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【レビュー】北欧から届けられたハートフル・アクション?マッツ・ミケルセン主演―『ライダーズ・オブ・ジャスティス』


本国デンマークで興行的にも批評的にも大成功を収めた作品が日本にやってきた。

突然の列車事故で妻を亡くし、生き残った娘と2人きりになってしまった軍人のマークス。

彼は、ある日訪問してきた数学者オットーらから、列車事故が犯罪組織「ライダーズ・オブ・ジャスティス」が裁判の重要参考人を抹殺するために故意に仕組んだ事故であると聞かされる。

こうしてマークスは、オットーらの協力を得ながら、その強い怒りを静かに復讐へと向け始める。


「北欧の至宝」とも称されるマッツ・ミケルセンが主演し、メガホンを取ったのは彼が過去に何度もタッグを組んだアナス・トマス・イェンセン監督だ。

マークスは、無感情で乾いた目をした現実主義者の軍人で、まさにミケルセンのハマり役。

彼は母を失い悲しみに暮れる娘を癒すこともできず、娘と父の間の確執は以前にも増して悪化していく。

一方で、マークスの復讐に手を貸すオットーをはじめとする理系オタクたち3人の癖がすごい。

大真面目なのにズレている彼らの言動が絶えず可笑しくて、彼らと対照的に笑顔を一切見せないマークスとの凸凹のアンサンブルは、この映画を確実に魅力的にしている。

軍人という職業柄、マークスは高い戦闘能力を発揮するのだが、「最強の父親が娘を救いながら家族のリベンジを果たす」といったどこかで観たような作品とは全然違う。

父と娘の悪化した関係を前提に、家族愛をテーマとして描いているが、マークスが暴力で敵を制圧するだけでは家族愛は取り戻せない。

ここで重要な役割を果たしていくのが、普段は様子のおかしいオットーら3人だ。

それぞれに過去があり自分なりの想いを抱えている彼らの存在が物語をハートフルなものにし、この映画に多面的な魅力を与える。

相手を屈服させる激しい暴力シーンが多々ある一方で、暴力以上の価値を持った重い言葉が相手の心を掴んだりもする。

本作はハードなアクション作品という形式を取りながらも、その中身は「弱い者」に寄り添うことを忘れない感動のドラマなのだ。

スリルと恐怖感に満ちたアクション、笑い、悲しみ、そして大きな感動。

これらに加えて、映画を一貫して流れる、この世の偶然性についての悲しみと喜びが混在した哲学。

あらゆる要素を絶妙なさじ加減で互いを損なわずに詰め込むことに成功している本作。

まさに本作の哲学とは離れてしまうが、監督や制作陣の緻密な計算とセンスなしには生まれることのなかった、賛嘆に値する1本だと感じた。

 

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』

■監督・脚本:アナス・トマス・イェンセン
■出演:マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・コース、アンドレア・ハイク・ガデベルグ 他

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