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【レビュー】古き良き70年代は、石橋蓮司たちが連れてくる―『一度も撃ってません』


阪本順治監督の最新作は、石橋蓮司、桃井かおり、岸部一徳、大楠道代といった名役者たちによる小気味の良いハードボイルド喜劇。


石橋蓮司演じる主人公の表の顔は、妻には大きく出れないが担当編集者には堂々と振る舞う売れない老作家。


しかし、その裏の顔は都市伝説としても長年囁かれている幻の殺し屋。



もっとも、本人は対象人物に関する細かい素行調査しか行わず、肝心の殺し自体は若い殺し屋に外注しているというのが現実。


この一捻りある新しくて何とも拍子抜けな設定がその後の展開を俄然面白くする。


一癖も二癖もあるキャラクターたちの、まだまだ現役だ、と言わんばかりの意地と、こう見えて全盛期は凄かったのよ、とでも言いたげな哀愁がたまらなく魅力的。



よく集うBARでの雰囲気や会話の中に、監督や演者たちの古き良き時代への強い想いがうかがえる。


何となく撮影の打ち上げとかでも「こんな感じで飲んでそうだな〜」と想像してしまうメンツだからなおさら。


この映画、名優・原田芳雄の遺作撮影後の集まりでの桃井かおりの発言がきっかけで制作されたらしい



普段は脇役に徹する石橋蓮司だが、本作ではどこか自信なさげに恥ずかしそうにしながら、譲れないものは決して譲らないといった、いぶし銀の主人公が見事にハマる。


「夜は酒が連れてくる」


70年代の華やかな時代を想像しながら、アルコール片手に観るのがピッタリな何とも味わい深い1本。


 


『一度も撃ってません』


■監督 : 阪本順治

■出演 : 石橋蓮司 大楠道代 岸部一徳 桃井かおり 佐藤浩市 他

■脚本: 丸山昇一

■配給 : キノフィルムズ


©︎2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ


 


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