
山田洋次監督(93)渥美清さん主演の人気シリーズ「男はつらいよ」ファン感謝祭イベントが、1969年(昭44)に第1作が封切られた日と同日の27日に、東京・MOVIX亀有で行われた。同監督の最新作「TOKYOタクシー」(11月27日公開)の公開を控え、同作に出演し「男はつらいよ」にも85年の第36作「柴又より愛をこめて」含め12本に出演した笹野高史(77)が登壇し、両作品の話に花を咲かせた。
この日は、満員の客席からの質疑応答も行われた。「柴又より愛をこめて」で主人公・車寅次郎の親友の、下田の裏社会の顔役を演じた笹野に、役作りについて質問があった。笹野は「役作りって、歌舞伎役者の方が言うこと。役を作ることはできない。工夫することはありますけど」と口にした。山田監督が「作るのは監督かもしれない、イメージで、こんな役かなと」と補足すると、笹野は「『TOKYOタクシー』でも叱られた。いろいろな現場で、最年長なんですけど…やっぱり、この年になっても監督に叱られる。この年で叱ってくれる監督はいないから、顔が笑っちゃって。役者は叱られたいって、どこかあるんですよね。ああだこうだ、言ってもらった方がイメージが湧く」と笑みを浮かべた。
山田監督は「TOKYOタクシー」について語る中で、倍賞千恵子(84)が演じた85歳の高野すみれを乗せる、個人タクシー運転手の宇佐美浩二を演じた木村拓哉(52)を絶賛。「木村くん…キムタクは、よくやったね。(06年の『武士の一分』に続き)2回目だけど、誠実な役者だと、改めて感じた」と口にした。「倍賞さんを映しているでしょ? (タクシー車内の撮影で、運転席と座席を交互に映す)カットバックで、倍賞さんの撮影がある。(木村の撮影は)終わったんだからいいと言ったら『僕は、ハンドルを握っているんでしょう? だったら、いますよ』と言う」と、木村が自身が映らなくても、役としてその場にいるのならばと、撮影後も当然のようにその場に居続けたと明かした。
笹野は、すみれの司法書士として終活を支える阿部誠一郎を演じる。「ある時から、パタッと呼ばれなくなった。忘れてたんだと思ったら今回、役をいただいた。思い入れの深い作品」と笑みを浮かべた。
客席からは「『TOKYOタクシー』のタクシーに寅さんが乗ったら?」との質問が出た。山田監督は「寅さんが乗ったら? 考えただけで、うれしくなっちゃうね。これで1本、できちゃうね。延々、1日乗って…お金、払えないね。寅は、どうするんだろうね」と笑った。笹野が「『とらやというところがある』と言うでしょうね」と続くと、同監督は「『ここで降りるから(倍賞が演じた妹の)さくらが払う』と」と言い、ほほ笑んだ。
「一人の俳優が演じた最も長い映画シリーズ」としてギネス世界記録に認定された作品だけに、ポーランドから駆けつけたファンもいた。