【コンピューターゲームの20世紀 第61回】美しく魅惑的な世界観に先進的なシステム『ファンタジーゾーン』
ショップへはフィールド上に出現する赤い風船に触れることで入店でき、そこでスピードアップ・ショット・ボムのパワーアップが購入可能。また、お金さえあれば自機の1UPすら購入できてしまうのだ。スピードアップはミスするまで、ショットは時間制限、ボムは購入した数だけ(一部はミスするまで無制限に)使用可能で、購入するたびに値段が上がっていくため無駄な使用は避けなければいけない。これらのパワーアップを駆使してフィールド上の全ての前線基地を破壊すればボス戦へと突入。ただし、基本的にショットのパワーアップはそこまで持たずに時間切れになってしまうため、ボスとはノーマルショットで戦うことになる。
ここで本作の基本ルールを説明すると、一般的なシューティングゲームとは異なり、画面が強制的にスクロールすることはない。その代わり画面下のレーダーを頼りにプレイヤーが敵の前線基地を倒す必要がある。空中にいるザコ敵は倒す必要がなく、基地さえ倒せばOKなのだ。さらに敵基地を破壊した際に出現するコインは時間と共に金額が下がっていくため、なるべく早く基地を倒していく必要がある。そのためには空中を浮遊しているお金にならないザコ敵にはかまっていられない。これも本作独特のゲーム性だと言えるだろう。ザコには目もくれず基地を集中的に破壊していき、その後に控えるボス戦に備える。これが本作のゲーム性なのである。
ボス戦は本作のもう1つの特徴的な部分で、ユニークで独創的なボスが様々な攻撃方法で襲ってくる。単に弾幕を張るだけのボス敵が多いシューティングゲームにおいて、本作のボスの個性は特筆すべきもの。弾を一切撃たずに回転するだけのボスや、分裂と合体を繰り返すボスなど、初見ではどうしていいか分からないものばかりである。しかし、対応策さえしっかりと理解していればそれらは難敵ではなくなり、実際本作の1周の難易度はシューティングゲームとしては低い方だと言える。大量の弾をかわしながら攻撃するのもシューティングゲームの醍醐味だが、本作のようにパターンを構築していくのもまた楽しいもの。3面ボス・コバビーチをヘビーボム一撃で葬ったり、5面ボス・ポッポーズを弾切れに追いやるのは攻略法を知っているものだけの特権なのだ。
そして、ラストステージではこれまでに倒した全てのボスと戦う、いわゆるボスラッシュが始まる。これは今では特に珍しくもない仕様だが、当時としてはかなり先進的なもので、前年に同じセガから発売された『スペースハリアー』から受け継がれたものだと思われる。ここでのボスは以前に戦ったものよりややパワーアップしているが基本的な攻略は同じものが通用する。そして、1面から7面までのボスを全て倒すとラスボスが登場するのだが、その姿は自機であるオパオパが巨大化した形をしている。さらに巨大オパオパから虫のような敵が触手を伸ばしながら攻撃してくるのだ。実はラスボスは敵に乗っ取られてしまったオパオパの父親で、これを倒すことが最終目標になっているのである。最終的にどういった結末を迎えるかは伏せておくが、感動のエンディングの後、難易度がアップした2周目が始まる。本作はレトロゲームを扱っているゲームセンターで見かけることも多いため、是非とも皆さんの手でエンディングを迎えてほしい。
本作はサイドビューのシューティングゲームであるがスクロール方向は右方向に固定されてはおらず、上下左右(上下の幅は狭いが)に任意に画面をスクロールさせることが可能だ。これは世界初のスクロールシューティングであるウィリアムス社の『ディフェンダー』と同じ方式で、画面下部のレーダーなど共通点もあり、その影響を大きく受けていることは明らかである。このようにゲームを独立した個々の作品としてのみで見ていくよりも、作品の進化といった観点から見ていくのもまた面白いもの。進化を続けた現代のゲームは当然優れたものだが、時には過去のゲームを振り返ってその進化の歴史に触れてみてもいいのではないだろうか。
(須藤浩章)
■DATA
発売日…1986年
メーカー…セガ
ハード…アーケード
ジャンル…シューティング
(c) SEGA 1986
【記事提供:リアルライブ】
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