和食に欠かせない調味料の一つ、醤油。実は土地によって好まれる味が違い、スーパーのラインナップにも差があることをご存じですか?九州で愛されているのは甘い醤油。「あまくち」「うまくち」と呼ばれるこれらのお醤油ですが、そもそもなぜ甘い醤油が好まれるのでしょうか。九州のスーパーで定番人気の品と合わせて紹介します!
九州の醤油は甘い!?
旅行で九州を訪れたり、転勤などで引っ越したりした人たちがまず驚くことの一つが「九州の醤油は甘い」ということ。
九州のスーパーにはその名の通り「あまくち」「うまくち」とラベルに書かれた醤油が、数多く並んでいます。ラベルを見てみると、大枠の分類としては醤油の中で最もスタンダードな「濃口」になるよう。
ですが、原材料名には一般的な濃口醤油と違い、砂糖や甘草・ステビアなどの甘味料、またアミノ酸なども含まれます。これらの調味料が九州醤油独特の風味をつくり出しているというわけですね。
ちなみにメジャーな濃口醤油であるキッコーマンの「特選丸大豆醤油」の原材料には、「大豆(アメリカ)(遺伝子組換えでない)、小麦、食塩」とあり、上で挙げた原材料が使われていないことがわかります。
「あまくち」「うまくち」の違い
九州の醤油コーナーで見かける「あまくち」と「うまくち」。味をみてみると、どちらもスタンダードな濃口醤油よりは甘みや旨みがしっかりしている印象です。
ではこの2つはどう違うのでしょう?
「あまくち」は、甘味料が加わった醤油
ラベルに「あまくち」とある醤油は、その名の通り甘さがしっかりしている味。原材料には砂糖や甘草エキス、ステビアなどの甘味料が加えられています。
「うまくち」は、うま味成分が加わった醤油
一方、「うまくち」とある醤油は、原材料にグルタミン酸(アミノ酸)やイノシン酸などのうま味成分を加えて作られたもの。「うまくち」と書かれた醤油には甘味料が加えられているケースもあるので、九州の醤油は総じて甘めのものが多いのです。
なお他の地域の醤油にも「うまくち」の表現はありますが、九州醤油は特にその表現が多いため、「うまくち」も九州醤油の特徴といえます。
ではなぜ、九州の醤油には甘いものが多いのでしょうか?
九州の醤油が甘い理由
九州の醤油が甘い理由は諸説あるといわれています。
①【歴史的要因】砂糖が手に入りやすい地域だったため
江戸時代、鎖国をしていた日本では長崎の出島を通してオランダと貿易が行われていました。オランダとの貿易で輸入していたものの一つが砂糖。立地上、その砂糖が手に入りやすかったことが要因という説があります。
また日本と同じく料理に砂糖を使うオランダの食文化が、現地の人々の味の好みに影響を与えたのではないかとも言われています。
②【地理的要因】気温が高く、甘辛い味を欲するため
九州は日本の中でも気温が高い地域のため、夏場は特に汗をかく日が続きます。汗をかくことで不足してしまった塩分と糖分を摂取しようと、生理的に甘辛い味への欲求が強いといった説も。
九州沿岸の海で働く漁師たちが、たいへんな労働の中で醤油に砂糖を溶かし、味付けとエネルギー補給を兼ねて使っていたという話もあるといいます。醤油に砂糖を溶かした調味料は、それ1本があればどんな食事にも使えると重宝されていたようです。
この他、焼酎文化の根付く九州で、蒸留酒の焼酎は辛口で甘みがないため、お酒のあてには甘い味付けのものがよく合うと考えられているというものも。
さらにサトウキビの栽培が昔から盛んだったため、他の地域よりも砂糖が手に入りやすかったことも影響していると考えられています。
こんな料理におすすめ!
あまくち・うまくち醤油は一般的な濃口醤油と同じように使用すればOK。甘みが強い分、味の好みによっては、普段のレシピよりお砂糖を控えめに調整するなどしてみましょう。
また九州の居酒屋では刺身にあまくち醤油が添えられて提供されるなど、新鮮な魚介類との相性はバツグンです。
うまくち醤油にはうま味成分が入っているため、料理に使うだけで味に深みが出て、煮物などのしっかり味付けたい料理もバッチリきまりますよ。
ここまでの記事監修:しょうゆ情報センター
スーパーで売ってる定番人気品
九州のスーパーの店頭には、地元の各メーカーが製造したさまざまな種類のあまくち・うまくち醤油が。代表的なものをいくつかピックアップしてみます。
福岡県:ニビシ醤油「特級うまくちしょうゆ」
福岡のお台所にはニビシの醤油あり。福岡・北部九州エリアで不動の定番といえば、ニビシの「うまくちしょうゆ」といわれています。
「うまくち」という名称を作ったといわれるうまくち醤油の本家本元で、旨みと甘みを感じられる豊かな風味で、贅沢な味わいの濃口しょうゆです。
価格:1L 448円(税込)
福岡県:ヤマタカ醤油「こいくちしょうゆ 『木星』」
その他の醤油と比べると少し高価ですが、福岡県で大人気の濃口醤油 「木星」。旨み・甘みがしっかり感じられ、九州のご当地グルメ「鶏めし」を炊くにはこの商品が一番という声も多いそうです。
価格:1L 486円(税込)
大分県:フンドーキン「ゴールデン紫あまくち」
フンドーキンのロングセラー商品「ゴールデン紫」(濃口醤油)より、しっかり甘みを加えたタイプです。煮物などのおいしさをより一層引き立てると、ずっと愛用するファンも。
価格:1L 405円(税抜)
熊本県:フンドーダイ「うまくちしょうゆ」
熊本県で昔から愛され続けている、甘みと旨みがしっかり感じられる醤油。まろやかな甘さが特徴で醤油の辛さは控えめです。
価格:1L 351円(税込)
佐賀県:宮島醤油「ばら本醸造あまくち醤油」
佐賀県でのあまくち醤油といえばコレ!1本あれば煮物や炒め物、だし、たれなどさまざまな料理や用途に使えます。口あたりがまろやかで九州の嗜好によく合う品。
価格:1L 371円(税抜)
一度食べたら「もう他の醤油には戻れない」と愛用する人も多いという、九州の甘いお醤油。気になったらぜひ試してみてくださいね。