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日本ロケ、人気も高いがハードルも高い…動き始めた誘致ビジネス 巨匠たちが撮りたがる場所とは


WOWOWが新規事業「WOWOW BRIDGE」を立ち上げ、海外作品の日本ロケ誘致を進めています。ハリウッドとの共同制作やドラマ「FBI:インターナショナル4<最終章>」の東京ロケを成功させたことがその一例です。日本での撮影は困難と言われてきましたが、国の支援が始まったこともあり、関心が高まっています。改善が求められるのは「タックスインセンティブ」「撮影許可のハードル」「スタッフ不足」の3点です。多くの作品が日本を舞台に設定しているものの、実際の撮影は韓国や台湾で行われている現状が続いています。しかし、「東京VVICE」の成功が日本のポテンシャルを示し、日本への関心を高めています。

WOWOWで放送・配信中の「FBI:インターナショナル4<最終章>」。東京で撮影された最終話(22話)は8月放送・配信予定(C)2025 CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.

日本ロケ、東京ロケを熱望する海外の監督は多いが、税制、撮影の受け入れ態勢が世界基準にほど遠く断念-。長く残念な状態にあったロケ誘致ビジネスが、少しずつ動き始めている。22年、米ハリウッドとの共同制作「TOKYO VICE」(マイケル・マン監督)でオール東京ロケを実現させたWOWOWが、海外作品の日本ロケ業務を受注する新規事業「WOWOW BRIDGE」を中期経営計画に組み込み本格スタート。すでに大型作品2作の日本撮影を成功させている。

   ◇   ◇   ◇

◆日本ロケへの関心の高まり

「WOWOW BRIDGE」が撮影業務を受注したのは、来年Apple TV+で世界配信が予定されているSFドラマ「ニューロマンサー」と、米CBSの人気ドラマシリーズ「FBIインターナショナル」シーズン4の最終話。8月末にWOWOWで放送されるこの最終話は、東京を舞台に躍動的な物語になっているという。

「TOKYO VICE」のエグゼクティブ・プロデューサーを務め、「WOWOW BRIDGE」COO(最高執行責任者)として事業を率いる鷲尾賀代プロデューサーは、外国作品のロケ誘致ビジネスを長らく行政に働きかけてきた中心人物。「海外のクリエーターにとって、日本は最も撮影が難しい国といわれてきましたが、2年前、内閣府の支援が始まったことで大きな一歩が始まった」。「WOWOW BRIDGE」の本格営業を前に2件の受注があったことは、「日本ロケへの関心の高まりを示すもの」として手応えを感じているという。

◆求められる3つの整備

他国に比べてあらゆる整備が立ち遅れているのが現状だが、中でも急務なのは「タックスインセンティブ(補助金制度)」「撮影許可のハードル」「スタッフ不足」の3点と語る。

政府も1作品あたり最大10億円を補助するインセンティブを開始するなど巻き返しに腰を上げているが、使った制作費に対してその都度税を還付する海外の仕組みと違い、日本は単年度予算で条件も複雑。鷲尾さんは「4月にOKをもらってロケハンして撮影地を決めて1月までに撮り終わるというのは無理な話で、制作費を割り出しにくいのでプロデューサーが日本ロケをあきらめてしまう大きな要因となっている」。

撮影に関しては、米国では非番の警察官を一定の報酬で派遣するなどのルールが整っているが、日本にはまだない。通行止めなどの不便に対する市民の理解も大きな課題だ。「ロサンゼルスでも通行止めなどには不満の声はありますが、これが街を支えている、ビジネスなんだという割り切りがあるんですよね」。スタッフ不足も深刻だ。「まずは英語が話せて、日本での制作経験も豊富なスタッフの数がまったく足りていない」と語る。

◆東京をあきらめ、韓国、台湾に

実際、ここ数年日本を題材にした大型作品が次々と制作されたが、軒並み日本での撮影をあきらめているのだという。

マーティン・スコセッシ監督が遠藤周作の小説を映画化した「沈黙-サイレンス-」は、日本各地をロケハンしたものの、最終的に台湾で撮った。真田広之が主演、プロデュースし、ゴールデングローブ賞4部門受賞など大いに話題を呼んだ「SHOGUN 将軍」も日本沿岸をロケハンしたが、全編カナダでの撮影に。Apple TV+で世界配信され大ヒットした韓国ドラマ「パチンコ」も、日本での撮影を断念し、韓国とカナダで撮影している。

「東京で撮影できるとなれば、彼らはソウルや台北より絶対に東京を選ぶ。税制や規制など使い勝手が悪いせいで、それらが整っている韓国や台湾に行ってしまい、莫大(ばくだい)な製作費が落ちることになるのは非常にもどかしい」。

◆東京のような街はほかにない

「TOKYO VICE」など多くの海外作品に関わってきた鷲尾さんは「撮影地として、近代建築と歴史的建造物が混在する東京のような街は世界でもあまりない。東京はめちゃくちゃ人気があります」と語る。特に、密集した土地に電車や高速道路が走る様子は東京ならではという。「海外の監督は、皆さんびっくりするくらい同じようなシーンを撮りたがる。後ろに電車、高速道路、モノレールとか」と、日本のポテンシャルに胸を張る。

中央線、総武線、丸ノ内線が交差する御茶ノ水駅周辺や、渋谷、六本木などで大規模なロケを行った「TOKYO VICE」の成功で、国や自治体にビジネスとしての経済効果を示すことができ、大きな一歩となったことは間違いない。課題は多いが、「政府の力を借りながら、撮影にフレンドリーな先進国の仲間入りをしていけたら」と話している。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

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