日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!
原作:夏目漱石 アメイジング翻案:架神恭介 漫画:目黒三吉『こころ オブ・ザ・デッド ~スーパー漱石大戦~』 コミック アース・スター連載
独自のセンスで普段馴染みが薄い歴史や宗教などの題材を楽しく捉え直す解説書・実用書のフィールドで、異彩を放つ著作家のひとりが架神恭介。パンク×仏教の『もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら』、任侠×キリスト教の『仁義なきキリスト教史』など色々ヘンな著作がありますが、今度は夏目漱石×ゾンビという更にヘンな漫画をお書きになるようです。
時は明治4X年。駆け出しのゾンビハンターである「私」は、夏恒例のゾンビ狩りに出かけた海の鎌倉で、凄腕のゾンビハンター「先生」と出会う。先生を慕うもやがて国に帰った私は、先生からの手紙を受け取る。そこには、かつて日本を襲ったゾンビアポカリプスにまつわる真相が描かれていて……。
古典超訳というレベルではない、日本近代文学の有名作にゾンビ映画を掛けあわせたトンデモ世界観がいきなりぶちあげられ、あらすじのうえでは第一話から原作の『こころ』の前半を猛スピードでなぞり、お話は「先生と遺書」パートからスタート。先生が下宿先にKを招いてお嬢さんと良い感じに……というところで、帝都がゾンビに襲われてお嬢さんもゾンビに感染してしまう。
房州の陸軍疫病研究所に特効薬を探しに行くべく、実は柳生新陰流と小野派一刀流の剣客だった先生とKはお嬢さんを連れてゾンビをバッタバッタと斬り倒す! 名作の翻案という肩肘張った雰囲気はゼロ、見事にざっくばらんでボンクラなゾンビ映画的導入がなされております。
同時掲載のインタビューを読むと、翻案者はあんまり原作が好きそうには見えず、対象を理解したうえでどう茶化すかという距離の取り方や現代的に捉え直す方法には若干不安を覚えるけど、第一話からここまでブチ壊したのだから、御託抜きのお馬鹿エンタメに仕上げてくれそうな予感。目黒三吉のソリッドな描線と翻案者の青年漫画的センスもマッチして妙にハマっており、どうなるかが楽しみな一作になっております!
『こころ オブ・ザ・デッド ~スーパー漱石大戦~』掲載情報
・作者:原作 / 夏目漱石、アメイジング翻案 / 架神恭介、漫画 / 目黒三吉
・掲載メディア:コミック アース・スター