
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
女優のん(32)が、大阪・吹田市の国立民族学博物館で「のん Ribbon展 怪しくて、可愛いもの。-群れる-」を開催中だ。
13年NHK前期連続テレビ小説「あまちゃん」など女優として活躍するかたわら、16年からアーティストとしても活動。22年に自身が脚本、監督、主演を務めた映画「Ribbon」で、「負の感情をリボンで表現したら、おもしろいんじゃないかとアイデアが生まれた。負の感情って抱かないようにした方がいいって発想になってしまうんですけど、私は排除すべきじゃないと思っていて、その感情をリボンというかわいいもので表現すると、いいものが見えてくるんじゃないか」。撮影終了後もリボンアートに取り組み、作品展「のん Ribbon展 不気味で、可愛いもの。」を開催した。
関西での初の作品展となる今回は、新たに自身がデザインを手がけた津軽のこけし燈籠10体を追加制作するなど意欲あふれる展示となっており、「今回の展示は国立民族学博物館にインスパイアされて準備した。この展示を見る前や後に博物館の展示を見ると、その世界観に浸れると思う。夏の暑い日が続いていますが、この怪しくてかわいいものを見ていただいて、ちょっと不気味だなとゾッとしながら涼んでもらえるんじゃないか」とアピールした。
1970年大阪万博が行われた万博記念公園内にある同館は、世界各国の仮面、人像、彫像などが展示されており、どこか怪しさも秘めている。そこからインスパイアされたというように、ライトアップされたこけし燈籠や、「真っ赤童の巣」という219体の座敷童がモチーフとなった展示は怪しさ満点だ。
万博記念公園を訪れるのも今回が初めて。公園のシンボル「太陽の塔」を見て、「全国民がファンだと思う。本当に感動しました。目に入ったら心が引きつけられて、スッと通り抜けることができない威力を放っていた。心臓にグサッと刺さりました」。塔をデザインした岡本太郎氏についても「ちょっと不気味だけど不思議な魅力を持っているアーティストの方だと思うので、すごく好きです」と笑った。
のんが“怪しいもの”“不気味なもの”をかわいいと感じるのはどうしてなのか。
兵庫県神崎郡神河町の出身。同郡内の福崎町は日本民俗学の父柳田国男の出身地として知られる。地域性もあるのだろうか。
のんは「出身地は近くに山があって遊びに行ったりしてました。町に街灯が少なくて、夜になると真っ暗闇。でも、夜の静けさとか暗闇って、もしかしたら私の中でなじみがある、自然なものかもしれません。山の中に入ると、この先に絶対に何かがあるって場所もありますし、お寺の娘さんと友達になって通ってたんですけど、怪しくて独特な雰囲気がある。熊が出るからと鈴を持たされたり、鹿が飛び出してきたり。熊も鹿も遠目で見るとかわいいけど、物騒な危ない生き物。そういうかわいいけど危険ってものにはなじみがあるかもしれません」と思いを巡らせた。
妖怪や怪談についても「岩手の語り部さんのお話を聞いたり、妖怪のことも調べたりしていましたのですごく好きです」と明かした。
育ってきた環境による下地に、「あまちゃん」出演以降、「お世話になった第2の故郷」という東北各地の風土に触れることで培われた感情のようだ。
そんなのんの気持ちがこもったリボンアート展は、10月13日まで行われる。【阪口孝志】