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【レビュー】仮想と現実の2つの世界を通して描く、人間が持つ真の美しさ―『竜とそばかすの姫』


3年ごとに意欲的に新作を送り出す細田守監督の待望の新作が公開されている。


『サマーウォーズ』が公開されてからはや12年が経過したが、今回描かれるのも同じくインターネット上の仮想世界だ。


その意味では監督の真骨頂とも言えるが、ディズニー要素、学園モノ、家族問題等々、詰め込まれた要素は多岐にわたる贅沢さで、まさに細田アニメのスペシャルコースのようになっている。



主人公は田舎で暮らす女子高生すず。


彼女は幼い頃に最愛の母親を水難事故で亡くした悲しみから、父親との関係はぎくしゃくしていて、学校でも引っ込み思案だ。


母親と一緒に楽しんでいた歌も人前では歌えなくなり、自己実現とは程遠い毎日を送っている。


そんな彼女だが、「U」と呼ばれるインターネットの仮想空間に「ベル」という名前で登録すると、匿名の仮想世界で見事な歌の才能を存分に発揮し、瞬く間に仮想世界中の住人が憧れるディーバへと上りつめる。



歌うことによる自己変革に新鮮な満足感を覚えるすず(ベル)だったが、Uの秩序を乱暴に破壊して回る「竜」と呼ばれるキャラクターとの突然の出会いが、彼女の心を波立たせることになる。


細田監督は、現実世界で前に進めない人たたちの受け皿としてインターネットの世界を肯定的に描きながら、一方でその功罪と限界をしっかりと描き、最終的には現実世界での行動に焦点を合わせる。


その背後には、仮想世界での成功だけでは得られない人間の真の成長を現実世界の中に見出していく、という確かな視点と意図があるように感じられる。



『サマーウォーズ』でも、旧家の家長である祖母が物語の重要な役割を担っており、彼女がハガキなどを見て知人にひたすら電話をかけ続けるという場面は、アナログな伝達方法と現実の人間関係の構築が心を熱くさせた。


本作でも、仮想世界で歌姫として一度は成功したすずが、やがて自身の信念に基づいて打算抜きに一連の行動を選び取っていく姿は、浮ついた名声や成功とは無縁の、まさに人間の等身大の善意に裏打ちされている。


過去を引きずっていた少女の成長譚であり、人間の真の「美しさ」を描いた作品だ。



後者については、監督自身が愛してやまず実際にモチーフに使用したと語っている名作『美女と野獣』のテーマとも重なるが、そのアプローチ自体は大きく異なる。


特に、すずが自分の母親が死んだことの意味を、悲しみの先に自分なりにはっきりと理解したとき、観る者の視座も彼女のそれと同じくそれまでの場所から大きく移動させられる。


最高峰のスタッフとキャストをもって実現したUの世界像、ベルのデザイン、その歌声はどれも間違いなく美しいが、自分がその美しさに最も心打たれたのは、この映画が強い確信の下に観る者の視座をダイナミックに動かして正面から見つめさせる、人間の「行動」だった。


 


『竜とそばかすの姫』


■キャスト:中村佳穂  成田 凌 染谷将太 玉城ティナ 幾田りら / 役所広司 / 佐藤健

■原作・脚本・監督:細田 守

■作画監督:青山浩行

■CG作画監督:山下高明

■CGキャラクターデザイン:Jin Kim 秋屋蜻一

■CGディレクター:堀部 亮 下澤洋平

■企画・制作:スタジオ地図


2021 スタジオ地図

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