SDGsへの関心が高まる一方で、「何をすればよいか分からない」「義務感だけでは活動が続かない」と感じる人もいる。そうしたなか、スウェーデン発祥のごみ拾いとジョギングを組み合わせたフィットネス「プロギング」が、楽しみながら社会貢献できる活動として各地に広がっている。社会貢献を前面に出さず、楽しさを参加のきっかけにする取り組みについて、一般社団法人プロギングジャパンの常田英一朗氏に話を聞いた。
ごみ拾いとジョギングを組み合わせた「プロギング」――全国130団体以上に拡大
スウェーデンで誕生した「プロギング(Plogging)」は、ごみ拾い(Plocka upp)とジョギング(Jogging)を組み合わせたフィットネスとして、世界各地に広がっている。日本では一般社団法人プロギングジャパンが、従来の清掃活動にゲーム性や運動の楽しさを加えたイベントとして普及を進めている。
同団体は2019年6月に任意団体として設立され、2020年4月に法人化した。常田氏は学生時代の登山経験から「この自然環境を残したい」と考えるようになり、大学在学中に普及活動を始めたという。
現在はイベントの企画に加え、地域団体の立ち上げ支援やインストラクターの育成にも取り組んでいる。同団体によると、全国で130団体以上が活動しているという。
SDGsの理念を日常の行動につなげることは、必ずしも容易ではない。個人の思いから始まった活動が全国に広がる一方で、一過性のブームに終わらせず、継続的な参加につなげていくことも課題となっている。
「義務感」より「楽しさ」を重視――ゲーム形式でごみ拾い

同団体はプロギングを通じたSDGsの浸透を目的とし、「社会貢献と言わない社会貢献」をスローガンに掲げている。
従来の環境美化活動は「社会のためにやるべき」という義務感や道徳心を動機とすることが多かった。一方、プロギングは「体を動かして爽快感を得る」「仲間と交流する」といった楽しさを重視する。活動を続けるうちに、結果として環境問題への理解も深まるという考え方だ。
常田氏自身、大学時代に企画した環境展示が周囲から敬遠された経験があり、「義務感や罪悪感の押し付けでは持続しない」と考えるようになったという。
実際、同氏が大学で開催した初期のイベントでは、「楽しそうだから」という理由で参加した人が大半だった。それでも、チーム対抗のゲーム形式を取り入れたことで、まとまった量のごみを回収できたという。
イベント運営にも工夫を凝らしている。初対面の参加者同士が自然に会話できるよう特製シールを用意するほか、走力や体力の違いに合わせてコースを設定。運動が得意でない人でも参加しやすい環境づくりを進めている。
ただし、楽しさをきっかけに参加した人が、日常生活でのごみ削減や環境に配慮した消費行動などにどこまでつなげているかについては、継続的に見ていく必要がある。
名城公園での地道な活動が行政との連携に発展

同団体の活動が地域社会に広がった事例の一つが、愛知県名古屋市の名城公園での取り組みだ。
設立直後のコロナ禍でイベントの開催が制限されるなか、常田氏らは名城公園で毎週プロギングを続けた。当初は少人数だったものの、近隣カフェの従業員や公園を利用するランナーなどが次第に参加するようになったという。
その活動が名古屋市役所の担当者の目に留まり、市との連携イベントへと発展した。
参加者が運動を楽しみながら交流を深め、その結果として街の美化にもつながる。名城公園での取り組みは、こうした活動の広がりを示す事例となった。
また、欧米では環境保護活動としての側面が強いのに対し、日本では「新感覚フィットネス」として紹介してきた点も特徴だ。環境問題にそれほど関心のなかった人にも、参加してもらいやすくするための工夫だという。
一方、自治体や民間企業との連携が広がるなか、イベントを継続するための運営資金の確保や、地域団体が自主的に活動を続けられる仕組みづくりも必要となっている。
一過性のイベントから日常の習慣へ――地域で続けられる仕組みづくり
同団体は「ポジティブな力で足元から世界を変える」をモットーに掲げている。
常田氏は今後、プロギングを一過性のイベントではなく、日常生活に根付いた「生活文化」にしていきたいと話す。ランニング習慣の一つとしてプロギングが定着し、参加者同士が互いを認め合いながら交流できる場所を全国各地に増やしていくことを目指しているという。
そのため、各地で活動する自主団体に対して、イベント保険の提供や広報支援なども行っている。
SDGsを特別な義務として意識するのではなく、普段の生活のなかで自然に実践する。プロギングは、そうした考え方を取り入れた活動の一つだ。
楽しみながら体を動かし、地域の人々と交流することが、結果として環境美化にもつながる。ただ、こうした活動を長く続けていくには、行政や企業の支援に加え、地域の参加者が主体となって運営できる体制づくりが重要となる。

【取材協力】
一般社団法人プロギングジャパン
会長 常田英一朗
https://plogging.jp
