親族や知り合いが突然の事故や病気で入院した際、「すぐにお見舞いに駆けつけたい」と思うことも。しかしそれが、相手やご家族にとってはかえって負担になることもあります。ここではお見舞いのマナーについて、ヒロコマナーグループのマナーコンサルタント・川道映里さんに解説してもらいます。
「お見舞いに行く」「行かない」を関係別に解説
「お見舞い」とは、病気にかかった人を訪問して慰めたり励ましたりすること。しかし、相手は突然の事故や病気で心身ともに不安定になっていることもあります。また、関係性によっては遠慮したほうが良い場合も。お見舞いへ行く・行かないをどのように判断するのか、関係性別にみていきましょう。
家族や親戚の場合
家族が入院している場合は、基本的にその家族と最も身近な人などの判断に従います。親戚が入院している場合は、入院している人の家族にお見舞いへ行ってもよいか相談することをおすすめします。
友人の場合
友人との間柄にもよりますが、友人の家族に容態などを聞くことができる場合は相談してみましょう。また、基本的に病室ではメールの閲覧はできるので(集中治療室で治療している場合などは除きます)、友人の容態によっては直接本人にメールなどで聞くと良いでしょう。
仕事関係者の場合
職場や取引先の人の場合、まずは上司に相談して判断を委ねます。特に、取引先の人のお見舞いは、仕事を思い出して焦ってしまうなど、相手に迷惑がかかることもあります。それぞれの職場規定に準ずるのがよいでしょう。
気を付けよう! お見舞いに行くタイミング
お見舞いへ行く際は、家族や本人の許可をもらい、相手の都合を最優先にして決めます。特に、入院直後や手術の前後は心身ともに落ち着かないので控えましょう。
お見舞いに行く時間帯は、必ず病院の面会時間を守り、午前中と食事の時間帯は避けるようにします。午前中は検査や治療などが行われることが多いからです。面会時間は15分程度にし、相手を疲れさせないよう配慮が大切です。
その他、3日間程度の短期入院の場合は、入退院の手続きや準備に追われているので、お見舞いに行くよりも退院後に「退院祝い」を渡す方がスマートです。
おすすめのお見舞い品
フラワーアレンジメント
お見舞い品としてまず思い浮かぶのが「花」ではないでしょうか。持参する場合は、花瓶の用意や水替えが不要なアレンジメントがおすすめです。相手の好みなどがあまりわからない場合は、生花店で「お見舞い用に」とひと言告げて、ふさわしい花を選んでもらうのも良いでしょう。
また、下記のものはお見舞い品に向いていません。確認しておきましょう。
- ユリなどの香りの強い花や派手な色の花
- 「寝つく(根づく)」という意味で鉢植え
- 「死」「苦」に通じるシクラメン
- 血を連想させる真っ赤な花
- 葬儀を連想させる菊
- 色があせるアジサイ
- 花が首から落ちる椿
- 「4」や「9」など不吉とされる本数を贈る
病院によっては生花を持ち込むことを禁止している場合もあるため、事前に確認しておくと安心ですね。
食べもの
果物やお菓子などの食べものは、事前に食事制限やアレルギーなどがないかを確認してから持っていきましょう。一般病室であれば、同室の方にもおすそ分けできる個包装のものや食べやすいものを選びます。
実用品
入院している人の病状などを考えるのが大前提ですが、喜ばれるものを選ぶことも大切です。親しい関係の相手であれば、お見舞いに行く前にどんなものが欲しいかを聞いてもよいでしょう。長期入院の場合、タオルやパジャマも喜ばれます。本や雑誌などでも。相手の趣味に合ったものを贈りましょう。
その他
筆者の体験談として、家族が長期入院した際は、子どもやペットの写真をアルバムにして贈りました。子どもの面会を禁止している病院も多いため、成長している子どもやペットのアルバムを見てとても喜んでくれました。その他、友人には寄せ書きを贈ることで、お見舞いに行けない人の想いを伝えることができました。ぜひ、参考にしていただけると幸いです。
見舞金の金額やマナーは?
お見舞いに現金を贈るときは、4や9が付く金額や紙幣の枚数は避けます。一般的な金額の目安は以下のとおりです。
- 親: 1~5万円
- 兄弟姉妹や親戚: 5千円~1万円
- 友人や知人: 3千円~5千円
- 会社関係者: 3千円~1万円(※必ず上司に相談し、判断を委ねましょう)
なお、上記はあくまで目安です。金額はあなたの気持ちを表すものなので、それに固執する必要はありません。
見舞金を渡す場合の注意点
本来であれば、目上の人に現金を贈るのは失礼にあたるとされています。しかし、入院時には何かとお金がかかるので、現金を包んでも喜ばれます。その場合は「何がよいかと迷いましたが、お見舞い品の代わりに」といったような言葉や手紙を添えると、相手も受け取りやすくなります。
またどの相手に対しても、新札を包むと「あらかじめ準備していた」「入院を待っていた」などの意味に受け取られてしまうことがあるので注意しましょう。
お見舞いに行けない場合はどうすればいい?
「遠くに住んでいてお見舞いに行けない」「仕事が忙しくてどうしても行けない」といった、やむを得ない事情もあります。その場合は、快復を祈る気持ちを手紙やメールに込めて送ることをおすすめします。
その際、悪いことを連想させる「忌み言葉」は避けましょう。例えば「繰り返す、長引く、続く、衰える、再び、四、九」などが挙げられます。さらに、二重封筒は「不幸が重なる」という意味があるため、一重の封筒を使用しましょう。
メールを送る際、特に気をつけたいことは“送信する時間帯”そして“返信不要”を伝えることです。送信する時間帯は、前述したお見舞いに行く時間帯と同様です。また、メールを送ると、返信しなければ……と相手に気を遣わせてしまうかもしれません。最後にひと言「返信はどうかお気遣いなく」といった気くばりを心掛けたいものです。
お見舞いは、相手の容態を第一に考え、相手の立場にたった配慮が必要です。相手に合わせたお見舞いのタイミングや方法を考えることが一番大切なマナーといえます。