
俳優奥平大兼(21)。TBS系ドラマ「御上先生」で物語のキーマンとなる高校生を好演し、強いメッセージとともに視聴者に強烈な印象を残した。主演映画『か「」く「」し「」ご「」と「』(中川駿監督、5月30日公開)と映画「雪風 YUKIKAZE」(山田敏久監督、8月15日公開)の公開を控える。大注目の若手俳優のこれまでの成長や今後の活躍に迫った。【野見山拓樹】
★怖かった日曜劇場
「御上先生」の話を振ると「えー! うれしい!」と、ドラマではクールな役柄でほとんど笑顔を見せなかった奥平が満面の笑みを見せた。放送開始直後から大きな反響を呼び、「知り合いに『ドラマ毎週見てるよ』と言ってもらえてすごくうれしかった」と喜んだ。一方で、ヒットの裏でずっと不安との闘いもあった。
「日曜劇場で学園ものというのもあって、最初は本当に怖かった。視聴者の方は1話を見て続きを見るか決めるので、1話の放送日も撮影をしていましたけど、監督と『どうする? 引くに引けないよ』みたいな話はずっとしていました。1話が終わったらまたすぐに2話が放送されるのでずっとドキドキしていましたし、キャストの人も全員そう言っていましたね」
★クラスのカリスマ
奥平が演じた神崎は、新聞記者を志すクラスのカリスマ的存在で、「本当に自分とかけ離れた人間」と評価。続けて「あんなに志が高くはないし、強い人間でもない。演じながら見習うところもありました」と明かした。
「撮影中に誰かから『子どもでも大人な人はいるし、大人でも子どもな人はいる』と聞いたのがすごく心に残っています。9話の最後に、冴島先生(常盤貴子)からUSBを渡されたシーンで『人が変わるのは大変です。年齢とかじゃないです』というせりふを言いましたけど、ドラマを通して内面が成長するのは本当に大変なことだとわかったし、自分1人じゃ絶対に成長できないと思いました。自分自身も大人な人間なのかわかりませんけど、内面も大人な人間ではありたいです」
★共演同世代に刺激
物語の中心人物であり、撮影では多くのキャストと芝居を行った。特に窪塚愛流(21)や藤本一輝(20)ら、生徒役で出演した同世代の俳優から大きな影響を受けたという。
「こんなに同世代の役者さんと会える作品もなかなかないし、純粋な意欲とリスペクトがすごくあった。プライベートで芝居の話をするのは苦手だったけど、今回はいろんな質問をしたり出ていないシーンの撮影を見に行ったりして、ライバルであり同志でもある、というような意識が芽生えました。必死でやったらいいものができるんだ、と作品への向き合い方を改めて学びました」
★高校時代コロナ禍
3カ月間、強い存在感を放ったが、さらに活躍は続く。5月30日には主演映画『か「」く「」し「」ご「」と「』が公開される。少しだけ人の気持ちが見えてしまう男女5人の青春ラブストーリー。奥平は引っ込み思案で自分に自信を持てない主人公、大塚京(おおつか・きょう)を演じる。ピュアで甘酸っぱい物語で、「自分で演じましたけど本当にまぶしかった」と笑みを浮かべた。
「言いたいことがあるけど空気を読んで言えないみたいな、今の若者がすごくよく描かれていると思います。僕は隠し事は全然なくて、すぐに友だちに共有したくなるタイプですけど、言いたいことが言いづらい気持ちはちょっとわかります。大人の人は今の子を見て『なよなよしてるなー』と思うかもしれないけど、本当にこういう子が多いことを、この映画を見て知ってもらいたいです」
奥平の高校時代は「コロナとかぶって、絵に描いた青春は送れなかった」という。「京くんみたいな青春したかったなー!」と笑った。
「恋愛って一種の人間関係で、自分も成長できるじゃないですか。僕の中高はそういう経験があまりなかったので、この作品の京くんみたいに誰かを思うという経験をすることはすごくいいことだと思いました。若い子たちにはまぶしくて甘酸っぱい青春を送ってほしいです」
8月15日には映画「雪風 YUKIKAZE」の公開も控える。太平洋戦争中に実在し、沈没した僚艦の乗員を救助し続けた駆逐艦「雪風」の乗員を描いた物語で、若い水雷員の井上壮太を演じる。
「この作品に出ることで、普通に生きるよりも間近で戦争の怖さを勉強させてもらった。演じさせていただくにあたって、広島の学校にお邪魔して資料を見させていただいたりお話を聞いたりもしました。戦争について知るきっかけになったのが僕の中で一番大きかったですし、だからこそこの映画を通して知ってほしいし、これから過去に日本でこういうことがあったということを次の世代に教えていきたいと感じました」
「御上先生」で強烈なメッセージを残し続けたように、これからも芝居で力強いメッセージを届け続ける。
▼「御上先生」で共演した窪塚愛流(21)
大兼と出会ったのはドラマ「最高の教師」の時です。僕はそれまでライバル視する俳優は1人もいませんでしたが、彼の芝居を生で受けて初めて悔しい気持ちを抱きました。当時、僕が目指していた芝居そのものを彼は宿す存在だったからです。正直とてもジェラシーを感じ、その時から今も唯一の僕のライバルです。とはいえ、彼とはプライベートでも仲良しにもなり、ただのライバルではなく戦友とも言えるとても良い関係を築けています。「最高の教師」から1年がたち、再び「御上先生」で共演できることが決まった時は心底うれしかったです。「御上先生」を通した彼との芝居は、とても楽しくて生涯かけがえのない機会で僕の宝物です。今後の俳優人生の中でよりもっと多くの作品で共演したいと思う俳優さんです。
◆奥平大兼(おくだいら・だいけん)
2003年(平15)9月20日、東京都生まれ。20年の映画「MOTHER マザー」で俳優デビュー。24年には日本テレビ系ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」や映画「Cloud クラウド」などに出演し、注目を浴びた。身長173センチ。