高齢になるとどうしても、急に容体が悪化することがある。
寿命なのかもしれないが、その時周りにいる人はどうすべきなのだろうか。
急変は特に入院中に多い
入院しているということは、病気などで体力が弱っている状況だ。
そのような時は特に急変してしまうことが多い。
夜中に看護師が患者を見回りに行ったら、心臓や呼吸が止まっていたということはよくある。
また、急に容体が悪化して、血圧が急激に下がったり呼吸が止まりかけることもある。
このような時、医療的にできることは限られている。
心臓マッサージ
心臓が止まってしまった場合、心臓マッサージをする。
胸を手などで押すことで心臓を押して、血液を流すために行う。
実際、心臓マッサージをすると胸の骨が折れることが多い。
また、30〜40分程度継続しても心臓が動かなければ、再び動く可能性は限りなくゼロに近い。
特に、身体が弱っている高齢者や、病状によっては心臓が動き始める可能性は低い。
仮に動き始めたとしても、その間に脳への血流がうまく流れていなければ、いわゆる植物人間のような状態になり、数週間ほどして命を落とす。
挿管
急変して呼吸が止まってしまう時には、人工の管を口から喉に向けて入れる。
人工呼吸器という機械に管をつないで、無理やり呼吸をしてもらうことになる。
自分が呼吸できるようになるまで、人工の管が抜けることはない。
想像すれば分かるが、管が入っているのはとてつもなくしんどい。
さまざまな合併症の観点から、口から管を入れられるのは2週間程度が限界だ。
2週間経っても自分で呼吸できない場合には、気管切開になる。
首に穴をあけてそこから肺に向けて管を入れて人工呼吸器をつけるのだ。
その後再び自分で呼吸できるようになれば、人工呼吸器を外して首にあけた穴も閉じることはできるがその可能性は本人の体力と病状次第だ。
特に高齢者だと、体力がないため、肺炎などの合併症により苦しみながら命を落としてしまうことが多い。
急変時にどうするか?
急変した時、心臓マッサージや挿管はどうしますか、と病院や医療機関で聞かれることが多いだろう。
正直、そのような場面で冷静に考える時間は少ないと思う。
この記事を読んで、心臓マッサージや挿管について知り、改めて自分や親、家族などの立場ならどうして欲しいか、考えてみて欲しい。
急変は、いきなりやってくるからこそ急変なのである。
普段の元気な時から考えておくのが重要だ。
執筆者:あやたい
医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。
日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。