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秋沢健太朗 目指すは最強の2番手 ミュージカル「梨泰院クラス」主人公の宿敵で圧倒的存在感


俳優の秋沢健太朗は、ミュージカル『梨泰院クラス』でチャン・グンウォン役を演じ、話題を集めています。劇中で秋沢は、主人公パク・セロイを演じるWEST.小瀧望の宿敵として圧倒的な存在感を発揮。韓国ドラマ版でアン・ボヒョンが演じた役を、自分のスタイルで新たに表現。彼の演技は、悪役ながら人間味を持ち、父親の期待に応えられなかった悲しみを抱えるという奥行きを持たせています。長年の下積み時代を経て達成した今回の役どころは、秋沢の成長を象徴しています。

こんな味のあるまなざしの秋沢健太朗に見つめられたらファンも心をギュッとつかまれるのだろう(撮影・中島郁夫)

<情報最前線:エンタメ 舞台>

9日に開幕し、絶賛上演中のミュージカル「梨泰院クラス」(7月21日まで、東京建物Brillia HALLなど)で、俳優秋沢健太朗(36)がチャン・グンウォン役を好演している。WEST.小瀧望演じる主人公パク・セロイの宿敵として圧倒的な存在感を発揮。“世界初演”に奥行きを出した。【鎌田良美】

★切なさと品が漂う

連日のスタンディングオベーションで喝采を浴びる。初日の幕が開けた後、自身のSNSに「忘れられない1日が増えました」と万感の思いをつづった。

「お客さまに疾走感が伝わったかな、とほっとしたのと、これから始まるんだという気持ちでいっぱいでした」

日本でも大ブームを起こした「梨泰院クラス」。主人公セロイの父をひき逃げし、物語の起点となる御曹司グンウォンを鮮烈に演じている。悪役ながら不器用で、父の自慢の息子になれなかった悲しみを背負う。セロイと対になる存在を「一番、人間らしくあったほうがいい」とおもんぱかる。

「環境によっては普通の高校生として、卒業して普通に生きたんじゃないか。父の闇で自分を間違った方向に屈曲させてしまった人物だと伝われば」と、随所に締め付けるような切なさと品を漂わせている。

韓国ドラマ版ではアン・ボヒョンが怪演で脚光を浴びた。「年も一緒なんです。意識した部分が1つ。ガタイですね」。元ボクサーのボヒョンは一瞬の立ち姿で引きつける“絵力”があった。ジムに通い、体脂肪率を10・1%まで絞った。体重も増やし、184センチの小瀧と迫力あるアクションシーンをつくりあげた。

ヒールが憎らしいほど、復讐(ふくしゅう)劇は映える。だが上演時間は2時間半ほど。わずかな接点でセロイとの因縁を印象づけなければならない。「恋敵でもあるというダブルミーニングも必要で。自分でせりふを足したり、粘った部分が本番に生きているのはやりがいがありました」。

話さずとも振る舞いで伝える。言葉数が少なくても、その裏側が分かるように努めた。「ニワトリを殺すシーンがあるんですけど、あれは自分自身も殺してしまうという要素。そういう間違った状態で育った人間であることがまず伝わらないと、パク・セロイが全く立たなくなる」。セロイの真っすぐさを際立たせる役割も担う。

初のミュージカル化とあって、上演が続けば今作が基準になる。いわば世界初演俳優だ。「(後任に)めちゃくちゃえらそうにアドバイスします」と真顔で言った直後「うそうそ」と即、訂正。「めちゃくちゃありがたいです」と笑った。

劇中で自己投影できるのは、グンウォンの父デヒだという。冷徹な権力者だが、ドラマでは家族を飢えさせまいと決意して屋台を始める背景が描かれた。

「僕も始めたての時なんか、全くお金がなかった。あきらめるか真剣に悩んだ。でも心の中で、乗り越えて頑張る自分をちゃんと想像したって意味ではすごく似てたかもしれないです」

★就職内定断り上京

高校卒業後、就職の内定を断って地元秋田から上京した。セロイたちにとって梨泰院は自由で開かれた街だった。「僕にとっては東京がそうでした」。芸能の仕事を目指すと宣言すれば、笑われる風潮がまだあった。加えて未知の世界。祖母から「東京は外国だ」と心配され、最初の2カ月半ほどは両靴の裏に1000円札を忍ばせて過ごした。

下積みが続いた。「衣装は自分で買って用意する。チケットノルマもある。チラシをまいても目の前で捨てられるわけです」。21歳。進学した同級生は、就活前にアルバイトでためたお金で旅行に出かけていた。対して自分はろくに食べられず、栄養失調で帯状疱疹(ほうしん)にかかった。

「あと2日(受診が)遅れたら死んでたって言われて。やりたいことやるために来ちゃったけど、こんなに人生違うのかと」

ただ、負けん気が強かった。まだ何者でもない。「ここで帰っても誰も何も思わない」。10年でも15年でも粘ると決めた。

役者で生計が立てられるようになった頃、「忍たま乱太郎」「ハイキュー!!」と2・5次元作品への出演が決まった。それまでアルバイトに費やしていた夜の時間を稽古に充てられた。

ヌンチャクにボールにラケットに刀。さまざまな道具を華麗に操る。どの役もそこはかとない艶を醸した。コンプレックスだった高い声は、せりふも歌唱もよく響く武器に変わった。

「共演者さんが生き生きしてるとうれしいです。おれと芝居してて楽しんでくれてるんだなと思うと、めちゃくちゃうれしい」

グンウォン役は、昨年トライした韓国ミュージカル「SMOKE」でのパフォーマンスが認められてオファーでつかんだものだ。

時に「若手俳優」「2・5次元俳優」とラベリングされる。映画祭でばかにされたこともある。

「でも全然へっちゃらっていうか。それで認識してもらえるならありがたい。ジャンル分けされてないと何者か分からないと思うんですよ。また別のラベルに書き換えていけばいいだけなので。自分が」

★ドラマ出演が野望

元々は映像志望でこの世界に入った。「映像向きじゃない」と挫折も味わったが「もう1回、チャレンジしたい。ドラマに出るのも野望です」。新たなラベルを獲得しようとしている。

2月、「侍タイムスリッパー」でアカデミー賞俳優となった山口馬木也と共演した。地道にキャリアを積み、実力で認められた姿を自分ごとのように喜んだ。「すごくうれしかったです。ご一緒できて光栄ですとお伝えしました。本当にすごいことだと思う」。まばゆい道は何歳でも開ける。

これまで映画や舞台で主演も務めてきた。一方でグンウォンのように、主役を立て、隣でうまみを引き出す役回りも抜群にうまい。

「『最強の2番手』になるって決めたんです。何歳になっても色気がある状態でいようというのも決めてます。どんな役でも、自分を見ている人にとっては主役。出続けて、知ってもらいたいですね、まずいろんな人に」

射るような視線の先にある挑戦を、楽しんでいる。

◆秋沢健太朗(あきさわ・けんたろう)1988年(昭63)9月14日、秋田県秋田市生まれ。16年にハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」シリーズ澤村大地役、ミュージカル「忍たま乱太郎」シリーズ食満留三郎役で人気を博す。20年テレビ朝日系ドラマスペシャル「陰陽師」平維時役。22年に主演短編映画3部作「人生の着替えかた」公開。同年からミュージカル「新テニスの王子様」種ケ島修二役。23年映画「死仮面」主演。24年「SMOKE」「HOPE」と韓国発ミュージカルに出演。身長180センチ。血液型B。

◆梨泰院クラス チョ・グァンジン氏の人気漫画が原作。20年に韓国でドラマ化され、Netflixで配信されると世界中で大ヒット。日本でも22年にドラマ化された。主人公パク・セロイが飲食業界での成功を目指して小さな飲み屋を開業し、仲間たちと、父の敵(かたき)でもある大企業に戦いを仕掛けていくサクセスストーリー。父の仕事の都合で転入した高校生のセロイが、クラスメートをいじめるグンウォンを殴り、1日で退学になるところから物語が始まる。

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