2018年12月に女性誌として初めてSDGsに特化した号を発売して以来、持続可能な社会の実現のために、さまざまな提案を続けてきた『FRaU SDGs』。
6月28日発売の8月号では、「平和を、つくる。」をテーマに、今世界で起きている戦争や紛争について学び、平和な未来をつくるのためにできることを特集している。
心に刻まれることを大切に
前号、前々号に続き、3度目のカバーガールを務めるのは、女優で歌手の上白石萌音。
特集の巻頭では、上白石とともに第二次世界大戦末期の1945年、世界で初めての被爆地となったヒロシマへと赴き、平和のために戦争を知る、学びの旅から始めることにした。
2021~22年に、NHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では、戦時下を生き抜く母の役を演じた上白石。
その際にも、劇中で描かれた空襲のあった岡山へと赴き、「本や写真で学ぶだけでなく、実際にその地を訪れ、そこで感じ、心に刻まれることを大切に」役を演じたと話す。
まっすぐに心を寄せる姿
広島で真っ先に訪れたのは、世界恒久平和を願って建設された〈平和記念公園〉と〈原爆ドーム〉。
原爆投下前、日本家屋や旅館が立ち並ぶ賑やかな街だったと聞いた上白石が、時間をかけて、かつてそこにあった暮らしに、まっすぐに心を寄せる姿は印象的だった。
そして復興のシンボル〈おりづるタワー〉では、焼け野原になり、この先75年は草木も何も育たないと言われた広島が緑に覆われた姿を眺め、年を重ねて蘇っていく映像展示にも見入っていた。
「広島というとまっさきにショッキングな歴史が思い浮かびますが、こうして街を見ていると、過去のことばかりでなく、今ここで生活している人たちがいて、未来に進んでいるんだなということに希望を感じます」と上白石。
思いを持続させて…
また、旅では14歳の時に入市被爆した93歳の語り部の方に、当時の壮絶な体験を伺う、貴重な機会にも恵まれた。
誌面では、上白石が実際に伝え聞いた戦争体験も収録。
上白石は「平和の大切さを若い人や子どもたちに伝えて欲しい」という語り部の方の思いを受け取り、「強い勇気を持って伝えてもらった気持ちを絶対に忘れてはいけないですね」。
「思いを持続させて、今日だけで終わらせないように考え続けていきたいです」と話してくれた。
今と地続きの過去
旅の終わりには、それまで歴史や情報として知っていた出来事のひとつひとつが、当たり前に、血肉の通った立体的な体験となっていた。
上白石は「写真などで切り取られた1枚にもその周囲がある。旅をしてその地を踏むことで、単なる歴史ではなく、今と地続きの過去の話なのだということが、初めて体内にはいってくるような感覚が生まれました」。
「知れてよかったし、まだまだ知らなくてはいけないなと思いますね」と語った。
上白石萌音との旅は、その体験を通して「平和」という壮大なテーマを、一人ひとりの問題として捉えることの大切さ、そのヒントを教えてくれる。