大容量でお値打ち感のある商品やかわいいパッケージで人気を集める「コストコ」ですが、魚介類の鮮度や品質にも定評があります。この暑い時期、少しでもスタミナを付けようと「ウナギ」もコストコで購入したいというコストコユーザーは多いはず。しかし、コストコではウナギの取り扱いを2013年から行っていないといいます。気になるその理由やその他、鮮魚部門の取り組みも紹介します。
コストコからウナギの姿が消えた理由
かつては肉厚で大きな国産ウナギが人気だったコストコですが、ここ数年売り場で見かけることはありません。その理由をコストコに取材したところ、コストコが掲げるサステナビリティ(持続可能性)の理念からなのだそう。
日本で流通しているニホンウナギは、2013年5月に国際的な研究機関であるIUCN(国際自然保護連合)が「絶滅危惧種」に指定しました。コストコでは同年12月に「仕入れをすべきでない」と判断し、販売を自粛。それ以降、販売の再開には至っていないとのことです。
また、ウナギだけでなく個体数が重大な危機に瀕しているメカジキやカラスカレイなども販売していないそうです。
コストコのサスティナビリティ理念とは
コストコの鮮魚部門では、「次世代のために希少資源の利用可能性を損なわないように配慮しながら、天然漁業と養殖漁業の双方から、持続可能な魚介製品の調達を継続すること」を理念として掲げています。
その点でウナギは、現時点における資源量の少なさと、養殖技術レベルが確立されていないことから、販売を自粛中というわけです。現在の生産技術では絶滅をくい止めるレベルには至らず、コストコで大量販売することは避けたいと考えているのです。
「コストコでは、絶滅危惧種のウナギを食べることを否定しているるわけではなく、日本の食文化であるウナギが未来に継承されることを強く望んでいます」(コストコホールセールジャパン鮮魚担当者)。
そんな中、天然資源に配慮しつつ、養殖技術を確立したことにより販売を開始した商品があります。それがコストコの「完全養殖本マグロ」です。
マグロは「完全養殖」のものに限り販売中
コストコではウナギと同じ理由で、「天然クロマグロ」と天然稚魚から育てた「畜養クロマグロ」の販売も自粛しています。コストコで販売される切り身のマグロや握り寿司の寿司ダネになっているのは、「完全養殖」によって育てられた本マグロ(太平洋クロマグロ)のみとなっています。
「完全養殖」とは、2世代以上に渡って養殖された親魚から繁殖させた稚魚を育てる技術のこと。大量の天然稚魚が必要な畜養と違い、限りある天然資源への負荷が少ないうえ、持続可能性が高い養殖方法です。こうやって育てられたマグロを販売することで、養殖技術が確立されたサスティナブルな産業に貢献することにもつながるそうです。
サステナビリティに貢献しながら「おいしい」も叶う
私たちも完全養殖で育てられた本マグロを購入して食べることで、コストコのサステナビリティに貢献することができます。さらには日本の大切な食文化であるマグロを未来に継承することにもつながると思うと、とても有意義な消費活動といえますね。
とはいえ、どんなに良いことをしても、おいしくなくては継続的に食べるのは難しいところ。その点もご安心を。コストコの完全養殖本マグロは養殖場に隣接した陸上施設で孵化したあと、奄美大島、三重、大分などのいけすで4~5年過ごした50kg以上の成魚です。広々としたいけすで存分に泳ぎ、健康的に育った本マグロはしっかりとうまみを蓄えた赤身と、しっとりと脂がのった甘みのある中トロになるのだとか。味わいの良さもお墨付きというわけです。
マグロ解体ショーも定期開催
さらには、コストコの各倉庫店で定期的にマグロの解体ショーが開催されているのをご存知でしょうか。これは、単なる客寄せイベントではなく、完全養殖本マグロの価値をより多くの会員に知ってもらうために行っているそうです。
これからも解体ショーは定期的に開催するとのこと。解体されたマグロは開始数時間で完売してしまうそうなのでショーの時間内にぜひ!
高品質と低価格の両立につなげる
マグロのように、今後養殖技術レベルが上がればコストコでウナギの取り扱いが再開される日が来るかもしれません。「生産者の方々や水産・畜産資源、さらにはその環境に対して敬意を表し、会員に高品質な商品とサービスを可能な限り低価格で提供し続けること」をミッションとするコストコ。その一環として、サステナビリティにも力を入れているそうです。
マグロの完全養殖は「採算がとれない」と懸念されたこともあったそうですが、現在はコストコで大量販売することで産業として成り立つというモデルを確立しつつあります。「絶滅危惧種だから販売しない」から「未来へつなぐサステナブルな形を実現する」へ。そうすることで、私たちは今後もおいしいマグロを安定的に食べることができるのです。
環境や資源に配慮でき、生産者も、消費者である私たちもみんなにメリットのある取り組みです。いつかウナギにもそういった日が来ることを望みたいところですね。