量を上手に取り入れましょう。