
「ブルー・ライト・ヨコハマ」などのヒット曲で知られる歌手で女優のいしだあゆみさん(本名・石田良子=いしだ・よしこ)が11日午前4時48分、甲状腺機能低下症のため都内の病院で死去した。76歳。葬儀は近親者で行われた。「火宅の人」で映画賞を独占し、「金曜日の妻たちへ」「北の国から」など話題ドラマにも多数出演して、長くお茶の間で愛された。お別れの会を開く予定はないという。
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いしださんが旅立った。所属事務所は公式サイトで「東京都内の病院にて76歳で永眠いたしました。これまでいしだあゆみを応援してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます」と発表した。
いしださんは14歳で上京し、作曲家のいずみたくさんに師事。1968年(昭43)12月、20歳の時に歌った「ブルー・ライト・ヨコハマ」がミリオンセラーとなった。鼻にかかったような声と、抑揚を抑えた歌い方で人気を集め、69年のNHK紅白歌合戦にも初出場。その後、「あなたならどうする」などもヒットして売れっ子歌手となり、紅白にも10度出場した。
29歳で出演した77年公開の「青春の門 自立篇」のしょう婦役が認められ、役者としての活動を広げた。81年公開の映画「駅 STATION」では高倉健さんとの夫婦役。86年公開の「火宅の人」では無頼の作家檀一雄の妻を演じて、ブルーリボン賞主演女優賞、日本アカデミー賞主演女優賞などを受賞した。
幅広い役柄で高評価を受けた。97年1月、48歳だったいしださんは本紙のインタビューに「自分の好きなことが10あるとすると、そのうち9・99くらいはお芝居なんです」と答え「お芝居は私じゃないんだから、不倫だって何だって好きなことできるじゃないですか」とやりがいも明かしていた。
83年から放送され、新興住宅地を舞台に団塊世代の不倫を描いたTBS系連続ドラマ「金曜日の妻たちへ」は社会現象になった。フジ系「北の国から」では田中邦衛さん演じる五郎の妻役で存在感を示した。89年にNHK連続テレビ小説「青春家族」では、ヒロインも務めた。私生活では、日本テレビ系ドラマ「祭ばやしが聞こえる」で共演した萩原健一さん(19年死去)と80年に結婚したが、84年に離婚した。
昨年10月11日公開の映画「室井慎次 敗れざる者」、同11月8日公開の「室井慎次 生き続ける者」(本広克行監督)が生前、出演した最後の作品となった。関係者によると、撮影はちょうど1年前に秋田で行われた。主演の柳葉敏郎(64)が演じた室井慎次を励ますなど力強い芝居で好演し、元気な姿を見せていた。数々の足跡を、芸能界に残した。