その配給作品の癖というか振り切れ具合が個人的にいつも気になってる配給会社のTOCANAさんがまたぶっ飛んだ映画を仕入れてきた。
KKK(クー・クラックス・クラン)と言えば日本でもほとんどの人が知っている、アメリカに実在した白人至上主義の秘密結社だ。
そのKKKをゾンビ映画だとゾンビに、カニバリズム映画だと食人族に、エイリアン映画だとエイリアンにたとえたような作品が本作だ。
当然に白人至上主義の裏返しとしての黒人差別自体には共感できないわけだが、実際にアメリカで過去にKKKが暗躍して当時の黒人に多大な被害を与えてきた事実は広く知られているところだ。
だがこの映画に出てくるKKKは何と「黒人の肉を食べること」に執着しているという設定なので、もう大枠からしてぶっ飛んでるのだ。
何故白人至上主義者が有色人種の人肉を好んで喰らうのか。
もうそこはおそらくは設定の結論先にありきなので、劇中でKKKの一人がまるで観客に説明するかのようにその理由を喜んで口にするシーンがあるものの、そこはまるで理屈になってないわけで、でもそのあたりが雑で開き直ってる感じは逆に好感が持てる!(人喰いに対して共感も何もないのだが…)
ストーリーの方も唐突でもはや潔い。
刑務所から脱獄した弟ブランドンを郊外の廃牧場に匿おうとする兄クレランスと姉アンジェラ。
ふざけながらも深い兄弟愛を育んでいる3人の黒人家族は、そこで猟奇的なKKKと遭遇して囚われてしまう。
悲惨な目に遭う彼らは、何とか監禁状態から抜け出して復讐と逆襲に転じようとする。
とにかく痛くて、グロくて、手作り感満載の悪ノリが凄い。
クエンティン・タランティーノ監督作『ジャンゴ 繫がれざる者』も黒人奴隷による過激な復讐劇を描いて、観客に中毒的な爽快感やカタルシスを提供する作品だったが、残酷なシーンは数々ありながらも、最もグロかったのは演者として出演しているタランティーノが半ば滑稽に爆死して跡形もなく飛び散るシーンだった。
一方、本作はそれ以上のグロいシーンが次から次へと出し物のように続いていくから、やや引きながらも途中からはついつい笑いも漏れてしまう。
ここ数年ではジョーダン・ピール監督が『ゲット・アウト』や『アス』で黒人差別を斬新な角度と設定で描いて大きな話題になったが、本作はそんな気をてらったことはしない。
才能に裏打ちされた不穏な空気感やミステリーの要素なんか知ったこっちゃない!という感じで、映画はひたすらにKKK VS黒人姉弟のガチンコの殺し合いといった様相を見せていく。
原題は『Death Ranch(死の牧場)』。
しかし中身を観進めると、そんなタイトルはどこか気取ってるような気がしてくる。
『KKKをぶっ飛ばせ!!』
やっぱりこっちの邦題こそ内容にしっくりくる!このタイトリングはお手柄だ。
邦題のようなアッパーで軽いノリで、例えばビール片手に観るのにぴったりな映画だと思う。
何なら尺も78分と短いのでアルコールとってもトイレ問題は平気かも。
© DARK TEMPLE MOTION PICTURES
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