
元タレントの中居正広氏(52)の代理人弁護士は12日、フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビが設置した第三者委員会(竹内朗委員長)が提出した報告書について、「中立性、公平性を欠いていると言わざるを得ない」などと反論した。関連資料の開示請求、本調査報告書の問題の指摘および釈明の要求を通知した。
長沢美智子氏ら代理人弁護士5人は報道各社に文書にて、第三者委員会の送付した内容を公表した。「受任通知兼資料開示請求及び釈明要求のご連絡」とのタイトルで、「前略」から始まり、「この度、当職らは、中居正広氏(以下「中居氏」といいます。)からの依頼により、株式会社フジ・メディア・ホールディングス及び株式会社フジテレビジョン(以下「対象会社」といいます。)から依頼を受けた第三者委員会(以下「委員会」といいます。また、貴委員会作成にかかる調査報告書を「本調査報告書」といいます。)と中居氏との関係に関する一切につきまして、受任いたしました」と報告。そして「当職らは、別紙のとおり、(第一)関連料の開示請求、(第二)本報告者の問題の指摘及び釈明の要求を目的として通知いたします」と、詳細を記した。
以下、中居氏の代理人弁護士による第一と第二の事案に関する見解全文。
第一 本調査報告書に関わる証拠等の開示の請求
中居氏の人権救済のために、以下の資料について、令和7(2025)年5月26日(月)までに当職ら宛に開示されるよう求めます。
<1>本調査報告書作成のために用いられた一切のヒアリング記録及びその他の証拠
<2>性暴力があったとの認定は、どのような証拠に基づいてされているのか、その証拠と、認定と証拠との対応関係がわかる資料。
<3>上記証拠の一部ないし全部の関示ができない場合は、その理由を明らかにしてください。
第二 本調報告書としての欠陥に関する疑問と釈明要求
1 中立性と公正性に関する疑問
(1)日本弁護士連合会の「企業等不祥率における第三者委員会のガイドライン」(以下「GL」といいます。)によれば、第三者委員会は、不祥事を起こした企業等が、企業の社会的責任(CSR)の観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会とされています。また、GLの第1部基本原則には「企業や組織(以下、「企業等」という)において、罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」といいます。)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、(中略)必要に応じて具体的な再発防止等を提言する」タイプの委自会と明記されています。全てのターゲットは対象会社に向けられているのであって、調査に協力した個人ではありません。
また、GLの第2部1.(2)には、事実認定に関する指針として、<1>各種証拠を十分に吟味して、自由心証により事実認定を行うこと、<2>不祥事の実態を明らかにするために、法律上の証明による厳格な事実認定に止まらず、疑いの程度を明示した灰色認定や疫学的認定を行うことができることが示されています。ただし、<3>この場合においては、「その影響にも十分配慮すること」が脚注4に記載されております。かかる対象会社に対する一定の認定が中居氏や相手方女性にいかなる影響をもたらすかについて、貴委員会に配慮する義務が課せられています。
(2)本査報告書(1頁)によると、対象会社から貫委員会への事項は「本事案への当社の関わり」「本事案を認識してから現在までの当社の事後対応」「当社の内部統制・グループガバナンス・人権への取組み」「判明した問題に関する原因分析、再発防止に向けた提言」等です。
(3)ところが、本調査報告書を仔細に検討すると、貴委員会は事項に含まれていない中居氏と相手方女性との本事案について
<1>公正な証拠原則に基づかずに一方的に伝聞証拠等を基に詳細に事実認定しています。これはGL違反ではないのでしょうか。中立性・公正性に反しないのでしょうか。
本調査報告(27頁)は、中居氏が守秘義務解除に応じないとして、両者の守秘義務解除に対する態度も事実認定の根拠にしています。しかし、中居氏は、当初守秘義務解除を提案していましたが、第三者委員会から「2人の密室で何が行われたかが直接の調査対象ではない」との回答があったという経緯がありました。
また、本調査報告書には、守秘義務にこだわらずに約6時間にわたり誠実に回答した中居氏の発言がほとんど反映されていません。かつ、その反映しない根拠も理由も示されていないのです。相手方女性と中居氏へのヒアリング以外の調査方法(CX関係者のヒアリング及び関係資料)は直接当該行為を現認したものではありません。伝聞証拠として証明力に疑間があるのにそれらに基づき事実認定が行われています。こうした不当な事実認定は中立性・公正性を欠いていると言わざるを得ません。
中立性・公正性を欠いた本調査報告書の公表により、対象会社の役員でも、従業長でもない、調査に協力した個人である中居氏が不当な社会的非難に将来にわたり継続して晒され続ける状態は看過されるべきではありません。こうした事態を貴委員会が放置することは、第三者委員会制度の今後のあり方が問われる課題であり、当職らは、これまでに築かれた第三者委員会制度の社会的信用をも失墜することになりかねないのではないかと憂慮しております。
<2>本調査報告書では証明力に疑問がある伝間証拠に基づき中居氏が「性暴力を行った」と断定しました。
「性暴力」(Sexual violence)という表現に関してはいろいろな理解が可能にも関わらず、WHOの極めて広義な「強制力とは有形力に限らず、かつ強制力の程度は問題にならず、強制力には心理的な威圧、脅しが含まれる」という定義を用いています。しかし、「性暴力」とは普通の日本人にとっては肉体的強制力を行使した性行為として、凶暴な犯罪をイメージさせる言葉です。ところが、貴委員会はこの「性暴力」という言葉を使用するに際して、日本語の凶暴な言葉の響き・イメージとは大きく異なるハラスメント行為まで性暴力に含めるWHOの広義な定義を何らの配慮もしないまま漫然と使用しました。一方、本調査報告書では、上記のとおり性暴力という日本語が与える一般的な印象は、暴力または強制を伴った性的行動といった非常に強いものであり、このような言葉の選定が中居氏の名誉等に多大な影響を与えることについての配慮が全くなされておりません。このため、具体的行為は明らかとされないまま、「性暴力」という言葉が一人歩きしていきます。そもそも当該性暴力認定の根拠・証拠が本調査報告書においてもおよそ示されていないため、いかなる行為が現実に行われたのか不明です。この本調査報告書の読み手である多くの日本人が本調査報告者の言う「性暴力」を「暴力的な性行為」と理解することは十分にありうることです。
当職らが中居氏から詳細な事情聴取を行い、関連資料を精査した結果、本件には、「性暴力」という日本から一般的に想起される暴力的または強制的な性的行為の実態は確認されませんでした。今回、貴委員会作成に係る本調査報告により「性暴力を行った」と断罪され、公表されることにより中居氏の名誉・社会的地位は著しく損なわれています。貴委員会の本調査報告はGLに照らしても、中立性・公平性に欠け、貴委員会設置の目的や委嘱事項から大きく透脱し、極めて大きな問題があると言わざるを得ないものと考えております。
2 プライバシー保護
本件におきましては、中立性・公平性の欠如に関する問題点を修正し、中居氏の人権数済という観点から上記要望をさせていただいております。しかし、相手方女性をはじめとする関係者各位のブライバシー等は最大限保護されなければならないことは言うまでもありませんので、貴委員会として必要な範囲でのマスキング処理、匿名処理をしていただくことは理解しております。
他方で、貴委員会は「人権ファースト」に生まれ変わろうとしている対象会社の依頼を受けて組成された第三者委員会であることに思いをいたし、誠にご対応くださるようお願いいたします。
何卒よろしくお願い申し上げます。
草々